EV、自動運転時代到来…日本の自動車メーカーに未来はあるか

9月12日(火)16時0分 NEWSポストセブン

大前氏が日本の車メーカーの未来を語る

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 世界で一年に1000万台以上も自動車を販売するトヨタグループといえども、自動車業界の未来を考えた場合、安泰とは言いがたい。欧米で急速に進んでいる環境規制が他国にも広がる気配をみせるなか、EV(電気自動車)などの共同開発で遅れをとっているからだ。近著『武器としての経済学』が話題となっている経営コンサルタントの大前研一氏が、日本の自動車メーカーの未来について考察した。


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 トヨタ自動車とマツダがEV(電気自動車)などの共同開発に向け、資本提携すると発表した。報道によれば、提携会見でトヨタの豊田章男社長とマツダの小飼雅道社長は「未来のクルマをコモディティ(汎用品)にはしたくない」と共通の思いを語ったという。だが、この提携はEV開発で後れを取っていると感じている2社の焦りを象徴するものだと思う。


 そもそも日本の自動車メーカーは今、三つの大きな課題を抱えている。一つ目は、カーシェアリングのさらなる普及。二つ目は、ガソリン車・ディーゼル車からEVへの移行。そして三つ目は「自動運転」だ。


 こうした喫緊の課題に対し、いち早く対応しているのは欧米メーカーだ。たとえば、スウェーデンのボルボは2019年以降、新モデルの全車種をEVやHV(ハイブリッド車)にすると発表している。


 また、一時トヨタと提携しながら袂を分かったアメリカのEVメーカーのテスラは、すでに完全自動運転機能付きEVの「モデルS」「モデルX」を発表。さらに今年7月から3万5000ドルという手頃な価格の「モデル3」を販売開始した(日本での納車は2019年以降)。「モデル3」の事前予約は50万台を突破し、テスラの時価総額はGM(ゼネラルモーターズ)、フォードを超えている。


 自動運転技術の開発で世界をリードしているのはアメリカのシリコンバレー(NVIDIAなど)とイスラエル(MOBIL EYEなど)で、日本はここでも大きな後れを取っている。


 日本勢は、EVの基本技術であるモーターやインバーター、回生ブレーキ、蓄電池などについては、すでにHVやPHV(プラグインハイブリッド車。PHEVとも表記)にも搭載しているので、挽回不能な参入障壁があるわけではない。


 しかし、HVやPHVで他社に先駆け、さらに世界初の量産型FCV(フューエル・セル・ビークル=燃料電池車)「MIRAI」を世に問うたトヨタや、同じく独自開発したHVからFCVまでを取り揃えるホンダなどのように、経営資源が分散していることが機敏な舵取りをできなくさせていると思う。


 社内の上層部が内燃エンジンにこだわり続けていたり、今ある工場や部品メーカーを重視しすぎたりすることも、おいそれとシンプルなEVに重心をかけられない心理的な要因となっているのだろう。


 しかし今は、社内の分散した投資や迷いを取り除くことが先決だと思う。実際、PHVは郊外での高速走行時や充電が足りなくなった時だけHVモードを使い、あとは基本的にすべて電池で走ることができるようになっている。それなら、もっとシンプルに「PHVは実質EVであり、真のエコカーである」というメッセージを強力に発信していくことで、EVに対するユーザーの不安を払拭し、テスラなどには真似のできない技術をアピールできる。


 テスラと一度は手を組んだトヨタは、結果的に決別することを選択した。理由は、FCVの「MIRAI」をテスラのイーロン・マスクCEOに「フール・セル・ビークル(バカな車)」と揶揄されたからとも報じられている。だが、まさに今、「MIRAI」の未来が問われている。


 開発に1兆円も使ったとされる「MIRAI」は、将来にわたって水素の供給基地を全世界に構築していかなくてはならない。結局、自分たちの成功体験に執着するあまり、自動車業界や株式市場のパラダイムシフトを読み違えているのではないか──。


 かつての日本の敗戦とのアナロジー(類推)で言えば、組織が自己革新能力を失い、外部環境が大きく変わっても過去の成功体験に固執して適応することができなかった日本軍と同じ轍を踏みかねないのだ。太平洋戦争で全く活躍できずに終わった超弩級戦艦「大和」「武蔵」に象徴されるような“大艦巨砲主義”が、日本車メーカーに巣食っていないことを祈りたい。


※週刊ポスト2017年9月22日号

NEWSポストセブン

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