【悩まない人の頭の中】「できない」は存在しない。「やらない自分」を認める。
2024年10月6日(日)6時0分 ダイヤモンドオンライン
世の中には「何かにつけて言い訳ばかりの人」がいる一方で、「どんな状況でも言い訳しない人」もいる。この違いは何だろう?本連載では、ビジネスパーソンから経営者まで数多くの相談を受けている“悩み「解消」のスペシャリスト”、北の達人コーポレーション社長・木下勝寿氏が、悩まない人になるコツを紹介する。いま「現実のビジネス現場において“根拠なきポジティブ”はただの現実逃避、“鋼のメンタル”とはただの鈍感人間。ビジネス現場での悩み解消法は『思考アルゴリズム』だ」と言い切る木下氏の最新刊『「悩まない人」の考え方 ── 1日1つインストールする一生悩まない最強スキル30』が話題となっている。本稿では、「出来事、仕事、他者の悩みの9割を消し去るスーパー思考フォーマット」という本書から一部を抜粋・編集してお届けする。
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1兆円企業をつくれるか?
「あなたは1兆円企業をつくれますか?」
そう尋ねられたら、大半の人が「つくれません」と答えるだろう。 ふつうの人は物事を「自分にできるか、できないか」で捉え、難易度が高ければ「できないこと」「実現不可能なこと」と考えるクセを持っている。
そして、こうして生まれる「できない自分」はしばしば悩みのタネになる(1兆円企業がつくれなくて悩む人は、ほとんどいないだろうが)。
一方、「悩まない人」は、これとはまったく別の思考アルゴリズムを持っている。
少し驚かれるかもしれないが、彼らの世界観からすると、「1兆円企業をつくれません」という答えは、端的に言って「誤り」である。
なぜなら、1兆円企業をつくることは「できる」からだ。 どういうことか説明しよう。
他人が実現したことは、必ず自分にも実現できる
1兆円企業をつくる大変さはさておき、すでに世の中には時価総額が1兆円を超えている企業が山ほどある。 つまり、1兆円企業をつくった人は現に何人もいるわけだ。 だとすれば、それは物理的に不可能なことではないはずだ。 つまり「できること」である。
「できる/できない」という観点で見たとき、世界中にだれか一人でも実現している人がいるなら、それは「できること」である。 可能性が0%ではないからだ。
悩みがちな人は、「自分に実現できる/できない」をまず考えてしまう。 しかし、「悩まない人」はまず先に「この世界において実現できる/できない」を考える。
要するに「できる」の射程が違うのである。
「でも……結局、『自分にできる』のでなければ、意味がないのでは?」
そう問いたくなる人もいるだろう。 たしかに、「世の中でだれかが実現している」と「同じことを自分が実現できる」は、ひとまず別の事象である。
しかし、「悩まない人」はここでも立ち止まらない。「だれかが実現したことはすべて、自分にも実現できる」と考える。 なぜそんなふうに考えられるのか?
一人でも実現している人がいた場合、次に目を向けるべきは「なぜその人はそれを実現できたのか?」である。
1兆円企業をつくれた人は、どうやって1兆円企業をつくったのか? 自分が1兆円企業をつくるには、何が必要なのか? そうした条件ややり方を徹底的に調べ尽くしていくのである。
完全に調べ尽くしてまったく同じことを実践すれば、理論的には1兆円企業をつくれるはずだ。 だから、「すでにだれかが実現していること」は「自分にも実現できること」なのである。
「できる/できない」は「能力がある/ない」と関係ない
こう話しても、まだ納得いかない人も多いだろう。
「いくら『1兆円企業をつくる方法』が完全にわかっても、それを自分が実践できるとは限らないのでは?」「『1兆円企業をつくる方法』を実践できたのは、“彼ら”が明晰な頭脳とずば抜けた精神力を持つスーパーマンだからで、“自分”のような凡人にはそもそもそれを実行に移すことすらできません!」
お決まりの反論だが、これも先ほどと同じ手法で乗り越えられる。 つまり、今度は「なぜ彼らがその手法を実行できたのか?」を突き詰めていけばいいのだ。
たとえば、彼らが「多彩な人脈があったからできた」ということなら、その多彩な人脈をどうやってつくったのかを調べるのだ。
このように理由を徹底的に調べ尽くしていけば、「『1兆円企業をつくる方法』を実践する方法」がわかる。
それがわかれば、「『1兆円企業をつくる方法』を実践できる人」になれるはずだ。
ここからわかるとおり、「できる/できない」は、「能力がある/ない」とは関係がない。 やり方がわからないことにぶつかったときに、
① すでにできている人を探す ② その人ができている理由を明らかにする ③ わかった方法をそのまま実行する
というサイクルを立ち上げられるかが、両者の明暗を分けているにすぎない。
多くの人は、自分ができていないことに気づいたとき、「できている人の秘密」を知ろうとしない。「自分にはできない」「あの人にはできる」と“結果”の部分だけに目を向け、コンプレックスを抱いたり自信を喪失したりしていく。
一方、「悩まない人」は「あの人にはできているのに、自分にはできていないこと」を見つけると、真っ先に「その差分が何に由来しているのか?」という“原因”を見極めようとする。 そして必要とあらば、「できている人」のやり方をそのままマネして、差分を埋めようとする。
このような思考アルゴリズムがある人にとっては、「実現できないこと」はもはや存在しない。 すべては「まだ実現できていないだけのこと」へと意味を変えるからだ。
「1兆円企業をつくりたくない人」はどうすべきか?
