日本人の「競争嫌い」を逆手にとった「ZOZOTOWN」の異色さ

9月9日(土)7時0分 文春オンライン

 終身雇用、年功序列が実質的に存在し続ける現状は、本質的に「競争が嫌い」という日本人の特質に根ざしていることを 前回 書いた。私自身、「毎日が競争」である実力主義の外資系企業での“しんどさ”に嫌気がさして日本企業に転職した経験があるが、日本人のそうした特質を生かした雇用を戦略的に行い、「競争力」として生かしている企業を紹介しよう。


 そもそも日本人の「競争嫌い」は昨日や今日始まったものではない。7世紀に成立した日本最初の成文法といわれる十七条憲法。その第一条は「和を以て貴しとなす」だ。何よりもまずは“和”だったのである。飛鳥時代から日本人は、争うことを忌避してきたのだ。


 その後、15世紀に応仁の乱で初めて下剋上が起こり、続く戦国時代は実力主義の争いの時代となるが、それは長い日本の歴史の中では例外的で、最終的には17世紀に天下統一を成し遂げた徳川支配による平和が300年間続いた。徳川幕府は士農工商という身分制度でヒトをがっちりと固め、上にも下にも行けない(行かない)ことで争いを起こさせない基盤を社会に創ったのだ。黒船という外的圧力を受けるまで平和が維持出来たという事実は、こうした制度が日本人の「競争を嫌う」という特質に添ったものであったことを示している。


 また、“一子相伝”が様々な領域で今も日本社会の中に存続している。一子相伝とは、技術、芸術の奥義を自分の子供のうち一人だけに伝えて他に洩らさないことだが、これも争いを避けるための制度として機能している。


「9時出社、15時退社」で大躍進


 そんな「競争嫌い」という普遍性を持つ日本人を、今、企業はどう競争力として活用すればよいのだろうか? これほど身体の芯にまで「競争嫌い」が沁みこんだ日本人の内面を矯正するのは、効率的とは思えない。


 そこで、ある新興企業がその一つの解として浮かび上がる。


 ファッション通販サイトの『ZOZOTOWN』を運営する前澤友作氏率いるスタートトゥデイだ。この会社は途轍もなく日本人の特質に合った雇用形態を取っている。従業員の基本給とボーナスは一律、違うのは役職給だけというものである。


前澤友作氏 ©文藝春秋

 ある社員はこう語る。


「どうやったらほかの社員を出し抜けるか、上司に気に入られるかなどと考える社員が増えるほど、会社はつまらなくなるし、業績も上がらなくなる。それならばいっそのこと給料一律で社内競争を排することで、社員にはお客をどう喜ばせるかを考えることに時間を使ってほしい。そんな社長の想いから始まった制度です」(「週刊現代」2017年9月2日号『一代で一兆円企業を築いたZOZOTOWN社長「異形の履歴書」』より)


 労働時間も9時5時ではなく6時間労働制。9時に出社すれば15時退社となる。前出の社員によれば前澤氏の狙いは「最短時間で最高のパフォーマンスをあげることでさっさと仕事は切り上げて、遊びや趣味で刺激を受けてほしい」というところにあるという。


 結果はどうか。アパレル不況が叫ばれる中、年間670万人が『ZOZOTOWN』で服を買い、同社の業績は上場以来10期連続の増収増益、2017年3月期の営業利益は262億円で三越伊勢丹ホールディングスの239億円を抜き、8月1日には株式時価総額が1兆円超えを見せている(因みに三越伊勢丹の時価総額はそのおよそ2分の1弱)。



社長自身も「競争嫌い」?


 現在41歳の前澤氏は地元千葉への思い入れが強いことでも知られ、「東京は競争心が強い人が多くて嫌い」と、会社も自宅も、現在建設中の「100億円豪邸」といわれる新居も、千葉市内にあるという徹底ぶりである。


 ここではスタートトゥデイの企業分析には立ち入らない。しかし、自社の競争力を高めようとするときに、日本人の特質に雇用のあり方をぴったり合わせて成果を出していることに私は強く惹かれるのだ。


 ヒトは何によって働くのか?


 良き企業風土というものは様々な個別条件で自然に出来上がるものだと考えられてきていた。しかし、その本質は雇用にあると見抜き、「競争嫌い」という日本人の特性を逆手にとって新しい競争の形を実践する企業が出てきた。日本の競争力を「ヒトと企業」という側面から見た時、ここに一つの解を見る気がする。


 これからこのような企業がさらに出て来るかどうかは、スタートトゥデイの今後にかかっているが、こうした普遍性を持っている限り「強い!」と私は考えるのだ。


日本企業の新しい形となるか? ©iStock.com

(藤原 敬之)

文春オンライン

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