「コロナワクチンを打つと5年以内に死ぬ」なぜベテラン自民党県議はそんな陰謀論にハマったのか

2022年10月5日(水)18時15分 プレジデント社

コロナワクチン陰謀論はなぜ広まってしまうのか(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/recep-bg

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荒唐無稽な「陰謀論」を信じてしまう人が後を絶たない。東京大学非常勤講師の左巻健男さんは「自分だけが真実を知っていると思うことで、プライドが高まり高揚感を得られる。不安が強まる社会にあって、陰謀論が『癒し』になっているのではないか」という——。

※本稿は、左巻健男『陰謀論とニセ科学』(ワニブックス)の一部を再編集したものです。


写真=iStock.com/recep-bg
コロナワクチン陰謀論はなぜ広まってしまうのか(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/recep-bg

■陰謀論は「カルト宗教の洗脳」に酷似


映画監督の増山麗奈氏は、一時的にせよQアノンに感化されたことを反省しています。


以下は、ハーバー・ビジネス・オンラインの記事「アメリカ大統領選の『陰謀論』にハマってしまった私〜やらかした当事者が振り返る〜」からの引用です。


「よく考えれば『トランプは唯一無二の救世主』という主張は何の根拠もないことがわかるのだが、インターネットの動画を深夜1人で見ていて、周りのSNSに賛同者しかいなくなると、人は冷静さを失う」


「最初にショックを与えて外部と遮断させ、その恐怖から逃れたいという状況につけ込んで説得するというのは、カルト宗教組織やテロ組織でも用いられる洗脳の常套手段だ。


実は、深夜1人でネットサーフィンをしていた私は、こうした洗脳を受けているのと同じ状態になっていたのだと思う」


増山氏はこのように反省の弁を語ります。


■日本の陰謀論者「Jアノン」中身は旧統一教会分派


わが国でもこの件で路上デモをしていた団体があります。アメリカのように悪魔崇拝や小児性愛といった主張は前面に出てこなくても、アメリカは闇の政府(ディープ・ステート)に牛耳られているというトランプ支援運動が日本でも起こり、たまに路上デモをしていました。


Qアノンの影響を受けた日本の陰謀論者「Jアノン」です。


その中心は、トランプの再選を予言していた幸福の科学、そして旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の分派である日本サンクチュアリ協会といった保守系宗教団体の信者たちです。


Jアノンの主張の特徴は、とくに闇の政府(ディープ・ステート)を中国共産党と結びつけるところです。


■「ワクチンを打つと5年で死ぬ」陰謀論にハマった県議の主張


新型コロナウイルス感染症騒動、いわゆるコロナ禍において陰謀論やニセ科学が蔓延(まんえん)しました。そんな中、幸福の科学、日本サンクチュアリ協会の関係者以外にも、陰謀論にハマっていった人たちがいます。


たとえば、議員歴30年のベテラン福井県会議員である斉藤新緑(しんりょく)氏(自民)が自身の議会報告書に、新型コロナウイルス感染症やそのワクチンなどについて陰謀論的なことを述べて多くの支持者に配布したことが話題になりました。


斉藤氏は、


「新型コロナウイルスは特定されておらず、その存在さえも証明されていない」
「PCR検査でパパイヤ、ヤギ、ウズラの卵、自動車オイルをこすりつけた検体でも陽性になる。PCR検査はコロナ製造機」
「ワクチンは酸化グラフェンからできている殺人兵器」
「ワクチンにはマイクロチップが含まれている。5G電磁波で酸化グラフェンが活性化」
「打つと5年以内に死ぬ」


などと主張したのです。


いったい斉藤氏は、そんなことを誰がやっているというのでしょうか。


写真=iStock.com/itakayuki
「PCR検査はコロナ製造機」という主張すらある(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/itakayuki

