車2、3台分の資産が吹き飛んだ…株価暴落で痛手を負ったFPが「まさかの安値」を狙って準備していること

2024年9月9日(月)10時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PeopleImages

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株式市場は過去何度も暴落を経験しているが、そのときにどう行動するかが投資成果を大きく左右する。ファイナンシャルプランナーの藤原久敏さんは「リーマンショックとコロナショックの経験を生かして、今回の暴落ではうまく対処できた。そしていま“まさかの安値”で買うための準備をしている」という——。
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■歴史的暴落は、繰り返す


今年8月1日、日経平均株価は約1000円もの暴落、翌日2日には約2200円もの大暴落、そして翌週5日には約4400円もの超暴落と、史上最大の下げ幅を記録しました。


私は20年以上の投資経験はありますが、これだけインパクトのある暴落は非常に稀です。


今年からNISAで投資を始めた人も多いかと思いますが、その人達は、いきなり、歴史的な暴落に遭遇したわけです。ただ、これは断言しますが、今回のような歴史的暴落は、過去、何度も繰り返されています。


この20年間であれば、リーマンショック(2008年)やコロナショック(2020年)が代表的な歴史的暴落と言えるでしょう。


このことは、私自身、ファイナンシャル・プランナー(以下、FP)として普段から口を酸っぱくして言っていますし、また、私自身の投資においても、常に心がまえをしています。


それでも、今回の暴落では、一瞬で車2〜3台分の資産が吹き飛びまして、いざ暴落に直面すると、なかなか厳しい状況になることは避けられません。そこで今回は、私自身、これら歴史的な暴落にどう対処してきたのか、その失敗や反省も交えて、書いてみたいと思います。


■リーマンショックで経験した最悪の対処


リーマンショックとは、2008年9月、当時のアメリカ大手投資銀行であるリーマン・ブラザーズの経営破綻をきっかけに発生した、世界的な金融危機のことです。リーマンショック直前の9月中旬に1万2000円台だった日経平均株価は、10月下旬には一時7000円を割り込み、わずか1カ月半で4割以上もの大暴落となったのでした。


これが、私が初めて遭遇した歴史的な大暴落だったのですが、このときの私の対処は最悪で、投資において、一番やってはいけないことをやってしまったのでした。


それは、狼狽売り。


そのあまりの暴落っぷりに不安・焦り・恐怖といった感情が一気に押し寄せ、文字通り、狼狽えて、ほぼすべての保有銘柄を売ってしまったのでした。そのときは、あまりのショックに、「すべてを売るか、売らないか」の2択しか頭に浮かばなかったのでした。


そして、それはすなわち、「市場からの撤退」でもありました。


そんな最悪の対処をしてしまった理由としては、当時はまだまだ投資経験不足ゆえに、資産の大半を、日本株を中心としたリスク資産に振り分けていたこと、そして、確固たる投資スタンスを持っていなかったことでした。


そのときの損失は手痛い授業料となりましたが、もっと痛かったのは、(市場から撤退していたことにより)その後のアベノミクス上昇相場に乗り遅れてしまったことでした。投資において、上昇相場に乗り遅れることは致命的で、その意味でも、「市場からの撤退」は、絶対にやってはいけないことなのです。


■コロナショックで残った「悔い」


その後、アベノミクスに乗り遅れながらも、なんとか投資に復帰し、投資資産も順調に増やしていきました。


そこで遭遇したのが、コロナショックでした。


コロナショックとは、新型コロナウィルス感染症(以下、コロナ)の爆発的な流行による、2020年2月頃からの世界的な経済混乱、そして市場暴落のことです。


それまで2万円を大きく上回る水準で推移していた日経平均株価ですが、事態が深刻になってきた2020年2月下旬あたりから一気に下落を始め、あれよあれよという間に節目の2万円を割り込み、3月中旬には1万6000円台にまで下落。


