「就職氷河期世代支援」に関するいろいろな動きを見て

9月23日(月)17時29分 財経新聞

 兵庫県の宝塚市が、バブル崩壊後の「就職氷河期世代」に限定した正規職員の採用試験を実施したという話題がありました。
 3名の募集に対して1635人が一次の筆記試験を受験し、競争倍率は545倍という高率だったそうで、宝塚市の市長は、「氷河期世代の多くの人に支援が必要と実感したが、宝塚だけでは砂漠に一滴の水を落とすようで、他の自治体も採用を広げてほしい」と話したとのことでした。

 政府では、内閣府が就職氷河期世代に向けた、3年間の集中支援プログラムを発表しています。職業訓練や資格取得支援、キャリア相談などの求職者支援が中心で、過去に雇用保険に加入していなかった人も一部対象にするようです。

 これに対して、経営者団体の経団連は、「雇用保険制度見直しに関する提言」という中で、「就職氷河期世代」の対策に、使用者が負担する「雇用保険」の財源を使うのは慎重であるべきとして、反対意見を提示しています。

 それぞれの立場で、三者三様の動きですが、見ていくといろいろ気になることがあります。
 まず、宝塚市の採用ですが、立派な取り組みだと思いながらも、やはり焼け石に水だということと、もう一つは、雇った市側も採用された働き手も、それぞれが結構苦労するのではないかということです。
 雇う側はできることから少しずつ任せ、辛抱強く教えていくしかありませんが、働く側の方が、仕事を覚える苦労、なかなか思い通りに身につかないプレッシャーなどで、実はより大変かもしれません。
 40歳前後の年齢になり、なおかつ未経験の仕事、ブランク期間があるなどとなると、どんなに能力がある人でも順応する力は落ちます。それをどう乗り越えるかを考えると、別の支援も必要になるでしょう。

 次に内閣府の支援プログラムですが、ここでの問題は具体的な職業訓練の内容です。過去の職歴と求人条件のギャップを、何らかの形で埋めなければなりませんが、現状で行われてきたものを見ても、例えば訓練を受講したからすぐに仕事ができるはずもなく、実務能力とのギャップがまだまだ大きいです。いろいろ新しい取り組みも始められていますが、さらにこれまでの発想の枠を超える必要があるでしょう。

 最後に、これが一番の問題だと思いますが、国や自治体は「氷河期世代の支援が必要」という立場に立っているのに対して、経団連だけはずいぶん後ろ向きということです。
 「就職氷河期世代」が産まれてしまった背景を考えれば、多くは景気後退による採用縮小ですが、大手企業を中心にした新卒一括採用に偏った採用方法にも原因の一端があります。採用時期や年齢の間口が狭いため、たまたまの巡りあわせで思ったような職を得られなかった人がたくさんいて、それを挽回するチャンスは与えられていません。

 今は空前の人手不足と言われていて、今後もそれが進んでいくとわかっているにもかかわらず、この経団連の発言は「今さらその年齢や経歴の人材を雇う気はない」「教育なんかしても無駄」と言っているように聞こえてしまいます。ごく小さな利害関係の中に閉じこもっているかのようです。

 ある程度の年齢に達した人材を、教育などを通じてあらためて戦力化するのは、確かにハードルは高いですが、そういう人をただ切り捨てていては、もう成り立つ時代ではありません。一部の外資企業では、仮に能力基準の1割しかない人でも、例えばそれを2割に引き上げれば、その分業績向上につながるという考え方をしています。
 人材に関しては、今は「選別」よりも「活用」が重要になっていますが、そこからはずいぶんずれている感じがします。経済団体として、もっと前向きな姿勢を見せるべきです。

 さらに全体として、「就職氷河期」以外の世代でも、同じように巡りあわせに恵まれず、困難な状況に陥っている人がいます。年代だけで区切らない支援も必要でしょう。

 こうやっていろいろ考えれば考えるほど、難しいことがたくさんありますが、それぞれの立場からそれぞれ取り組んでいけば、改善できることはたくさんあります。
 難しくても、やれることからやるしかありません。

※この記事は「会社と社員を円満につなげる人事の話」からの転載となります。元記事はこちら

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