やたらと上から目線「同窓会ヒーロー」の末路

9月13日(金)15時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/bernardbodo

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※本稿は、宇田左近著『インディペンデント・シンキング』(KADOKAWA)を再編集したものです。



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■同級生の中で「出世頭」になった人たち


中学校、高校などの同窓会を思い浮かべてほしい。社会人になり、久々に級友たちと会うと、世間一般で一流と言われる企業や、中央官庁などに就職したり、医師や弁護士などになったりと、同級生の中でも「出世頭」になった人がいるだろう。かつては大して仲の良い友だちではなかった人や、好きだったけれど想いが届かなかった異性に囲まれて、


「あの大企業で出世コースなんてすごいなあ」

「○○の社長になったんだって⁉」

「ビジネス誌に載っているのを見たよ」


などと言われ、もてはやされている。なかばヒーロー扱いされている状況に、本人たちは、まんざらでもない笑みを浮かべていたり、すましながらも内心満足感に浸っている。


会社の同窓会、同期会はもっとわかりやすい。入社後20年、30年もすると、だいたい先行きが見えてくる。そんな中で同期会が開かれることはまれかもしれない。まだ過去を振り返るには早すぎるというわけだ。しかし、60に近づいてくると、なんとなく集まりたくなる。


このような同窓会の参加者の半数はすでに子会社などに転出しており、そこで第2の人生頑張りますといった会話が入り乱れる。健康問題も話題の一つ、孫の話もちらほらだ。少数の本社現役組を囲んで、昔はいかに同レベルだったか、サラリーマン人生などちょっとした運によって左右されるのだというようなプライドだけを頼りに、今後の会社の課題や方向などに聞き耳を立てる。


この、本社現役生き残りセグメントは、同窓会ヒーローの候補者でもある。途中で退社して羽振りの良い同期がいると、「君は社外に出て正解だったね」、などと言うが、あくまで自分こそが成功者だという上から目線でのねぎらいだ。



■狭いヒエラルキー内の勝ち組に意味はあるか


若い人はまだ経験がないかもしれないが、いずれそういう光景を見かけることになる。「縦割構造のサイロの中、世間の目に見えない序列構造の中で『上』とされるポジションをつかんだことで、過去に属していた小さな組織やコミュニティのヒエラルキー内で上位に立っている人」となり、その結果、その小さな集団で、ヒーロー扱いされている人のことを、私は「同窓会ヒーロー」と呼んでいる。狭いサイロの中の、見えない序列における勝ち組だ。


留意したいのは、多くの同窓会ヒーローは所属する組織内だけに通用する「社内価値」最大化に邁進してきた人たちであり、いざ組織を離れるときになって社内外どこでも通用する「共通価値」を提供できるかどうかはおおいに疑問ということだ。


十分な資産や退職金があれば話は別だが、人生100年とか生涯現役という言葉が語られるこの時代、組織から離れたときに「自分はもう何の価値も生み出せない」という現実に直面するのはなかなかしんどいことである。それは単に定年後も稼げるとか稼げないとかいう問題にとどまらず、そこから先の人生をどう生きていくかという根源的な問いに関わるからだ。


もちろん若くして同窓会ヒーローになった者たちも同様だ。社内価値拡大にまい進して出世し社内でもてはやされ、これなら外でもやれるだろうと転職・独立する段になって同じ現実に直面する。


■有能だと思われた人が無能になる時代


同窓会ヒーローはどこに生息しているかといえば、多くは役所や大企業など、バリューチェーンのヒエラルキーあるいは我々のマインドに染みついた見えない序列の上位にいることが多い。要するに、ヒエラルキーの下位に位置する企業に仕事を発注して、その果実である他人の努力をぱくりと食べる立場にいるわけだ。


彼ら彼女らは、そのグループの中では、たしかに、もともとは本当に能力があり、磨けば光る存在になったのかもしれない。ところが、実際には、ヒエラルキーの上位で長い時間を過ごせば過ごすほど、実際に自分が手を動かす機会は減り、仕事を他人に発注はできても自分では実行できなくなる。また前例踏襲にこだわりあえてリスクをとって新たな挑戦をすることもなくなる。


