ペットボトル"糖質中毒"で一生後悔する人

9月24日(月)11時15分 プレジデント社

写真=iStock.com/Nirian

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食事を改善するだけで、集中力、判断力、記憶力を高め、仕事のパフォーマンスを上げることができる。何をどう食べたらいいのか。糖尿病専門医の牧田善二医師と、脳神経外科医の熊谷賴佳医師に話を聞いた。

1 脳に良い食事、悪い食事


▼理論編


■集中できない眠気、だるさの原因は


こんな経験はないだろうか。重要な仕事を抱え、午後からの自分に活をいれるために、昼は丼ものでエネルギーをたっぷりとったのに、眠気やだるさに襲われ全然集中できなかった。ようやく頭がはっきりしてきたと思ったら、今度はイライラして落ち着かず、早くもアフター5のビールが恋しい——。




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こうした午後の眠気について、AGE牧田クリニックの牧田善二医師(糖尿病専門医)は「眠気やだるさは、昼食に糖質をたっぷりとって急上昇した血糖値が、その反動で急激に降下し、低血糖状態に陥ったために起こっているのです」と解説する。


糖質とは炭水化物の一部のことで、果物などに多く含まれる単糖類と、砂糖などに多く含まれる二糖類、ご飯やパンなどに多く含まれる多糖類などがある。体が糖質を一気に吸収すると、一時的に元気になるが、血糖値の上昇をキャッチした体はすぐに、膵臓からインスリンを放出して血糖値を下げようとする。急激に上がった血糖値は急激に下がっていくために、眠気やだるさが起こるのだ。


「ここで、目を覚まそうと甘い缶コーヒーや清涼飲料水などを飲むと大変です。砂糖水は消化にまったく時間がかからないのであっという間に胃で吸収され、血糖値はとんでもなく上昇します。すると脳では『報酬系』といわれるドーパミンが分泌され、非常に幸せな気分になりますが、その後にまた血糖値の急降下に襲われ、イライラするので糖質が欲しくなるのです」(牧田医師)


これがまさに「糖質中毒」の状態だ。糖を食べてハイになり、糖がなくなると気分が落ち着かず、集中力が欠ける。


牧田医師は「血糖値が下がると脳細胞の働きが悪くなり、思考力、集中力、認知力が下がります。ちょうどいい血糖値の値は70〜140mg/dl。血糖値を上げないように食べることが、脳の働きを良くするためには大切」という。


また、糖質のとりすぎは体内でたんぱく質と結びつき、長い時間のうちに、「AGE(糖化最終生成物)」という老化物質をつくりだす一因になる。これを「糖化」といい「酸化」より老化をもたらす。牧田医師は「血糖値の上昇を抑えることはAGEを防ぎ、脳の老化を予防します」という。



■高い血糖値は、認知症をひき起こす


血糖値のもたらす脳への影響は、長期的にはどうなのか。脳神経外科医・認知症サポート医の熊谷賴佳医師(京浜病院院長)は、認知症の要因として、糖の代謝異常があるという。



そもそも、糖をとりすぎる生活は、生活習慣病である2型糖尿病の原因だ。高血糖状態が続くことでインスリンの分泌異常が起き、結果的に細胞に糖をとり込めなくなる。まさに脳でも、同じことが起きると熊谷医師はいうのだ。


大脳には、有害な物質をブロックする血液脳関門という脳の関所がある。インスリンはここを通過して脳に入り、脳内では記憶や思考にかかわる役割もしているとされている。ところが、この分泌異常が起こると、どれだけ糖をとっても、脳がそれをエネルギーとして生かせない。この状態を、熊谷医師は「脳内糖尿病」と呼んでいる。


たとえば、認知症によくある「まだ、ごはんを食べていない!」という訴え。今までは、認知機能の低下による物忘れの症状とされてきた。


「しかし、この方の血糖値を測ったところ、食後なのに食べる前より血糖値が低くなっていました。この患者さんは糖尿病ではありません。しかし何らかの理由で、『食後低血糖』の状態が起き、脳が食事から糖のエネルギーをとり込めなくなっていたのです。これが脳細胞を破壊させ、認知機能に異常を引き起こしたと推測しています」


■腸内環境も脳に影響する


脳と腸には、神経系などを介して互いに影響を与え合う「脳腸相関」の関係がある。腸内細菌のバランスは、脳内物質ドーパミンの分泌に関わっているし、セロトニンはその9割が腸でつくられる。「過敏性腸症候群」は通勤電車の中で起こりやすい腹痛や下痢で、脳のストレスが原因といわれている。そこで、脳の回転を良くするには腸内環境を整えることも重要だ。