わずか1カ月足らずで8000円程の暴落となったのでした。


しかし、このときはリーマンショック時とは違って、私は、狼狽して売ることはありませんでした。なぜなら、リーマンショック時の反省を活かし、また、FPとして普段からアドバイスをしている「投資は余裕資金で」という投資の基本を、自らしっかり実践していたからです。


結果、株式等のリスク資産は、資産全体の3割程度に留めており、株価暴落による損失は、比較的浅く済んだのでした。


また、自身の基準で、ずっと応援したいと思える銘柄を吟味して購入しており、「保有銘柄については、基本的には売らない(一生涯保有し続ける)」との、確固たる投資スタンスを確立していたことも、歴史的な暴落にも狼狽えなかった理由でした。


その後、ほどなくして相場が回復し、狼狽売りをしなかったことには自画自賛できたのですが、悔やまれたのは、「暴落時に、買いに向かう」ことができなかったことです。


暴落時には、優良銘柄であっても関係なく、とにかく理不尽に叩き売られるものです。


実際、叩き売られていた銘柄の中には、私が吟味の上、ぜひとも購入したいと思える優良銘柄も多くあり、「今がチャンス」であることは、頭では分かってはいました。しかし、コロナ禍という未曽有の大混乱に、狼狽売りを避けることはできても、買いに向かうことまではできなかったのでした。


写真=iStock.com/Wirestock
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Wirestock

■今回の歴史的暴落で、買った銘柄


そして、次の歴史的暴落は、冒頭で触れた、今年8月頭の暴落です。


今回の暴落については、日銀のサプライズ利上げが大きな要因とはされていますが、アメリカの景気後退観測も大きな要因ですし、緊迫する中東情勢も無視できません。また、海外投資家の投機的な売買こそ、一番の要因とする声もあります。


ですので、リーマンショックやコロナショックのように、まだ正式な暴落名称(?)はありませんが、市場最大の下げ幅のインパクトは凄まじく、間違いなく、後世に語り継がれる歴史的暴落と言えるでしょう。


さて、私はもちろん、今回の暴落でも、狼狽売りをすることはありませんでした。


その理由は前述の通り、すでに「投資は余裕資金で」「保有銘柄については、基本的には売らない」といった、確固たる投資スタンスを確立していたこと、そして今回は、(過去最高値を更新する国内株式相場もあって)ある程度の含み益があったことも、ドッシリ構えることができた大きな理由でした。


そして、今回の暴落では、前回のコロナショック時の反省を活かし、前々から狙っていた銘柄を買うこともできたのでした。


具体的には、日本が誇る飲料メーカー「キリンホールディングス」、株主優待が魅力の「フジオフードグループ」「壱番屋」、そして災害関連銘柄として「萩原工業」、さらには「三井住友建設」「五洋建設」「ビーアールホールディングス」など、低位の建設・インフラ株を複数単位、果敢に買いに向かったのでした。


いずれの銘柄も、早く購入したいと思いつつも、なかなか株価が下がらずにうずうずしていただけに、今回の暴落を機会に購入できたときは、非常に満足でした。


■落ちるナイフを掴んでしまう


ただ、今回の暴落でも、反省がありました。


それは、「暴落時にも買いに向かうことができた」ことには満足だったのですが、暴落の真っ只中(というか、かなりの初期段階)で買ってしまったことです。


普段の株価水準からは少し下がったところで買えたものの、買った瞬間から、さらに大きく下落、すぐに含み損を抱えてしまうのでした。


これはまさに、「落ちるナイフ」を掴んでしまったわけです。


たとえば、キリンホールディングス。


暴落前は、株価は2000円を少し超える水準で、比較的穏やかに推移していました。


すぐに買っても良かったのですが、「できれば、もう少し安く買えればいいな」と、何かの拍子にちょっとでも下がればと、そのタイミングを今か今かと待ち構えていました。


そこでやってきた今回の暴落で、今だとばかりに、2000円を少し切ったところで購入。しかし、そのまま株価は一気に1900円をも割り込むところもまで下がり、悔しい思いをしました。


