マックvsモス 「ご当地バーガー」開発競争の効果とは

9月8日(土)7時0分 NEWSポストセブン

地域密着のご当地バーガーで活路を見出したいモスバーガー

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 異物混入問題から立ち直り、目覚ましい業績回復(2015年12月期は234億円の営業赤字だったが2017年12月期は189億円の営業黒字)をみせる「マクドナルド」に対し、外資系チェーンの攻勢にも遭い苦戦が続く「モスバーガー」──。いまハンバーガー業界のトップ2は完全に明暗が分かれているが、そんな両チェーンがともに力を入れているのが、“ご当地バーガー”の開発だ。果たして地域密着キャンペーンにはどんな狙いがあるのか。ジャーナリストの河野圭祐氏がレポートする。


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 数年前、鶏肉の期限切れ問題等でどん底状態にあった日本マクドナルド。そのため、一時期は店舗閉鎖ラッシュとなって、米国の本社が日本マクドナルドを見限って売却するという観測もあったほどだった。それが昨年12月期には一気にV字回復を遂げ、出店数から退店数を引いた純増に転じ、攻勢をかけている。


 一方、ハンバーガー業界2位のモスフードサービスは、マクドナルドの敵失の際、攻めに打って出るチャンスを得たが、逆に最近は防戦、守勢に回り、目下攻勢に出ているのはバーガーキングやフレッシュネスバーガー、ウェンディーズ・ファーストキッチンといった中堅チェーン、それにシェイクシャックをはじめとした外資系の高級バーガーチェーンという構図だ。


 そんな中、今夏はマクドナルドとモスとで、さながら“ご当地バーガー攻防戦”の様相を呈した。


 マクドナルドのほうは、8月8日から9月上旬(予定)までの期間限定で、同社としては初となる「ご当地グルメバーガー祭り2018」を展開。「宮崎名物チキン南蛮バーガー」は全国で展開、あとは日本を東西に分け、東日本限定で「名古屋名物みそカツバーガー」を、西日本では「金沢名物黒カレーカツバーガー」を投入(3商品ともに税込み390円)。


 マクドナルドは昨年夏も「マックなのか?マクドなのか?おいしさ対決!」という、ちょっと変わったキャンペーンを行っている。これは、マクドナルドの愛称が関東ではマック、関西ではマクドが多いことに着目し、マック軍とマクド軍に分かれて、それぞれ「東京ローストビーフバーガー」と「大阪ビーフカツバーガー」を期間限定販売し、美味しさの勝敗をツイッターの数で決めるという、ユニークなものだった。


 こうした仕掛けは、マーケティングや販促に長けたマクドナルドらしいものといえたが、ある異業種の社長はこのキャンペーンを見て、「マクドナルドさんはいいところに目をつけましたね。いまの時代、全国一律のマーケティングでなく、いわば“マイクロマーケティング”にどの企業も必死ですから」と語っていた。



 対するモス。同社の月次情報を見ると、新年度に入った今年4月以降から7月まで、既存店売上高、既存店客数、全店売上高がすべて前年比の100を割り込んでいる。既存店客単価こそ、4、6、7月と100を超えているが、依然厳しい。


 そのモスは過去3回、地域密着キャンペーンを行っている。2015年が「中津からあげバーガー」と「釧路ザンタレバーガー」、2016年が「じゃじゃ味噌チキンバーガー」と「パリパリれんこんチキンバーガー」、2017年が「北見しょうゆタレとんかつバーガー」「名古屋海老フライバーガー」「秩父わらじカツバーガー」「長崎トルコライス風バーガー」だった。


 そして、去る8月28日に4回目となる同キャンペーンの発表会を行った。今回発表したのは、「兵庫・加古川デミグラ牛カツバーガー」(税込み410円)と「静岡・駿河湾水揚げ桜えびコロッケバーガー」(同430円)の2商品。具材で使用している素材も違うので一概に比較はできないが、前述のマクドナルドの商品が390円なので、価格的には大差ない。


 こうした地域密着キャンペーンは期間限定の全国販売だが、モスは「淡路島のこだわり農家さんがつくったたまねぎバーガー」「琉球クラシックバーガー」「信州産豚メンチカツバーガー」「東北産豚の仙台みそ焼きライスバーガー」など、地域限定商品も展開してきている。