熊谷医師は、「認知症の患者さんには便秘が多く便が臭いなど、腸内環境の悪さを実感することが多い」という。


「認知症の周辺症状といわれる徘徊や無気力でぼんやりした状態、突然興奮して怒りだすなども、便秘を解消することで改善するケースがあります」


それでは、血糖値を上げず、腸にも良い食事とは、具体的にはどんなものなのか。



▼実践編


■手づくりジュースより卵かけご飯


「白米やパンなどの主食は、食べるとすれば朝か昼」。2人の医師とも声をそろえる。これには、夜に糖質をとらないということと、朝しっかり食べて空腹を防ぐことで、昼のドカ食いを避けるという2つの意味がある。


「糖質はたんぱく質といっしょに食べると、胃の滞留時間が長くなるため、血糖値が上がりにくくなります」(牧田医師)


そこで、パンには、ツナや塩分の少ないチーズをのせて食べる。和食なら納豆ご飯や卵かけご飯に。ラーメンを食べるなら、チャーシューと一緒に食べよう。


「野菜や豆類、魚などの繊維のあるものをよく噛んで食べることで便通が促され、腸内環境を整えてくれます」(熊谷医師)


腸内環境を整えるヨーグルトは無糖で、甘みには冷凍ブルーベリーなどをトッピング。果物を食べるなら朝だが、ジュースにすると食物繊維が含まれないうえ、果糖は血糖値を急激に上げてしまう。


「オレンジジュースをつくるなら、みかんを袋ごと食べたほうがまし。むしろ、だしをしっかりとったみそ汁がおすすめです。豆腐、葉物野菜、きのこなどを入れることでビタミン・ミネラルやたんぱく質が補給できます」(熊谷医師)


脳が老化してくると微妙な味わいがわからなくなる。塩分控えめで、だしのうまみや素材の味をおいしいと感じることも、脳を活性化することにつながるという。


サラダドレッシングは、糖質を含むものも多いのでNG。「一番のおすすめは質がよく風味のいいエキストラバージンオリーブオイル。もっとも抗酸化作用の高い油で旬の野菜を味わいましょう」(牧田医師)。




■早食い・ドカ食いは、脳を暴走させる


昼に、ざるそばやうどんを5分でかきこんで空腹を満たすのはNGだ。


「炭水化物オンリーなので、血糖値は急上昇し血糖値スパイクを引き起こします」(牧田医師)


忙しくても10分多めに時間をとって、海藻サラダやトマト、ゆで卵、おひたしなどのサイドメニューを頼み、先にゆっくりと食べておこう。


「食べ物が胃に入ってから脳の満腹中枢が刺激されるまで、どんなに少なくても10分はかかります。その間はとにかく血糖値を上げないものを食べて時間を稼ぐのです」(熊谷医師)


ある程度、満腹感を覚えてから炭水化物のそばやうどんを食べることで、ドカ食いを防ぐことができるのだ。


「そばの場合もたんぱく質と一緒に食べます。月見そばや、えびやいか、あなごなどの魚介の天ぷらそばがおすすめ。かき揚げは野菜が多く一見ヘルシーなようですが、かき揚げに使うにんじんやごぼうは糖質が多め。つなぎの小麦粉も多いので、血糖値の上昇を防ぐ点ではマイナスです」(牧田医師)


■1日3食より、ちょこちょこ食べる


とはいえ、空腹なときには、何を食べても血糖値は上がりやすくなってしまう。「そもそも、1日3食という食事スタイルが、血糖値を上げるようにできています」と牧田医師。


「たとえば、ランチにおにぎり3つを食べるならまず11時に1つ。そして13時、15時に1つずつと、小分けにして食べてください」(牧田医師)


または昼を腹6分目で食べ、10時や午後3時に間食をとるのでもいいと言う。


「だらだら食いは太るとされてきましたが、総量が同じなら実は逆。空腹と満腹を繰り返さないほうが血糖値は安定し、落ちついて仕事ができます」(牧田医師)


なお、どうしても食べたいデザートは、「食後1時間たってから、血糖抑制作用のあるコーヒーと一緒にゆっくり食べるほうが、血糖値を上がりにくくなる」(牧田医師)という。


残業後の遅い夕食はどうすればいいか。「豆腐や鶏ムネ肉のような消化の良いたんぱく質、または海藻類、野菜、豆類をとりましょう」(熊谷医師)。


野菜でも糖質の高いものは、夜遅くに食べるのは避けたい。「れんこん、ごぼうなどの根菜類は、思いのほか糖質が高い。根菜の煮物より葉物野菜のおひたし、海藻サラダでおなかを落ち着かせてください」(牧田医師)。



