なぜ「妻の前だけコミュ障」になる男性が多いのか…「風邪ひいたかも」に「病院行ってきたら?」が0点回答なワケ
2024年9月2日(月)16時15分 プレジデント社
※本稿は、高草木陽光『ホンネがわかる妻ことば超訳辞典』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
写真=iStock.com/Cunaplus_M.Faba
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Cunaplus_M.Faba
■「妻だけコミュ障」の夫が多すぎる
夫婦問題のカウンセリングをしていると、相談者の男性からよくこんなことを訊かれます。「夫婦の会話って、何を話したらいいんですかね?」と。
十数年前は、「え? 夫婦なのにわかんないの⁉」(心の声)とビックリしたものですが、その質問があまりにも多いので、最近は「また“妻だけ”コミュ障か」と、当初とは違う驚きになっています。(妻だけコミュ障とは、妻とだけコミュニケーションがとれない夫のことをさしています)
夫婦で何を話したらいいのかわからないのは、新婚1年目の人も、20年目の人も同じで、何年夫婦をしていようが関係ないのです。
「夫婦の会話って、何を話したらいいんですかね?」の回答ですが、まず「何を話すかではない」ということを先にお伝えしておきます。「話さなきゃいけない」と思うから、みんな話せなくなるのです。「話す」ではなく「聴く」のです! そして「共感」するのです! もう少し付け足すと、「訊いてから→聴く」のです。
■質問し、その答えや意見に「共感」するのが基本
つまり、「質問する(訊く)→返答を聴く(聴く)→リアクション(共感)」、この繰り返しです。とにかく、何か質問して、その応えや意見を「共感」しながら聴いてあげれば、めでたく会話成立です!
高草木陽光『ホンネがわかる妻ことば超訳辞典』(青春出版社)
きっと、「何を訊いたらいいのかわからない」という人がたくさんいることでしょう。そんなのなんでもいいのです。たとえば、ニュースを見て「この殺人犯、生い立ちが悲惨だったみたいだよね。もし、自分の親がネグレクトだったらどうなってたと思う?」とか……。「そんな重い話題ムリ!」って言うなら、もっとライトに「十二支に、なんで“猫年”がないか知ってる?」とかでもいいから(答えは自分でググってください)!
「そんなくだらない質問でいいのか?」って、いま思いました? 思いましたよね? いいんです! ただ、“猫年”の話は、答えを言っても「へー」の一言で終わる可能性があります。なので、そこからまた話を“広げる”のです。「そーいえば、○○さんちのネコちゃんだけど、しゃべるらしいよ!」とか。少しくらい話を盛ってもいいから、とにかく「連想ゲーム」のようにつなげていくのがポイントです!
■「未知の妻」を発見していくことの価値
で、その結果どんな効果が期待できるのか? ということですが、まず「質問力」が高まります。そして、質問するためには質問の“ネタ”(話題)集めが必要です。妻が興味を示しそうなネタや、妻の価値観を深く知れるネタ集めを意識することで、「インプット能力」も高まります。
いろんな質問を投げかけて、妻の意見や考えを知ることができるということは、あなたが知らなかった“未知の妻”を発見できるということです(すごい収穫)。そして、妻を“知る”ということは、妻が喜ぶこと、悲しむこと、好きなこと、嫌いなこと、欲しい物、欲しい言葉などが手に取るようにわかるようになるということでもあるのです(大収穫)!
さあ、ここまでお伝えしたら、もうおわかりですよね? 質問して妻を知ることで、妻の求めるものがわかった。なので、後は夫であるアナタは妻が求める「言葉」と「思いやり」を贈るだけ。
そして忘れてはいけないのは、“松岡修造”ばりの「共感力」と「応援力」を発揮すること! 難しく考えず、今夜は素敵な奥様とワインでも飲みながら夫婦の会話を楽しんでくださいませ。
■“共感要求系”妻ことば1:「風邪ひいたかも」
【妻ことば】
「風邪ひいたかも」
「なんか、頭が痛い」
(超訳)
「体調が悪い」って言っているときくらい、家事も育児も休ませてほしい。どうして夫は何もしてくれないんだろう? 具合が悪くても私が家事をするのが当たり前だと思っている、その神経が信じられない。
●夫が言いがちな返答
「オレのメシは?」
「病院行ってきたら?」
「オレも」
ただ“体調の報告”をしているわけではなく、いたわりの言葉や優しい言葉が欲しいときに口にする言葉。
妻が体調不良を訴えたとき、夫がやりがちなのが“解決策の提案”と、自分の“メシの心配”です。心配だからこそ「薬を飲んだほうがいい」「病院に行ったほうがいい」と言ってくれるのはわかるのですが、残念ながらそれらの言葉は妻にとって“優しさ”ではありません。
写真=iStock.com/FreshSplash
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妻は、「どうしたら早く治るか?」の答えを聞きたいわけではなく、真っ先に、“いたわりの言葉”が欲しいのです。「オレのメシは?」と、自分のメシの心配をする夫は、一生恨まれます。
また、「オレも熱っぽい」など、自分の体調不良を被せてアピールしてくる“オレも族”が、必ず出没するのもこうした場面です。そのような無神経な発言が度重なると、信頼も尊敬も失われ、妻の気持ちは一気に冷めてしまうでしょう。まずは自分の心配よりも、妻へのいたわりを!
