右肩上がりの冷凍食品市場 家呑み向けおつまみ需要も牽引

9月30日(日)16時0分 NEWSポストセブン

冷凍食品は高齢化社会の心強い味方でもある(写真:アフロ)

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 技術の進歩もあり、ひと昔前に比べれば冷凍食品のイメージ、ラインナップは様変わりし、われわれの食生活にしっかりと根付いている。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏がレポートする。


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 日本社会の高齢化や人口減少が続くなか、「中食」市場が賑わっている。とりわけ好調なのが冷凍調理食品だ。家庭での調理が難しくなった高齢者をはじめ、誰もが電子レンジで温めれば作りたてに近い味が味わえる。総務省の家計調査(総世帯)でも、2008年から9年連続で冷凍食品の家計消費支出が伸びている。


 冷凍食品が本格的に国内で普及し始めたのは、1964(昭和39)年に開催された前回の東京オリンピックでのこと。さまざまなホテルやレストランで使われたことで利用範囲が拡大。1970年代にはブームとなった「外食」向けに。1980年代には家庭向け冷蔵庫に冷凍庫が備わり、家庭向けの冷凍食品が続々登場するようになる。


 1980年代にはピラフ、グラタン、焼きおにぎりなどの軽食カテゴリーの冷凍食品が登場。その後、冷凍さぬきうどんのような主食カテゴリーからコロッケ、冷凍パンなどこの数十年で冷凍食品は急速に進化してきた。ライフスタイルの変化がそのまま、冷凍食品の進化につながっている。


 先行する冷凍食品メーカーは、より企画性の鮮明なシリーズを投入している。近年、活気があるのが、家飲み需要に向けたおつまみ展開だ。味の素冷凍食品は今年2月から「夜九時のひとり呑み」シリーズを売り出した。昨年の同社の調査によれば、成人人口の35%が週1回以上、家庭で飲酒をし、その半数が「ひとり呑み」をしていると判明。その層に向けて少量パッケージのおつまみ冷凍食品を発信していく。


 日本水産の「おうちおつまみ」シリーズのように明確に「おつまみ」を充実させるメーカーも増えた。さらに各コンビニのプライベートブランド(PB)商品にも、おつまみ仕様アイテムが充実してきている。「おつまみ需要」が冷凍食品という既存マーケットを掘り起こす牽引車となっている。


 そして最大のマーケットが高齢者、共働き向けの需要だ。特に老老介護や独居老人の場合、ガスコンロの使用には消し忘れなどの危険が伴い、慣れないIHクッキングヒーターには使いにくさが伴う。だが電子レンジ調理対応の冷凍食品ならば、日持ちもして必要な栄養も摂取できる。共働き家庭のおかず需要なども相まって、食卓の「食事」需要が高まっている。弁当需要は少子化の影響で頭打ちだが、セットで語られる「高齢化」が冷凍食品メーカーにとっての活路となりつつあるのは皮肉なところだ。



 マーケットとしては右肩上がりの成長曲線を描いていることもあって、冷凍食品市場への新規参入も増えている。


「無印良品」でライフスタイル提案をしてきた良品計画は、この28日から冷凍食品の販売に乗り出した。しかも惣菜や主食などの5カテゴリーで「ごぼうと九条ねぎのきんぴら 柚子風味」、「五穀米ごはんの鮭おにぎり」など50品を一気に投入。当面は越谷レイクタウンやグランフロント大阪など4店舗とネットストアでの販売となるが、その後も有楽町店などの大型店を中心に展開する予定となっている。


 昨年、フランスから上陸した高級冷凍食品専門店「ピカール」は青山、麻布十番、中目黒、自由が丘、広尾など情報感度の高い町に次々と出店。500〜1000円あたりが中心価格帯という高級志向だが、「仔牛のホワイトシチュー バターライス添え」や「サーモンとリコッタチーズのパスタ」といった洒落たメニューアイテムが揃う。


 実は冷凍食品への消費支出が最後に前年割れとなった2008年は、年始早々中国製冷凍ギョーザによる食中毒事件が発覚した年だ。以来、右肩上がりの成長を続けてきたことを考えると、日本における冷凍食品市場は数少ない成長産業とも言える。さらに言えば、冷凍食品市場の充実は、加速する高齢化社会と深刻化する介護環境を支える、わずかばかりの福音なのかもしれない。

NEWSポストセブン

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