 発表会の際、モスフードサービスの中村栄輔社長は一連のキャンペーンについてこう語っていた。


「このキャンペーンは、客数を上げるとか売り上げを上げるために出しているわけではなく、キーワードにしている地域密着を具体化した、ウチらしいものの1つだと思っていますし、継続しながら丁寧に磨き上げていく。もっともっとキャンペーンが盛り上がって、結果的にいろいろなお客様に食べていただいて売り上げにつながる、それが一番ありがたいことですけどね」


 ただ、通常のレギュラーメニューにはない商品を出すには苦労も多い。


「地域密着キャンペーンは、使用している食材の量が限られているため、あまり生産ボリュームを大きくはできない部分もありますので、地域を絞ってやったりもしています。地元の人たちは地元の美味しいものを全国にアピールしたいわけですから、その兼ね合いの中でうまくバランスをとってやっていかないといけません」(中村社長)


 続いて、商品開発グループリーダーの寺本和男氏が今回の2商品についてこう補足した。


「今回のテーマは、その地域にしかない素材や食材を使うこと。『デミグラ牛カツバーガー』は、もも肉を使用したビーフカツに特製デミグラスソース。兵庫県加古川市ではソウルフードになっている“かつめし”を知らなかったので、商品開発のメンバーと加古川まで行ってかつめしを食べ、それをアレンジしました。関東で感じるデミグラスソースより、さらに旨味や甘味の特徴が際立っていると思います。


 静岡の『桜えびコロッケバーガー』については、全国でも駿河湾でしか採れない、桜えびという貴重な素材を使用し、今回はコロッケにしっかりと桜エビを閉じこめさせていただいた。ソースもエビクリームにしています」


 ちなみに筆者が試食した印象では、「デミグラ牛カツバーガー」は、もも肉なのでヒレ肉ほどの柔らかさはないものの、ソースとの相性が良く濃厚な味わい。一方の「桜えびコロッケバーガー」は食べると、すぐに桜えびの味わいが口の中に広がるのが特徴的だった。



 マクドナルドが一般的なFCチェーン同様、本部が上でFCが下という垂直モデルなのに対し、「モスは本部もFCも横並びで加盟店同士のつながりも深い水平モデルという違いがある」というのが中村社長の説明。一連のキャンペーンも、全国の加盟店のオーナーやパート、アルバイトを含むスタッフからアイデアを募集(今回は2651件。それをまず59件に絞り、さらに8件、最終的な商品化で2件とした)していることを強調していた。


 要は、加盟店に関わる人たちを中心に、その地域ごとに携わる農業、漁業従事者、さらに各自治体とタッグを組みながら取り組んでいるのが、ほかのチェーンの類似キャンペーンとの違いというわけである。


 かつては、価格が安くて作るのも早いが品質はイマイチと思われたマクドナルドに対し、少し高めで時間もかかるが丁寧で、契約栽培の野菜や国産素材使用で安心、というのがモスの最大の売りだった。


 ところが、前述したように外資系高級バーガーが相次いで上陸し、安価なマクドナルドと高価な外資系チェーン、さらに高級素材や国産素材を使用するチェーンも増えて、その両者に挟まれる形でモスの強みが消費者に効きにくくなってしまったことは否めない。


 モスには「モスクラシック」という単価1000円の高級バーガーを供する店舗もあるが、その1号店を出して以降、まだ2号店は出していない。


 さらに定番強化ということで、改めて基幹商品の「モスバーガー」の強化にも取り組み、バンズも一新したものの大きな底上げまでには至らなかった。また、モスの店はフレンドリーでアットホームな雰囲気を大事にしてきたが、最近は外資系チェーンも含めて、都会的でお洒落な店構えのチェーンもかなり増えている。


 そんな中、モスはこれからどこに活路を見出していくのか。地域密着キャンペーンは今回が4回目だが、「この手の商品はもう十数年前から出していて、『宮崎のチキン南蛮バーガー』は、私が営業部長の頃に出している」(中村社長)と語っていた。


 確かに、全国展開でなく地域限定商品まで広げれば、これまで手がけたご当地バーガーのレシピはかなりの数に上り、ノウハウや知見も蓄積できているだろう。


 地域密着の強化は手間暇やコストはかかるかもしれないが、その地域の農漁業者や自治体を巻き込み“ご当地のモス”を全面に出していければ、厳しいハンバーガー競争の環境下では差別化の大きな武器となるだろう。

NEWSポストセブン

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