●こじらせない返答例
「大丈夫? 食欲は? 食べられそうなら何か作る(買ってくる)よ」
「あとは僕がやるから、今日は早く休んで」
■“共感要求系”妻ことば2:「仕事が辛い」
【妻ことば】
「仕事が辛くて……」
「もう会社、行きたくなーい!」
(超訳)
別に仕事を辞めたいわけじゃないのよ。愚痴を聞いてほしいだけ。それに、私も仕事しているのに家事育児の負担が大きすぎてホント大変ということもわかってほしい。
●夫が言いがちな返答
「辛いなら仕事辞めたら?」
「パートなのに?」
「オレのほうが辛いよ」
「仕事が辛い」=「辞めたい」というわけではなく、仕事を含めた日常生活の「共感」を求める種類の言葉です。
夫が思う「仕事が辛い」と、妻が思う「仕事が辛い」は、まったく違った要因であることが多いのです。仕事をしながら、ほとんどの家事育児を担っている妻は“仕事そのもの”が辛いというよりも、仕事・家事・育児など家のことも考えながら毎日の生活を維持していくことに、しんどさを感じています。
写真=iStock.com/ljubaphoto
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精神的、体力的なしんどさを“自分の物差し”で図る夫がいますが、それはあまりにもナンセンス。妻の弱気な発言は、心に寄り添うチャンスでもあるのに……。
職場で嫌なことがあったときは、味方である夫にただ愚痴を聞いてもらえるだけで明日のエネルギーに変えられるのです。なかには妻の愚痴を聞くことを不毛に感じる夫もいるかもしれませんが、お互いの心の安定を望むならば必要なことなのです。
●こじらせない返答例
「どうしたの? 大丈夫か? 話、聴くよ」
「何かあった? たまには何か美味しいものでも食べに行くか!」
■“共感要求系”妻ことば3:「私が間違ってるの?」
【妻ことば】
「私が間違ってるの?」
「今日こんなことがあった(言われた)んだけど、どう思う?」
(超訳)
私が間違ってるのかな? どう思う? あなたには、絶対共感してほしいんだけど。「君は間違っていない」と言ってほしいし、味方でいてほしい。いきなり否定されたら悲しいな。
●夫が言いがちな返答
「気にすることないよ」
「〜すればよかったのに」
「どっちもどっちじゃない」
気持ちに共感してもらえそうな、安心できる人に発する言葉。たとえ「妻に非がある」と思っても、直球で否定するのはお勧めしません。
まずは状況を把握し、妻自身がかかえた感情に対して「それは大変だったね」と共感を示すことが、穏やかな夫婦関係を維持するためには何よりも大切です。
もし助言したいことがあっても、途中で口を挟まないようにしてください。共感しながら一通り話を聴いてあげるだけで、妻の心は満たされますから。アドバイスを求められたら「自分だったら、こんなふうにしてみるかも」「こうしてみるのはどうかな?」という強制しない言い方をしてあげると冷静に聞く耳を持ってくれるでしょう。
夫婦関係を長期的に保つためには、“正論”を突き付けたり白黒ハッキリさせたりすることが必ずしも正しいとはかぎりません。「正論」=「夫婦の幸せ」ではないのです。まずは、アドバイスよりも「共感」。聴くことに徹し、感情を吐き出させてあげましょう。
●こじらせない返答例
えー! それは大変だったね。そんな(酷い)ことを言われたの⁉
(妻の名前)は間違ってないよ。よく我慢したね。(ヨシヨシ)
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高草木 陽光(たかくさぎ・はるみ)
夫婦問題カウンセラー
「HaRuカウンセリングオフィス」代表。男性クライアントを含め、これまで約10000件のカウンセリングを行い、夫婦問題・家族問題などで悩む人の心に寄り添いながら、解決に向けて支援している。テレビ/ラジオの出演、雑誌・新聞での掲載多数。著書に『なぜ夫は何もしないのか なぜ妻は理由もなく怒るのか』(左右社)など。
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(夫婦問題カウンセラー 高草木 陽光)