「育休宣言」した小泉進次郎が入閣を断らなかった理由

9月12日(木)6時0分 JBpress

9月11日、環境大臣に任命され、官邸に到着した小泉進次郎氏(写真:AP/アフロ)

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保秘の秘訣は「身近な人に言わないこと」

小泉進次郎が初入閣へ」の第一報が流れる前日9日の夕方——。

 進次郎議員は経済同友会が主催するトークセッションで、「政治経済社会の未来を語る」鼎談を行っていた。

 この日までに進次郎議員の入閣は、「官房副長官は消えた」「育休発言は進次郎が入閣を断る意思表示」などと報じられており、会場に集まった番記者たちもどこか諦めムードに包まれていた。そういう私も、取材に行った理由は、入閣リストから名前の消えた進次郎議員がどんな表情で何を語るのか、ちょっと見てみようかという程度のものだった。

 セッションはまず、進次郎議員の友人である若手企業経営者と、新婚生活についての他愛もないやりとりから始まった。

 本来内閣改造の直前であれば、まず入閣がテーマになってもよさそうだが、「進次郎の入閣無し」の情報は会場内にも伝わっていたのか、本人の前ではあえてこの話題を避けているように見えた。

 しかし、その翌日の夕方。

「進次郎入閣へ」の一報が流れ、入閣リストから進次郎議員の名を外していた関係者たちは椅子から転げ落ちた。

 先月の結婚報告のときもそうだったが、進次郎議員のマスコミに対する情報管理は徹底している。

 先のセッションで、「なぜ結婚が漏れなかったのか」と聞かれた進次郎議員は、にこやかにこう答えた。

「すごいシンプルで、身近な人に言わないことです」

 会場は大爆笑に包まれたが、参加者はまさかその1日後に自分が身をもって知るとは思っていなかっただろう。

 結婚も入閣も、進次郎はこのポリシーを忠実に守ったわけだ。


環境大臣を受けた理由

「進次郎に入閣無し」の情報が永田町を駆け巡った時、「安倍総理が結婚報告で自分を後回しにされて怒っているから」「安倍内閣に入るのが嫌な進次郎が育休を盾に拒否した」という理由がついて回った。

 しかしどちらも子どもだましと感じた私は、もし安倍総理が進次郎議員に入閣を打診したときに、進次郎議員が断ることのできないポストとは何かを考えた。そして私が出した答えは、「復興大臣」だった。

 なぜなら、拙著でも紹介した通り、東日本大震災の被災地支援は、進次郎議員の政治家としての原点であり、「ライフワーク」と自身も語ってきた。特に原発事故で被災した福島に対しては、県立高校の開校に尽力し、その後も多忙の中、時間を作っては生徒たちに会いに行くなど、並々ならぬ想いがあった。

 この夏、復興庁の存続について取材していた私は、自民党の東日本大震災復興本部の会合に出席した進次郎議員と短い言葉を交わした。

 その際にも復興庁の未来について語る進次郎議員の言葉の中には、被災地に向けた熱い想いが溢れていた。

 だから「進次郎はどんなに安倍内閣への入閣が嫌でも、復興大臣であれば断ることができないし、逆に復興大臣以外は受けないだろう」と信じて疑わなかった。

 しかし進次郎議員は、環境大臣を受けた。

 なぜなら今回の内閣改造で進次郎議員は、環境大臣と同時に原子力防災担当大臣を打診されたからだ。

 11日官邸で入閣の受け止めを聞かれた進次郎議員は、まずこう答えている。

「明日(12日)、福島に行きます。この環境大臣の仕事、そして原子力防災、こういった仕事の中には、私がいままで取り組んできた復興、特に福島県の中間貯蔵、そして除染、こういったことの加速化というのは、東日本大震災の復興に欠かせない。まずは、すぐに福島に行って、知事をはじめ、関係の方にご挨拶をしたい」

 12日、進次郎議員は、前大臣との引継ぎや省庁内での挨拶を終えると、早々に福島に向かう。

 記者から「入閣するうえで迷いはなかったか? 決め手は?」と聞かれた進次郎議員は「理屈じゃないですね」と答えた。しかし、福島とのきずなが、入閣の大きな決め手となったのは確かなのだ。


いつ打診を受けたのか?

 では環境大臣の打診をいつ受けたのか?

「環境大臣内定前」の9日のセッションで、進次郎議員は人生100年時代についての質問に、こんな答え方をして会場に「おや?」と思わせたシーンがあった。

「100年単位で国民一人ひとりの生涯の人生設計を考えている国は世界でどこにもありません。これは世界の中で日本が売れるテーマになると私は思っています。17のSDGsのゴール、このゴールの18個目を日本から作るとしたら、人生100年時代。今後世界はそういうことになりますから、間違いなく。100年単位の人生設計を一人ひとり多様な生き方ができるようにしていくことは、日本の売りになると思いますね」

 会場にいた参加者がつけていたSDGsのバッジをたまたま見つけたかのように語っていたが、この時点でSDGsに対して強い意識を持っていたことは確かだ。

「いつ誰から打診されたか」という話は政治記者なら関心の高いところだ。先の官邸でも記者が聞いていたが、進次郎議員は「そういうことは秘めていくべきことだと思う」と軽くかわしていた。


難問は除染水海洋放出

 さて、環境大臣の仕事として世間が最初に注目するのは、前大臣による福島第一原発の除染水の海洋放出発言をどう受け止めるかとなるだろう。

 11日官邸で進次郎議員は、「まず原田(義昭)大臣の発言というのは、本人も言っていたが、個人的な見解だと、そう言っていたと思う。そして、もうひとつ、大切なファクトを言えば、所管は環境省ではありません。あれは経産省の小委員会で議論されている過程のことですから、経産省の小委員会でしっかり議論してもらいたいと思います」とかわした。

 そしてここであらためて福島への想いをこう語った。

「福島の漁業関係者の方々、特に私も数え切れないくらい訪ねていますから。いま小名浜で、漁連会長として大変な思いをされているノザキさんとか、その姿が目に浮かぶ。その地元の、福島の皆さんの気持ちをこれ以上傷つけるようなことがないような、そんな議論の進め方をしなければいけないのではないかと思っている」

 拙著『小泉進次郎 日本の未来をつくる言葉』の中で私は、進次郎議員が総理の椅子に座るためには、3つの条件をクリアすることが必要だと書いた。1つは結婚、2つめが入閣、そして最後が自らの派閥をもつことだ。そのうち2つはこの2カ月足らずで揃った。さらに今回の入閣は菅官房長官の力によるところも大きく、それはつまり数十人いると言われる「隠れ菅派」を受け継ぐ可能性があると言える。進次郎議員は、ポスト安倍レースのスタートラインに正式に並んだのだ。

 環境問題は日本の政界では関心が薄く、環境大臣ポストはこれまで軽量級と言われてきた。しかし時代は変わり、気候変動やプラスチックごみの問題は世界的な関心事となっている。進次郎環境大臣が、その情報発信力や英語力を生かして、国内外に日本の環境政策をアピールできるか。

 環境大臣は「進次郎総理」へのファーストステップであり、同時に正念場となる。

筆者:鈴木 款

JBpress

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