▼糖質と脳に良い成分からみた脳に良い食材・悪い食材

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▼良い食材


納豆

大豆には脳や細胞を若く保つレシチンや、糖質の代謝を上げるビタミンB1・食物繊維が豊富。




マグロやカツオ、サバやイワシには不飽和脂肪酸のオメガ3脂肪酸(DHAやEPA)が多く含まれる。




牛、豚、鶏肉、どれも脳の材料になるたんぱく質が豊富で、糖質はほとんど含まない。牛肉は赤身肉で。


うまみだし

かつお節(イノシン酸)、昆布(グルタミン酸)、干ししいたけ(グアニル酸)が味覚を刺激し、脳が活性化。


ヨーグルト

乳酸菌が腸内細菌叢を整え、ドーパミンやセロトニンなど脳内伝達物質の合成をサポートする。


ぎんなん

匂いの元「酪酸」に認知機能の改善効果が。イチョウ葉エキスは認知症の改善薬としてドイツでは認可。


ナッツ(ゴマを含む)

ナッツやゴマの油脂は酸化しにくい不飽和脂肪酸。クルミのナイアシン、落花生のレシチンは脳に良い成分。


コーヒー

クロロゲン酸が血糖値を抑制、カフェインが脳を活性化。新鮮な豆で挽きたてをブラックで。


チョコレート

カカオポリフェノールに腸や脳の炎症や酸化ストレスを抑える報告あり。カカオ70%以上のものを選ぼう。




白身は低カロリーで高たんぱく。黄身に豊富なビオチンは糖質の代謝をサポートする。


色の濃い葉物野菜

ビタミン・ミネラル・食物繊維が多く、血行を良くし脳のストレス解消に役立つ。


アサイベリー、ブルーベリーなど

ベリー類はアントシアニンなど抗酸化作用の高いポリフェノールを多く含む。熱を加えず生で食べたい。


緑茶

抗酸化ビタミン(ビタミンA、C、E)、カテキン、カフェイン、テアニンなどの成分で脳機能低下を改善。

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▼悪い食材


白米、白パン

精製された穀類は血糖値を上昇させやすい。ビタミンB類が多く含まれる玄米、全粒粉に替えるのもいい。


果物ジュース

果実を絞った生ジュースは食物繊維が含まれないため、特に糖質の吸収が早く、血糖値スパイクをひき起こす。


ベーコン・ハム・ソーセージ

加工肉に含まれる亜硝酸ナトリウムに発がんリスク。焼いて食べることでさらに糖化がすすみ脳細胞が老化。


ラーメン

高温で揚げたインスタントラーメンは、糖化が進んでいるので注意が必要だ。


コーン(とうもろこし)

糖質が高く野菜というより主食。血糖値を抑えるためのサラダには不適当。コーンフレークは無糖のものを。


ジャガイモ・サツマイモ

ビタミンCやカリウムは多いが糖質も多いので主食ととらえたい。高温調理では糖化が進んで認知症リスク。


甘い菓子

砂糖を多く使った菓子は、血糖値を乱高下させ、低血糖時にイライラや注意力散漫を起こしやすい。


ドリンク剤・清涼飲料水

含まれているブドウ糖により血糖値が急上昇する。エナジードリンクも同様。


人工甘味料

カロリーゼロの清涼飲料水などに使用。「腸内細菌を乱して糖尿病になる危険が指摘される」(牧田医師)。

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2 酒は脳に良いのか


■血糖値が上がらない、お酒の種類とは


お酒を飲むと、脳にはどんな現象が起こるのだろうか。



「アルコールはインスリンと同じように脳の関所である脳関門を通り抜け、大脳の中に入ります。そして理性をつかさどる大脳前頭前野や、動物脳ともいわれる大脳辺縁系を刺激するのです。適度に飲んでいれば、大脳が活性化しているから話題が弾んで楽しい酒になるでしょう。しかし、飲みすぎるとしだいに前頭葉がマヒしてしまう。そして、辺縁系だけが活性化されるために理性が失われ、乱暴な口を利いたり、行動が荒っぽくなると考えられます」(熊谷医師)


適度な量であれば、脳は活性化するのだ。


飲酒で血糖値は上がるのか。牧田医師は、血糖値と酒について健康な人のデータを示してくれた。


まず、食事中にアルコールを飲むことで、血糖値やインスリンにどのような変化が出るか(グラフ参照)。これによれば、白いパンを食べた人では45分後に血糖値は急上昇する。それから下降するが、2時間たってもまだ若干血糖値は高い状態にあった。ビールは飲んで30分後に血糖値が上がり、パンほどではないが血糖値の変動が見られる。これはビールに糖質が含まれているからだ。表を参照していただくとわかるように、ごくごく飲めてしまうビールの糖質量は高いので、注意が必要だ。