そして、萩原工業。


1500円台で推移する株価を眺めながら、「せめて、1500円を切ってくれれば」とウズウズしているところに、今回の暴落がやってきました。これは待っていましたとばかりに、1500円を少し切ったところで購入。


しかし、こちらも株価はそこから下げを加速させ、そのまま一気に1300円を割り込むところまで下がり、やはり悔しい思いをしました。


今回の暴落時に購入した他の銘柄でも、多かれ少なかれ、同じような失敗をしてしまったのでした。


■底に刺さったナイフを、拾いあげる


もっとも、この「落ちるナイフを掴んでしまう」ことは、投資あるあるです。


多くの人は、狙っている銘柄を、少しでも安い株価で買いたいとばかりに、そのタイミングを今か今かと待ち構えているわけですが、そんな気持ちが前のめりになっているときほど、株価はなかなか下がらないものです。


そんな状況で、少しでも株価が下がったなら、「待っていました」とばかりに購入するも、そこからさらに株価は下がり、「もう少し待てばよかった」と後悔するわけです。とくに、歴史的な暴落時には、株価はとんでもなく下がるわけですから、その後悔も大きいわけです。


理想を言えば、暴落時には、しっかりと大底を見極めて、下がり切ったところで買うことができれば、言うことはありません。


例えるなら、落ち切って、底に刺さったナイフを拾いあげたいものです。


とは言え、暴落時、ましてや歴史的な暴落時の大底を見極めるのは至難の業で、そんな大底を見極めているうちに買いそびれてしまっては、悔しいものです。そこで、私が今、来るべき次の暴落時に備えてやっていることがあります。


■まさかの安値で、購入するためには


それは、購入したい銘柄について、「ある程度、株価が下がったところで買いたいな」といった曖昧な基準ではなく、「○○円になれば買う」と、購入する価格を明確にしておくことです。


そして、来るべき暴落時に備えて、あらかじめ、その価格での指値注文を入れておくことです。


その際、その指値注文は、現在の株価から多少下がったところの価格ではなく、十分に満足・納得できる価格にすることを意識しています。多少下がったくらいの価格では、約定後、(とくに大暴落時には)そこからさらに大きく下がる可能性が高く、今回と同じ失敗となるからです。


ですので、多少の暴落ではここまで下がることはないだろうと思えるくらいの価格、もし買うことができたらラッキーと思えるくらいの価格で注文している銘柄も少なくありません。どうしても早くに買わないといけない事情があれば別ですが、通常、一般の個人投資家であれば、(常に投資することを義務付けられるプロと違って)そんな縛りなどありませんからね。


そして、その価格設定は、冷静なときに、しっかりと考えることが大切です。


いざ暴落に直面すると、いくら事前に心がまえをしていても、なかなか冷静に考えることは難しいですから。


歴史的暴落は、いわゆる超バーゲンセールでもあります。


まさかここまで下がることはないだろうとの価格で注文していても、そのまさかの価格で買えてしまうこともあるのです(実際、今回の暴落では、それを実感した人も多いのでは?)。


ただし、株式の売買注文には有効期限(*)があるので注意が必要です。


ようやくやってきた暴落時に、有効期限が切れていては(注文が失効していては)、悔やんでも悔やみきれませんよね。


来るべき暴落時のためのルーチン作業として、定期的な注文発注作業は怠らないようにしたいものです。


*証券会社により異なり、最長で1カ月程度


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藤原 久敏(ふじわら・ひさとし)
ファイナンシャルプランナー
1977年大阪府大阪狭山市生まれ。大阪市立大学文学部哲学科卒業後、尼崎信用金庫を経て、2001年に藤原ファイナンシャルプランナー事務所開設。現在は、主に資産運用に関する講演・執筆等を精力的にこなす。また、大阪経済法科大学経済学部非常勤講師としてファイナンシャルプランニング講座を担当する。著書に『株、投資信託、FX、仮想通貨… ファイナンシャルプランナーが20年投資を続けてみたらこうなった』(彩図社)など。
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(ファイナンシャルプランナー 藤原 久敏)

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