まともな候補が一人もいない…元東京都知事が「小池・蓮舫・石丸の三氏はいずれも問題がある」と断じる理由【2024上半期BEST5】

2024年9月3日(火)16時15分 プレジデント社

「後出しジャンケン」のほうが有利(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/Cunaplus_M.Faba

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2024年上半期(1月〜6月)、プレジデントオンラインで反響の大きかった記事ベスト5をお届けします。政治・経済部門の第3位は——。(初公開日:2024年6月13日)

■史上最高の30人以上が出馬予定


今回の都知事選は、30名以上が出馬する予定と、候補者数では史上最高となりそうである。今のところ、立憲民主党の蓮舫参議院議員が手を挙げ、大きなニュースとなっている。現職の小池百合子都知事は12日に出馬表明している。また安芸高田市長の石丸伸二が市長職を辞任し、立候補するという。


現時点での展望と問題点を指摘してみたい。


現職の小池都知事は当初、5月29日に出馬表明すると言われていたが、依然沈黙を守り続けていた。「後出しジャンケン」のほうが有利という選挙戦術の側面もあったのかもしれないし、元側近が暴露した学歴詐称疑惑が影響したのかもしれない。


写真=iStock.com/Cunaplus_M.Faba
「後出しジャンケン」のほうが有利(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/Cunaplus_M.Faba

■2020年の「もみ消し疑惑」


2020年5月に発売された石井妙子氏の著書『女帝 小池百合子』(文藝春秋)が、小池氏の「カイロ大学卒業」という経歴は疑わしいと指摘したが、小池氏はその指摘を否定する工作を行った、という疑惑がもちあがっている。


小池氏は側近の小島敏郎弁護士に相談し、小島氏は「カイロ大学に声明文を出してもらう」というもみ消し工作をしたという。


具体的には、小池から依頼された元ジャーナリストが、6月に小池の卒業を証明する文案を書き、それとほぼ同じ内容の声明文がエジプト大使館のフェイスブックに掲載された。


その工作は成功し、学歴詐称疑惑はいったんは雲散霧消したのである。


コロナ流行を理由に小池は街頭での選挙戦を控えたため、この問題について他候補やメディアに質問されることもなく、選挙の争点にもならなかった。こうして、2020年7月の都知事選で小池は圧勝した。


■注目される「選挙公報の学歴」


私は40年前から小池氏を知っているが、私に対して学歴についての嘘をつき続けてきたので、私は学歴詐称の可能性は極めて高いと思う。


学歴詐称は公職選挙法違反であり、当選は無効となる。ただ、時効は3年であり、2020年の選挙での違反はもう罪には問われない。


しかし、公文書偽造(時効7年)や私文書偽造(時効5年)については、今でも罪を問うことが可能だ。


今回、小池が立候補するならば、選挙公報に記載する学歴は「カイロ大学卒業」と記すのであろうか。もし、そのように記述したら、小島は訴訟を起こすと息巻いている。


筆者提供
「カイロ大首席卒業」と書かれた小池氏著書の奥付 - 筆者提供

■「小池氏の国政復帰」は国益を損なう


「もみ消し工作」が事実なら、小池氏はエジプト政府に対して大きな借りを作ったはずで、小池氏はもはやエジプト政府の言うなりであろう。そんな小池氏にはもう政治家としての将来はない。国政に復帰するなどもってのほかだ。外交において高い確率で国益を損なうだろう。


小池氏が支援すると選挙に勝つという「神話」も色あせてきた。4月21日の目黒区長選では、都民ファーストの会と国民民主党が推す伊藤悠候補が敗北した。


4月28日の衆議院東京15区補選では小池氏が推した乙武洋匡候補が第5位と振るわず、落選した。5月26日の東京都議補選(目黒区)では、立憲民主党候補と無所属候補が当選し、小池氏が応援した自民党候補は落選した。6月2日に行われた港区長選挙でも、小池氏の支援を受けなかった無所属候補が勝っている。


■小池氏の「神通力」も失われた


昨年12月の江東区長選や今年1月の八王子市長選では、小池氏の支援する候補が勝っている。だが、わずか数カ月で、流れは一変し、小池氏の「神通力」も失われたようである。


その一つの原因は、やはり学歴詐称問題だろう。アラビア語の専門家やエジプト留学経験者は、こぞって、小池氏がアラビア語能力を欠いていることを指摘しており、その指摘は大きな説得力を持っている。先述したように、私も、40年前に彼女からこの問題で嘘をつかれたことを公表している。


また、自民党はそんな小池氏を推薦するのであろうか。それはあまりにリスクの高い決定であり、もし私が自民党の幹部だったら反対すると思う。


写真提供=共同通信社
小池氏の「神通力」も失われた(2期目最後となる都議会定例会に出席した東京都の小池百合子知事、2024年5月29日) - 写真提供=共同通信社

■小池氏も蓮舫氏も「よく似たレベル」


一方、蓮舫氏はどうだろうか。小池氏も蓮舫氏もキャスター経験があり、テレビが彼女たちを政治家に押し上げたと言っても良い。抜群の知名度があり、彼女たちを取り上げれば、番組は視聴率を稼げていた。この二人は、どうすればマスコミの耳目を集めることができるかをよく知っている。


蓮舫氏は学者ではなく、本格的な研究書などの著作もない。蓮舫氏といえば、民主党の事業仕分けにおいて、スパコン開発についての「2番ではだめなのですか」発言で知られるが、こうした発言が出るのも彼女の知識や政策理解が浅薄だからではないか。