■陰謀論は不安な人にとっての「癒し」


陰謀論の多くが、背後に世界規模の邪悪な存在や政府組織などが暗躍していると主張しますが、斉藤氏もその例にもれません。


バイデンとトランプの戦いになった米国大統領選挙とあわせて「陰謀論」の背景を語ります。


・2020年12月8日、光(トランプ陣営)と闇(バイデン陣営)の地球規模の最後の聖戦。光の勢力が闇の支配者(ディープ・ステート)に勝利したが、主要メディアは「大統領はバイデンに決定」としか報道せず、人々を洗脳し闇の支配は続いている
・コロナ禍は、闇の支配者によって、人口削減と人の支配のために意図的につくられた「偽装パンデミック」がその実態である


まさに「Qアノン」の主張と同様です。


一方、陰謀論は、人によっては「癒し」になっているようです。


不安が強まる社会の中で、「闇の支配者が進めている世界人口の削減、最後の世界聖戦などの秘密を自分だけが知っている」という感覚は、プライドを高め、自己高揚感をもたらすのでしょう。


■「反ワクチン陰謀論」実は200年前からある


アメリカでは議会議事堂乱入事件の衝撃を受けて、Qアノンの投稿をSNSから排除し始めました。こうして【Q】も、鳴りを潜めました。



左巻健男『陰謀論とニセ科学』(ワニブックス)

そうしたなかで今後もっとも心配なのは、Qアノンと新型コロナウイルス感染症のパンデミックでやや劣勢となっている反ワクチン運動とが合体していくことです。


Qアノンの「政府が“闇の政府(ディープ・ステート)”に乗っ取られている」という主張と、反ワクチン派の「医師と製薬会社は結託して健康な人々に不必要なだけではなく、害をもたらすワクチンを打とうとしている」という主張が一緒になっている面があるのです。


もともとアメリカやイギリスには1850年代に始まった反ワクチン運動の長い歴史があります。その反ワクチン運動にはQアノンと共通する部分が多いとナカイサヤカ氏は指摘します(『増補版 陰謀論はどこまで真実か』文芸社)。


以下に、その要約を記しておきます。


「たとえば、対象に合わせて恐怖と不安を煽(あお)る陰謀論を利用する点だ。『政府に強制されてワクチンを打っても大丈夫か。子どもが副作用を起こさないか心配』と考える母親たちにアピールするために、1860年代の種痘、いわゆる天然痘の予防接種の反対活動家たちは母親たちを怯えさせようとして、官僚や医者が悪魔や魔女と結託していると触れまわった」


「反ワクチン活動家は、人々に科学と政府に対する不信感を植えつけ、誘導するために誤った情報の発信を続けるだろう。Qアノン信奉者と同じように、反ワクチン活動家も自分たちなりの正義の戦いを続けているのだ」


「新型コロナウイルスの流行で、ワクチンの有効性を改めて体感する人が増えている。


そうしたなかで、勢力を失いつつある反ワクチン活動家と、行き場を失ったQアノン信奉者が合体するのを阻止するのは難しいかもしれない。またQアノン信奉者と反ワクチン運動が融合することで、すでにアメリカという一国を超えて世界に広がっているQアノンが、もっと多くの信奉者を集める道を開くことになるかもしれない」


写真=iStock.com/nicoletaionescu
陰謀論は自分だけが世界の真実を知っていると思わせる(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/nicoletaionescu

斉藤県議の場合を見ればわかるように、実際にQアノンの主張と反ワクチン運動は結びついているのです。


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左巻 健男(さまき・たけお)
東京大学非常勤講師
東京大学教育学部附属中・高等学校、京都工芸繊維大学、同志社女子大学、法政大学生命科学部環境応用化学科教授、同教職課程センター教授などを経て現職。東京学芸大学大学院教育学研究科理科教育専攻物理化学講座を修了。『RikaTan(理科の探検)』誌編集長、中学校理科教科書(新しい科学)編集委員。法政大学を定年後、精力的に執筆活動や講演会の講師を務める。『面白くて眠れなくなる物理』『面白くて眠れなくなる化学』『面白くて眠れなくなる地学』『怖くて眠れなくなる化学』(PHP研究所)、『身近にあふれる「科学」が3時間でわかる本』『身近にあふれる「微生物」が3時間でわかる本』(明日香出版社)、『絶対に面白い化学入門 世界史は化学でできている』(ダイヤモンド社)など著書多数。
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(東京大学非常勤講師 左巻 健男)

プレジデント社

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