絶滅危惧種シロヒレタビラの遺伝的な地域差から人為的に持ち込まれた新証拠が判明

2024年8月30日(金)15時46分 PR TIMES

概要


[画像1: https://prtimes.jp/i/58617/203/resize/d58617-203-5ce6e2487f3b80fd6dcf-0.jpg ]

● 日本列島に生息する絶滅危惧種の淡水魚類・シロヒレタビラ
 (写真)について、その適切な保全活動を促進するために、自 
  然分布域全体の系統地理学的パターンと遺伝的個体群構造を理
  解することが重要
● 本研究では国内の自然分布域を網羅する採集地点の個体群か 
  ら、主に遺伝的に3つの系統を確認。さらに、集団構造解析  
 (SAMOVA)から瀬戸内海集水域の1つの系統内に、5つの遺
  伝的分化グループがあることを発見
● 遺伝的な地域差は、古水系の消失、山地の隆起や海域の拡大な
  どによる隔離が原因と考えられるが、四国吉野川の水系の個体群が、瀬戸内海を越えた琵琶湖・淀川水系の個  
  体群とハプロタイプ(今回の場合ミトコンドリアDNAの遺伝子型)を持つことを明らかにし、人為的移入が 
  示唆された

詳細


 龍谷大学生物多様性科学研究センターの伊藤玄客員研究員と岐阜大学教育学部の古屋康則教授、三重県総合博物館の北村淳一学芸員、滋賀県立琵琶湖博物館の川瀬成吾学芸員・田畑諒一学芸員、NPO法人流域環境保全ネットワーク研究員らの研究グループは、ミトコンドリアDNA解析から、シロヒレタビラの国内の自然分布範囲にわたる系統地理および遺伝的集団構造を推定し、その分布パターンの要因に迫る研究成果をNature Conservation誌(Pensoft Publishers社)にて公表しました。
 本研究では、シロヒレタビラの遺伝的集団構造を、ミトコンドリアDNAのシトクロムb領域に基づいて解析したところ、既存研究で明らかとなっている3つの系統の存在を確認しました。さらに、遺伝的分化グループを探索する集団構造解析(SAMOVA)を用いて、瀬戸内海集水域の個体群を隣接する5つの遺伝的分化グループを発見。瀬戸内海集水域の個体群は、分岐年代推定から最終氷期に単一の古水系を通じて移動し、その後の海進によって分離され、遺伝的に分化したと考えられました。 吉野川水系の個体群は、瀬戸内海を越えた琵琶湖・淀川水系と同じグループに属していることから、非自然個体群、つまり人為的移入によるものであると考えられました。
 また、2004年から「世界淡水魚園水族館アクア・トトぎふ」で飼育している個体群の解析を行ったところ、伊勢湾集水域に固有のものと考えられる系統IIと推定。現在、伊勢湾集水域では、在来個体群の生息地すべてに系統Iの外来個体群が人為的に移入されていることから、同館の飼育個体群は遺伝的撹乱を受けていない貴重な個体群である可能性があります。
 本研究は、瀬戸内海集水域におけるシロヒレタビラ個体群の新たな遺伝的分化の新証拠を発見し、自然分布域を網羅的に解析したことで、5つの異なる遺伝的グループに分化していることを示しました。本研究では、瀬戸内海集水域におけるこれらの5つのグループを保全単位として提案しました。
[画像2: https://prtimes.jp/i/58617/203/resize/d58617-203-96e36546586aa96648e2-1.png ]


■■■ 転載/加工可能な論文中の図(1点) ■■■
図1. 本研究で使用されたシロヒレタビラ
の採集地点。自然分布域をほぼ網羅した。
この標高図は 、 国土地理院
(https://maps.gsi.go.jp/)および国土交通省の
デジタル国土情報(https://nlftp.mlit.go.jp)の
許可を得て使用している。



論文情報


論文題名:Phylogeography and genetic population structure of the endangered bitterling Acheilognathus
     tabira tabira Jordan & Thompson, 1914 (Cyprinidae) in western Honshu, Japan, inferred from      mitochondrial DNA sequences
和訳:日本の本州西部に生息する絶滅危惧種シロヒレタビラの系統地理と遺伝的集団構造をミトコンドリアDNA配
   列から推定する
著者:伊藤 玄¹²・小山 直人³・野口 亮太²・田畑 諒一⁴・川瀬 成吾⁴・北村 淳一²⁵・古屋 康則⁶
所属:1龍谷大学 生物多様性科学研究センター、2 NPO 法人流域環境保全ネットワーク、3 NPO 法人 ニッポンバ 
   ラタナゴ 高安研究会、4 滋賀県立琵琶湖博物館、5 三重県総合博物館、6 岐阜大学 教育学部
掲載先:国際オンライン専門誌 Nature Conservation 誌(Pensoft Publishers 社)
リンク:https://doi.org/10.3897/natureconservation.56.111745(2024年8月8日にWEB公開)

本資料提供は、共同研究チームである龍谷大学、岐阜大学、三重県総合博物館との同時プレスです


問い合わせ先:
滋賀県立琵琶湖博物館 研究部担当学芸員 川瀬・田畑、企画・広報営業課 鈴木
  Tel 077-568-4811 E-Mail info@biwahaku.jp
龍谷大学 研究部(生物多様性科学研究センター)
  Tel: 075-645-2184 E-mail: ryukoku.biodiv@gmail.com
岐阜大学総務部広報課
  Tel 058-293-3377 kohositu@t.gifu-u.ac.jp
三重県総合博物館
  Tel 059-228-2283 MieMu@pref.mie.lg.jp
NPO 法人流域環境保全ネットワーク
  ryuikinet@gmail.com
(配信先)本件は各機関から、文部科学省記者会、京都大学記者クラブ、宗教記者クラブ、滋賀県教育記者ク
ラブ、大阪科学・大学記者クラブ岐阜県政記者クラブ、三重県政記者クラブ、三重県第二県政記者クラブ、滋
賀県政記者クラブ、南部記者クラブにも配信しています。※ご取材いただける場合は、問い合わせ先までご連
絡ください。

PR TIMES

「絶滅危惧種」をもっと詳しく

「絶滅危惧種」のニュース

「絶滅危惧種」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