アマゾン倉庫 無理やり退職させられた元女性バイトの証言

8月30日(金)16時0分 NEWSポストセブン

巨大企業の内側に迫る

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 日本市場を制圧した“巨大企業”の内実に迫るべく、ジャーナリストの横田増生氏は「東京ドーム4個分」の広さを誇るアマゾンの小田原物流センターに15年ぶりに潜入した。注文された商品を倉庫から探し、梱包・出荷エリアに受け渡すピッキングという作業に時給1000円で従事しながら、過酷な労働環境を強いられていた元アルバイトの話を聞くことができた。ちなみに15年前の時給は900円だったため、100円上がったということになる。


 * * *

 小田原の物流センターで潜入取材するだけでなく、話を聞かせてくれる人を探した。すると、無理やり“自主退職”させられたという元アルバイトに出会った。


 20代の田所美帆(仮名)は、2015年の年末から小田原で働きだした。小田原物流センターを仕切る下請けの人材派遣会社ワールドインテックの所属だった。


 はじめは順調に職場になれていったが、徐々にセンター内での人間関係や上司との付き合いがうまくいかなくなり、行き詰まりを感じるようになった。強引に自分の都合よく仕事を進めようとする同僚に振り回され、また上司からは達成不可能なノルマを課せられた。


 田所は次第に体調を崩すようになり、病院に行くと、うつ病と診断された。それ以降、欠勤する日が多くなった。2017年10月下旬、ワールドインテックの男性の担当者から呼び出され、欠勤が多い理由を問い詰められた。田所はこう語る。


「私は同僚の名前や彼らのわがままな仕事ぶりを説明し、私がどれだけ息苦しく感じているかを説明しましたが、ほとんどわかってもらえませんでした。いつの間にか、私と私の家族との間の問題に話がすり替えられて、そのことを誓約書に書かされました」


 


派遣会社の担当者が口述する通りに書かされた田所の手書きの誓約書には、「家族とのトラブルによる精神的なストレスと体調不良で、病院に通っていますが、トラブルが解決しないで、ずるずると自分を甘やかせてしまっていました」や「自分が出勤するといった以上、必ず出勤し、欠勤する場合には、必ず前日連絡します」とある。


「必ず前日連絡します」の箇所には、担当者の文字で、「前日が休みの場合は、15時までに連絡。勤務の場合は、退勤の18時に必ず伝える」と書き加えてある。さらに、「一・就業するにあたり、10月27日〜11月10日の期間において、遅刻、早退、欠勤を致しません。二・上記が守られなかった場合、自身より退職いたします」とある。


 田所は誓約書に書かれた期間を、シフト表通りに勤務した。しかし、12月になり再び体調を崩した彼女は、当日に電話連絡を入れて欠勤した。すると数日後、先の担当者から、「今日づけで退職してもらいますので、退職届を書きにきてください」という電話がかかってきた。


 まだ働く意欲があることを意思表示する田所に対し、担当者はこう話している。


「何のために前回、面談したんだっけ。身体不調で休むともう後がないよね、ということだよね。要は、口頭じゃなく、書面で約束したんだよね。そこのところは、どう考えているの?」


 田所が、契約書に書いてある期間中は休まず働いていたにもかかわらず、12月に入って休んだことで、即退職となることは法的に通用するのか、と訊くと、


「通用するよ。誓約書に自分で何て書いてあるの? 欠勤や早退について、自分で守れなかったら、自分で退職するって書いてあるよね。今までは、担当の僕が田所さんをかばってきたところもあるんだけれど、これ以上は会社でも難しいと判断したんだ。というか、逆に、どうしてまだ働きたいって、田所さんが言えるのかが、僕には不思議だよ」


 田所が「私って懲戒解雇ってことになるんですか?」と尋ねると、


「うーん……。それも自分でわかってないんだよね。なんでわからないの? なんで自分で書いた文面が読めないの? 勤怠不良だから、自主的に辞めることになるんでしょう」(担当者)


 会話が録音された音源を聞きながら、ひどい話だな、と私は思った。派遣会社のやりたい放題である。


 東京労働局の発行するパンフレットによると、「解雇のルールを確認しましょう」として、「(雇用主は)解雇事由を明示しなければなりません」とあり、次に「解雇権の濫用による解雇は無効です」とある。


 そこには、「『体調が悪く連絡できないまま無断欠勤をした』といったやむを得ない理由があった〈中略〉だけで解雇することはできません」と明記してある。まさに、田所はこれに当てはまる。さらに懲戒解雇ではないのなら、企業は、労働者に30日前に解雇を告げるのか、あるいは、30日分の解雇予告手当を払う必要がある、と書いてある。


 田所が約1か月後、ワールドインテック宛に「退職勧奨の拒否等に関する通知書」という書面を送ると、すぐに返事があった。同社の小田原事務所の所長名でこう書いてあった。日付は、平成30年2月1日。


「貴方より会社宛にお送り頂きました平成30年1月27日付の通知を拝見しました。会社は、同通知内容につき事実関係を調査しました結果、解雇予告手当相当額をお支払いさせて頂くことに決定いたしましたので、ご通知申し上げます。お支払いにつきましては、あなたの平均賃金の30日分、金152,460円を平成30年2月15日までに貴方の給与振込口座へ入金いたしますのでご確認ください」


 解雇予告手当を支払うということは、田所の担当者が強引に押し切ろうとした自主退職というやり方は間違っており、解雇権の濫用にあたることを自ら認めたようなものである。


 田所の退職について、ワールドインテックとアマゾンジャパンに見解を求めた。しかし、ワールドインテックからは、個人情報であるため回答しないと返信があり、アマゾンからは、私の取材に対しての回答は控える旨の連絡があった。


●よこた・ますお/1965年福岡県生まれ。関西学院大学を卒業後、予備校講師を経て、アメリカ・アイオワ大学ジャーナリズム学部で修士号を取得。1993年に帰国後、物流業界紙『輸送経済』の記者、編集長を務める。1999年よりフリーランスとして活躍。主な著書に、『潜入ルポ アマゾン・ドット・コムの光と影』『仁義なき宅配』『ユニクロ潜入一年』など。


※週刊ポスト2019年9月6日号

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