キリンとサッポロがクラフトビールでタッグ 意外に好相性か

9月10日(火)16時0分 NEWSポストセブン

クラフトビール市場の拡大を目指してタッグを組むキリンとサッポロ

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 普段はビール商戦で激しく競い合う関係の、キリンビールとサッポロビール。かつてはビールシェアで1位と2位(現在は2位と4位。第3のビールや発泡酒を除くビールだけに限ればサッポロは3位)だった両社が、「ソラチエース」というホップの誕生35周年イベントで「呉越同舟」のタッグを組んだ。そこにはどんな背景があったのか──。経済ジャーナリストの河野圭祐氏がレポートする。


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 9月5日〜16日までの間、キリンビールとサッポロビールが「ビアケラー東京」新橋店と銀座の「BEER TO GO」で、「ソラチエース誕生祭〜こちらでソラチ、そちらでもソラチ〜」を共同開催している。


 キリンは今年2月から、飲食店や自社のオンラインショップで「ブルックリン ソラチエース」を発売。一方のサッポロも、4月から「SORACHI 1984」(缶商品)の通年販売を開始している。どちらもクラフトビールだ。


 クラフトビール先進国の米国では、同ビールの市場は全体の中で13%弱を占め、通常のビールよりも単価が高いことから、金額ベースではその倍近くまで占有率がハネ上がる。


 一方、日本のクラフトビールマーケットは、2年前の時点でシェアはわずか1%弱。ビールメーカーの中で最もクラフト市場の開拓に注力してきたキリンでは、この数字を2021年に3%まで高めたい意向を示しているが、米国に比べるとまだまだ途上だ。


 これまで、クラフトビールに関してはキリンの孤軍奮闘の感が強かったが、キリンに次いで本腰を入れ始めたのがサッポロである。


 キリンがクラフトビール専門の別会社、スプリングバレーブルワリーを擁しているように、サッポロにもジャパンプレミアムブリューという専門の別働隊があるが、そこで扱うクラフトブランドの販売を、今年1月からサッポロ本体に移管している。その決め手になったと思われるのが、前述した「SORACHI 1984」だ。


 商品名にもあるように、「ソラチエース」というホップは、35年前の1984年にサッポロが品種登録したホップで、産地は北海道空知郡上富良野町。だが、「当時はその後、1987年に『スーパードライ』(=アサヒビール)が出たこともあり、トレンドはキレやゴクゴクと量が飲めることだった」(サッポロのクラフト事業部ブリューイングデザイナーの新井健司氏)点や、以前、同社の高島英也社長も「香りに特徴があり過ぎて醸造技術を使い切れなかった」と語っていたことから、「ソラチエース」は陽の目を見なかった。


 その後、「ソラチエース」は10年後の1994年に米国に渡り、クラフト先進国の米国では特徴ある香りが逆に受け入れられ、このホップが栽培されるようにもなった。そして「ブルックリン ソラチエース」が誕生。ちなみに、同商品のホップはワシントン州産のもので、サッポロから購入しているわけではない。


 サッポロの「SORACHI 1984」も、やはり米国産の「ソラチエース」を使用している。前述した、本家本元の上富良野産100%の「ソラチエース」は少量しか収穫できないため、商品化しても数量限定となり、かつ高価になってしまうのだ。


 サッポロでは市場の受容性をテストするため、アマゾン限定で、同ホップを含む上富良野産4種のホップを使った、数量限定ビールの販売も予定(予約は9月5日からで販売は11月29日)しているが、8本入り(1本は305ミリリットル)で税抜き4800円と、やはり値が張る。


 レモングラスなどを想起させる味わいのクラフトビールは数多いが、「ソラチエース」の場合、唯一無二ともいえる、ヒノキライクな香りや味わいが最大の特徴になっている。


 キリンが輸入する形で、ブルックリンブルワリー・ジャパンを通じて販売されている「ブルックリン ソラチエース」は、アルコール度数がやや高めの7%なのに対し、「SORACHI 1984」は5.5%。前者は「シーフードとのペアリングが抜群」(キリン幹部)としている一方、後者は、ヒノキライクな香りや味わいの特徴が、より際立っている印象だ。


 キリン、サッポロ両社から相次いで「ソラチエース」を使った商品がリリースされた今年5月、両商品を飲み比べる会が開催されて意気投合。9月5日が同ホップの誕生の日であることから、同日での共催イベント開催へと歩を進めてきたのだという。


「前代未聞のコラボレーションではありますが、ビールの総販売数量が毎年継続してダウンしている中、違うアプローチでどう盛り上げるかは、ビールメーカー各社共通の課題。そこで初めて手を携えてイベントを開催しようと。ですから、偶然ではなく必然だと思っています」(前出の新井氏)


 対するキリン側も、


「最初は、(キリンの社風が)保守的で共催イベントは難しいかなとも思いましたが、いざ上司に相談してみたらオープンマインドだった」(キリンビールの企画部クラフト戦略チームのユン・ヘジュン氏)ということで、共催の話はスムーズに進んだようだ。


 今後、今回の「ソラチエース」以外のクラフトビールでも、キリンとサッポロのコラボイベントなどの可能性があるのかは気になるところだが、「特にいまのところ考えてはおらず、まずは『ソラチエース』で」(同)と語るにとどめていた。


 かつて、サッポロが米国の投資ファンド、スティール・パートナーズに株を買い占められてピンチに陥った際、ホワイトナイトとして噂されたのが、ルーツが同じアサヒだったが実現はしなかった。また、キリンとサントリーの経営統合交渉も不調に終わり、結局は破談になっている。


 統合や合併のような話とは次元が違い、今回の共催イベントでどうこうは言えないが、キリンとサッポロの関係は、アサヒ─サッポロ、キリン─サントリーに比べて、意外に相性がいいかも知れない。

NEWSポストセブン

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