このような人たちは、やがて社内価値、あるいはヒエラルキーの上位に位置する役所や企業の狭い範囲だけで通用する価値がすべてとなり、他の会社、組織では通用しない、共通価値を生まない無能な人材になっていく。そこはあまりに居心地がよいので、この無能化とも言うべきリスクには気がつかない。有能と思われた人も、同窓会ヒーロー人生を送っているうちに、やがて無能な人になってしまう。


今のデジタル時代から見ると、このような食物連鎖的生態系とも言える構造はまさにガラパゴスであることは間違いない。私が今を生き抜くために必要だと考えている「インディペンデント・シンキング」を身につけ、共通価値を拡大させ、新たな稼ぐ力を身につけるためには、こうした既存の序列の概念、マインドから脱却することが必須というわけだ。



■2度のクビを経て得たもの


私は大学を卒業後8年間のサラリーマン生活を経てコンサルティング会社に転職した。コンサルティング会社では、学ぶことが多く、あともう1年いればさらに世の中での付加価値が増すはずだ、と考えて結果的に15年以上も在職することになった。クライアントにも見えない答えに果敢に挑戦する若手の才能と能力に驚かされることがしばしばだった。答えの見えない不確実な世界で問題解決を行うにあたって、チームマネジメントの考え方も、以前のサラリーマン時代から180度の転換を迫られた。


その後は、郵政民営化を機に日本郵政株式会社の執行側に転じたが、政権交代を契機に最初のクビを経験することになった。民営化推進部隊の中心にいたことから、当時民営化に反対していた政権に代わったことで、これはいつクビになっても当然と考えていた。


もしもクビにならず、そのまま日本郵政にいてもよいと言われたら、自分の進めてきた民営化に向けた努力はさほどのものではなかったとの評価だったと感じ、大いに気落ちしたことだろう。政権交代で株主が民営化推進から民営化反対に転じたわけだが、こちらは民営化推進の立場を貫いていた。


このとき、スタンスを維持することがいかに大事なのか再認識した。後出しじゃんけんなど、この場合はありえない選択だった。その後は金融機関のCOOとして執行に加わったが、1年でその金融機関を所有していたファンドのスキームが問題となり、新たなオーナーに代わったことで2度目のクビを経験することになった。


■自分のスタンスに反することはしない


クビも悪くはないと感じたのもこの頃だ。自分のスタンスを変えないで、周辺環境が変わったことで「辞めてほしい」と言われることは、むしろ自らのスタンスを自分で納得するうえでとても重要だった。スタンスを変えずにいると、新たな機会も訪れる。




宇田左近著『インディペンデント・シンキング』(KADOKAWA)

長いものには巻かれず、火中の栗は自ら拾って食い、自分のスタンスに反することはしない。このスタンスを貫くためには自分なりの行動規範を持つことが必要だ。それだけでは到底世を渡れそうにないと思えるかもしれないが、そんなことはまったくない。


簡単なことだ。日頃から「外でも役立つか」という視点で共通価値を高めるための学びを継続すればよい。仕事においても常に刺激の中に身を置き続けること、新たな挑戦を続けることも役に立つ。それは同窓会ヒーローの陥る無能化スパイラルとは別世界のはずだ。


さて、2度のクビのあとは、役所や大企業のようなヒエラルキー上位の組織が「円の中心」だとするといわば「遠心力のついたキャリア」を重ねることになった。そしてこのような環境で働き学び続けられるということがいかに恵まれているかを再認識することになった。私は、同窓会ヒーローにはなり損ねたが、そこに一片の後悔もない。



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宇田 左近(うだ・さこん)

ビジネス・ブレークスルー大学 副学長 経営学部長 教授

株式会社荏原製作所独立社外取締役、取締役会議長、公益財団法人日米医学医療交流財団専務理事。東京大学工学部、同修士課程修了。シカゴ大学経営大学院修了。日本鋼管(現JFE)、マッキンゼー・アンド・カンパニー、日本郵政株式会社専務執行役、東京スター銀行COO、東京電力福島原子力発電所事故調査委員会(国会事故調)調査統括・原子力損害賠償・廃炉等支援機構参与、東京電力調達委員会委員長等を経て現職。著書に、『なぜ、「異論」の出ない組織は間違うのか』(PHP研究所)、『プロフェッショナル シンキング』(共著、東洋経済新報社)がある。

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(ビジネス・ブレークスルー大学 副学長 経営学部長 教授 宇田 左近)

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