コープはなぜ、いち早く被災地に生活用品を届けられるのか?

9月24日(月)11時32分 Forbes JAPAN

平成最後の夏を襲った西日本豪雨、台風第21号や北海道胆振東部地震。大規模な災害が次々と起きるなか、コープ(消費生活協同組合)が非常に早いタイミングで生活必需品を被災地に届けていることを耳にしました。

実は筆者自身も、数年前の台風時、生後まもない子どもを抱えて避難ができず自宅で待機していると、「今すぐ必要だろうから」と、コープが注文していた食品を一部届けてくれて大変助かった経験があります。同時に、なぜこのような状況で配送ができるのかと興味が湧きました。

Eコマースというショッピング形態が拡大するいま、小売企業の展望においては、アマゾンに代表される低価格&即日配送、または実店舗のエンターテイメント化が語られがちですが、人と人が支え合うコミュニティの確立もひとつの方向として注目されつつあります。そしてその流れの中で、日本のコープのあり方は世界的にも高く評価されているのです。

ミッションは「組合員の暮らしを支える」こと

コープとは、英語のCo-operativeの略で、協同組合の意味。その起源は1844年の英国のロッチデールという村。織物工や仕立て屋などの28人の自営業者達が、高い物価や粗悪な商品流通から自分たちの生活を守るためにお金を出し合い、共同で生活必需品を購入する事業を始めたことが始まりだといわれています。

日本では生協ともよばれるこの仕組みは、明治時代から導入がはじまり、急速に拡大。2016年には、全国の世帯の約3分の1が地域生協に加入しているほどに成長しました。また全国の生協組合員数は約2900万人に達し、日用品を中心とした購買事業のほか、共済事業、福祉事業、医療事業などを展開し、総事業高は3兆5000億円に上ります。

日本生活協同組合連合会 本田英一代表理事会長にお話を聞くと、「加入している組合員の暮らしの課題を解決していくのがコープのミッション」とその使命を語ります。そして、そのために、社会環境の変化にあわせて事業内容を変えていく柔軟性を持っていると明らかにしました。

高度経済成長期には、家族のために安心・安全な食材を安価に入手したいという組合員のために、利用者のニーズに沿った商品開発や共同購入事業、実店舗ビジネスを展開。しかし、働く女性が増え共同購入したものを隣近所で分配するケースが少なくなったことなどを受け、個人宅への配送に力を入れるようになりました。

個人配送は店舗と比べて品目数を絞るため、1つの商品に対しての注文数は多くなります。大規模な注文を確実に仕入れられる仕組みが不可欠になり、生産者との調整をはじめ、組合員に届けるための独自の物流網の整備が進んでいきます。

コープは、地域に密着した狭域ネットワークの協同組合が加盟して全国ネットワークを築いており、物流のコアの部分を自分たちで握っています。また、地域それぞれの課題の解決手段を地元のコープが探る一方で、各地域コープが連合して、より大きな物流網などインフラを構築することで効率化も図っています。

こうした流通システムとコントロールできる仕入力により、災害時でも必要な物資を大量に調達し配送することを可能にしているのです。

根底にあるのは、前述したように、あくまでも「組合員の暮らしを支えるのがミッション」という考え方です。だから、ある地域の組合員の暮らしが侵害される災害時も「できることを組合員たちと一緒にやる」のだと本田会長はシンプルに答えてくれました。

その裏側には、”組合員”という個人を何より尊重する姿勢から発し、個別の問題解決のために必要とあらば、事業内容を変更したり、新しい事業を興すこともいとわない発想があります。共済事業や福祉介護サービスはそうして生まれ、ノウハウのほとんどなかった電気小売も、「それが組合員の益になる」という理由で参入しています。

協同組合は一般企業とは成り立ちが違うのは事実です。しかし、「組合員の暮らしの課題を解決する」という一貫した目的のため、環境が変われば事業システムや内容は変え、目的を達成するためには、そのつど最適な仕組みを作り上げる。そこに、ビジネスモデルとして日本のコープに注目が集まる理由があります。

人と人がつながるコミュニティが基盤

協同組合とは一人ひとりが資金を出し合い、協同して運営・利用する組織であり、地域のコープで働く職員の多くは、職員である同時に組合員でもあります。

だから現場では、サービスの提供側と受け手という立場を超えて、組合員同士が協力して暮らしの課題をしようとする能動的な関係が生まれることもしばしばあります。また、お互いに積極的に参加していける組織運営をしようという努力も行われています。

たとえば、「どんな店にしたいか」「何のために働くのか」など、ワールドカフェ方式*でディスカッションをし、職員やパート従業員自らが、彼らの想いを仕事に反映させられるような工夫をしているそうです(*注:米国で90年代に始まった気づきを得ることを目的とした会議の方法)。こうした人と人がつながるコミュニティの存在が、災害のときに、いち早く現地に必要なものを届ける原動力にもなっているのでしょう。



災害時の組合員からの募金は、億単位に上ります。たとえば2年前の熊本地震のときに半年間で集めた金額は約11億円。興味深いことに、店舗での募金よりも宅配の組合員からの募金の方が多く、額が1ケタは違うそうです。

本田会長にその理由を問うと、宅配注文というコミュニケーションが生協のメッセージを組合員に届けるのに有効であり、そのやりとりを通じて「もっと組合員の方の力を集めていくことができるはず」だと、コープの課題と可能性を語ってくれました。

ミッションを達成するため、環境にあわせて柔軟にビジネスを展開し、そこで働く人の想いをつなげて組織を作っていく──。現状に満足せずに常に先を考え行動していくコープは、災害時にも揺るがないほど、人と人の思いやりが組織にパワーを与えることを教えてくれます。そして小売の面では、Eコマース、実店舗でもない、こうした”コミュニティが作りだすマーケットの力”に今後注目していきたいです。

連載:「グローバル思考」の伸ばし方
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