政策能力に欠ける点では、小池氏も蓮舫氏もよく似たレベルであり、テレビタレント出身議員の限界というべきだろう。


■基礎知識のある国会議員は半分程度


そんな彼女たちがこれまで閣僚に任命されてきたのは、ひとえに知名度の高さによるもので、政策能力、答弁能力を評価されてのものではなかったと考える。


平等が原則の民主主義下では誰でも立候補できる。だが、国政に携わる以上、憲法以下の法体系や、経済や金融の仕組み、外交・安全保障などについて、基礎的な知識を持っている必要がある。


あくまで私見ではあるが、いまの国会議員の中で、そうした知識を持っているのは、おそらく半分程度だろう。


■勉強が足りないから頓珍漢な答弁を繰り返す


もちろん、議員になってから猛勉強し、最低限必要な知識を身に付けてもいい。


だが、当選後は次の選挙を見据えた活動に時間を取られるため、なかなかその時間もないのが実情である。


だからいまの政治家たちは、安易に役人の「ご進講」を丸呑みしたり、あるいは耳学問に頼り頓珍漢な答弁を繰り返すのだろう。


特に蓮舫氏の国会答弁を聞いていると、その感を強く持つ。


他党との水面下の交渉を担当したり、官僚をうまく操縦するという面でも、蓮舫氏は目立った実績を上げてはいない。


マスコミ受けは良いが、他の政治家や役人の間ではあまり人気がない。それが蓮舫氏の偽らざる評価ではないだろうか。行政のトップとしての前途はあまり明るくはないように思う。


写真=iStock.com/bee32
勉強が足りないから頓珍漢な答弁を繰り返す(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/bee32

■「共産党の支援」は蓮舫氏にとってマイナス


蓮舫氏は、自らの党である立憲民主党の推薦のみならず、共産党からも支援を受けている。ただ、共産党に支援されるのにはマイナスの面もある。蓮舫氏はこの点についてどのように考えているのだろうか。


どんな政策でも拒否する政党を「拒否政党」と呼ぶが、共産党は「拒否政党」の典型である。共産党の支援を受ければ、共産党支持者の票は増えるだろうが、自民党支持者を中心とした保守層の票は逃げるし、勝敗に決定的な役割を果たす「無党派層」の票も減る可能性があるだろう。


私が蓮舫氏の選挙参謀なら「共産党推薦」は受けなかっただろう。


■安芸高田前市長の石丸氏は「台風の目」


都知事選の台風の目となりそうなのが、前広島県安芸高田市の石丸伸二氏である。地方市長からの挑戦であり、新しい風として歓迎されている。


現在41歳の石丸氏は、三菱UFJ銀行に勤務した後、2020年の安芸高田市長選で初当選している。都知事選に立候補するため、6月9日に任期を全うせず市長を辞した。


石丸氏は、SNSで「いびきをかいて、ゆうに30分は居眠りする議員」について発信するなどして、市議会と対立し、全国的に話題になった。


議会の反発に対して、「非公開の会議の席で『議会を敵に回すと政策に反対するぞ』と議員から恫喝(どうかつ)された」とX(旧ツイッター)に投稿し物議をかもした。


写真=iStock.com/hocus-focus
Xに投稿し物議をかもした(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/hocus-focus

さらには、市長選でのポスター制作について、印刷業者から約73万円の代金を踏み倒したとして訴えられている。


■小池氏と蓮舫氏の悪いところを石丸氏も持っている


石丸氏は「市議会との対立」を演出し、メディアの注目を浴びたため、自らの能力と発信力に自信を持ったのであろう。「誤解」をもとに、都知事選へ立候補したわけだ。


しかし、発信力だけで首都の舵取りができるわけではない。ある意味、小池氏と蓮舫氏の悪いところを石丸氏も持っていると見ている。


そもそも、任期満了前に安芸高田市政を投げ出したことを批判されるのは避けられない。


6月6日に行われた市長退任式において、石丸氏は、「4年を振り返るととてつもない充実感がある。できることは全てやりきった」と述べ、小中学校の給食無償化や学校用務員の配置などの成果を誇った。また、「市長としてやるべきことをやったが、議会が否決したものは議会の責任」と述べている。


■石丸氏はおそらく都議会と対立する


もし石丸氏が都知事になり、安芸高田市と同じ手法で、同じ政策をやろうとすれば、都議会との間に抜き差しならない対立が生じるであろう。そうなれば都政は停滞してしまう。


石丸氏は、どの政党からの支援も受けずに、無所属で戦うという。それ自体は結構なのだが、都政運営では議会との関係が重要になる。



舛添要一『現代史を知れば世界がわかる』(SB新書)

さらには、首都である以上、国との関係も重要である。


東京都は金持ちで、政府交付税交付金を受けていない。それだけに、国に先駆けて日本のために必要な改革を実行することができる。しかし、それを可能にするのは国との対立ではなく、協調である。


石丸氏がこの点を理解していなければ、彼の都知事就任によって、東京都は首都としての輝きを失ってしまうだろう。


以上、三者三様、問題点の多すぎる候補ばかりである。


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舛添 要一(ますぞえ・よういち)
国際政治学者、前東京都知事
1948年、福岡県生まれ。71年、東京大学法学部政治学科卒業。パリ、ジュネーブ、ミュンヘンでヨーロッパ外交史を研究。東京大学教養学部政治学助教授を経て政界へ。2001年参議院議員(自民党)に初当選後、厚生労働大臣(安倍内閣、福田内閣、麻生内閣)、都知事を歴任。『ヒトラーの正体』『ムッソリーニの正体』『スターリンの正体』(すべて小学館新書)、『都知事失格』(小学館)など著書多数。
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(国際政治学者、前東京都知事 舛添 要一)

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