しかし、ワインと蒸留酒であるジンに関しては、血糖値は全く上がらず、2時間後には摂取時よりも下がっていたのだ。どの種類のお酒を飲むか、選び方が大切だ。


牧田医師が提案するのは、ヨーロッパスタイルの飲み方だ。


「フランス人やイタリア人は、ワインを飲みながら何時間もかけて食事をします。彼らが食べるわりに太っていないのは、こうした飲み方にもよるのでしょう。実際、我々のスタッフの研究でも、ワインに始まり、肉や魚、チーズ、パスタをたっぷり食べるイタリア料理では、食べても血糖値が上がらないことが検証されています」



3 脳に良い生活習慣とは


■食後15分以内に歩く(牧田医師)


ランチタイムの残り時間には、午後の眠気対策で昼寝をしておこうという人もいるのではないか。でもうまく眠れないかもしれない。食べて15分以内に血糖値が上がり始め、ちょうど元気が出ているときだからだ。




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そこで、このタイミングで歩いたり、軽い運動をしてみてはどうだろう。


「筋肉がとり込んだ血糖をすぐにエネルギーとして使うので、血糖値が上がりすぎず、午後の眠気やだるさを防ぐことが期待できます」


外食後の帰り道を有効活用しよう。


「約20分で2000歩ぐらい歩くのが目安。散歩中の人を追い越すぐらいの速さで歩くと、距離にして1.5キロぐらいになります。室内でウオーキングマシンを使ったり、ビルの階段を上るのでもいいでしょう」


食後すぐに始め、20分は続けよう。週2回の筋トレもおすすめだ。


「筋肉は、グリコーゲンとして血糖をためる貯蔵庫です。筋肉をつけておくと、運動時にグリコーゲンを燃やすことで血糖値を上げずに調節してくれる。よぶんな糖質がなくなるので、老化促進物質のAGEがつくられるのも抑えます」


■「吐く」から始まる深呼吸(熊谷医師)


緊迫した場面におかれたとき、気づくと息苦しくなっていることがある。落ち着いた思考ができそうもない。


「そういうときは、まず、『はーーっ』と吐くことを意識してください」


リラックスのための深呼吸は、まず吐くことだ。長く吐いて、肺の中の空気を吐ききれば、吸おうとしなくても空気が自然に入ってくるという。なぜ、深呼吸はリラックスをもたらすのか。


「怒りなどで緊張したとき、強く働いているのは大脳基底核の『淡蒼球(たんそうきゅう)』という神経回路です。ここは常に戦闘態勢で、怒りとか恐怖に対して攻撃をしかけている領域。それを抑える役割をするのが理性をつかさどる『大脳前頭前野』です」


深呼吸で、新鮮な酸素を脳に送り込み、前頭前野を活性化するのだ。


「前頭前野が活性化すると、淡蒼球の活動が鎮まります。すると気持ちが落ち着いて『まあ、いいか』と思えるようになる。こうして脳をストレスから解放してあげると、脳の疲れがとれ、脳細胞を炎症から守ります」



■脳が休息する睡眠を(熊谷医師)


「睡眠には4つの段階があり、そのうち1段階目は浅い眠り。体は寝ていても脳は起きています。脳が眠る深い眠りは3〜4段階目です」


疲労を感じるときはこの3〜4段階目に入る眠りができていない可能性が。


「一晩の睡眠は、60〜90分サイクルで、深い眠りと浅い眠りを繰り返していますが、加齢とともに長く寝ても深い眠りに入りにくくなります。すると、疲れがとれないばかりか、脳への大きなダメージも起きかねません」


深い睡眠は、脳にとって「βアミロイド」などの不要物を掃除する時間でもあるからだ。


「βアミロイドは、たんぱく質のゴミのようなもので、これがたまることがアルツハイマー病を引き起こすともいわれています。睡眠が3〜4段階目に入って脳がしっかり寝ているときだけ、神経細胞のつなぎ目が緩んでβアミロイドが表面に出てきます。そして脳脊髄液から静脈に入り、洗い流すことができるのです」


深く眠るにはどうしたらいいのか。


「できれば、朝日とともに目覚めるような自然な生活をすること。そして昼間はよく体を動かすこと。脳脊髄液がシャッフルされ、とらえたゴミが静脈へと流れやすくなるのです」


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牧田善二

糖尿病専門医

医学博士。1979年、北海道大学医学部卒業。ニューヨークのロックフェラー大学医生化学講座などでAGEの研究を行う。2003年にAGE牧田クリニックを開業。




熊谷賴佳

脳神経外科専門医

認知症サポート医。1977年、慶應義塾大学医学部卒業後、東京大学医学部脳神経外科学教室入局。東京警察病院などを経て、92年より京浜病院院長。

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(南雲 つぐみ 撮影=相澤 正 写真=Getty Images、iStock.com)

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