ここでもう1つ注意点がある。「やり方がわかる」と「やり方を実践する」は別物ということだ。 つまり、それを「やるかやらないか」は自分次第なのだ。
「物理的に実現可能だが、それには多大な労力がかかる」「実現するのにかかる時間を、もっと別のことに使いたい」「それを実現することに、そもそも魅力を感じない」
こんなときは、いくら「やり方」がわかったとしても、それを実行には移さないだろう。理由は簡単。「やりたくない」からである。
たとえば、「1兆円企業をつくる方法」や「それを実践する方法」がすみずみまで完璧にわかったとしても、万人がその方法を実行に移すわけではない。
1兆円企業の創始者になるには、人生の大部分を仕事に捧げる必要がある。 犠牲にすべきことも少なくないはずだ。ほかのことに時間を使ったほうが、もっと幸せな人生を歩めそうなら、やり方がわかっていても、わざわざ1兆円企業をつくろうとは思わないだろう。
ただし、そういう人は「1兆円企業をつくれない」のではなく、「1兆円企業をつくらない」のである。
つまり、「できないからやらない」のではなく、「やりたくないからやらない」のだ。
「悩まない人」は、物事を「できる/できない」ではなく、「やる/やらない」という「自分の意志」の軸で捉えている。
したがって、「あなたは1兆円企業をつくれますか?」と問われたとき、「悩まない人」の答えは次のどちらかになる。
「(やり方がわかったので)つくれます。つくってみたいのでやってみます」「(やり方がわかったので)つくれます。つくりたくはないのでやりません」
日常のさまざまな場面、特に仕事では、このような考え方のほうが悩まずにすむ。
「できない」からは悩みが生まれるが、そのやり方を知り尽くしたうえで「やらない」と自分の意志で決めたなら、悩む余地はなくなる。
大切なのは「できない自分」ではなく「やらない自分」を自覚することなのだ。
「いつも無茶振りされる人」に共通する思考グセ
世の中には「上司から無理難題を言われて悩んでいる人」が少なくない。 私もさすがに「1兆円企業をつくって」とまでは言わないが、社員に「これをどうにかして」と依頼することがある。
そのとき、すぐに「これはどうにもできません」「絶対に実現不可能です」と言い出す人がいる。
「できない」が口グセになっている人は、必ずしも能力が低いわけではない。むしろ、経験がそれなりにある人ほど、条件反射的に「できません」と言ってしまう。 つまり、そんな思考アルゴリズムが脳に染みついているのである。
彼らが言う「できない」「実現不可能」は、99%が“ウソ”である。 なぜなら、その後に私が少し調べてみると、すでに実現している事例が見つかるからだ。
「できない」という答えを出すのは、せめてそうした事例の成立背景やエッセンスを抽出してからでも遅くないはずだ。
「すでにこれを実現している企業の事例はありますが、彼らには◯◯という特殊事情があるので、当社が同じことをするのはかなり難易度が高いです」と説明されれば、まだ議論の余地はある。
しかし、すぐに「できない」と言ってしまう人は、「できている人・企業」を十分に調べようともしないし、「彼らができている理由」を知ろうともしない。
これはなぜか? 答えは簡単だ。無意識に「やりたくない」と思っているからである。
すべての場合がそうとはいえないが、「上司から無理難題を言われた」と嘆いている人の多くは、実際には「やりたくない」から「無理難題を言われた“ことにしているだけ”」なのである。
しかしそんな人は、自分が「やらない」という選択をしていることにすら気づかない。
彼らは「やる/やらない」という世界観ではなく、「できる/できない」という世界観に閉じこもっているので「自分はできない」と考え、しばしば深い悩みに陥るのである。
「やり方」がわからないと、「やりたい」気持ちは出てこない
もちろん、個人の能力差はある。 アーティストやアスリートの世界なら、個人が持っている天性の素質や身体能力がモノをいう。 ある人には生み出せるが、ほかの人には生み出せない作品や記録、パフォーマンスは確実にある。 たとえ、私がいまから大谷翔平選手(1994年生)のバッティングやピッチングの秘訣をどれだけ分析しても、メジャーリーグで同じ結果を残せるわけではない。
しかし、ことビジネスに関していうと、個人の資質に左右される仕事は、みんなが思っている以上に少ない。 企画やマーケティングなど、いわゆるひらめきやセンスが必要とされている仕事ですら、「やり方」を徹底的に調べ尽くし、まったく同じことをやっていくと、だれでもそれなりの結果を出すことができる。それがビジネスのすばらしいところだ。
にもかかわらず、「やり方」を調べもせずに、「できない」と言ってしまう人がいる。「能力不足・経験不足でできません」と言う人の9割は、無意識の言い訳だ。
社内外のビジネスパーソンを数多く見てきた私から見ると、ほとんどの人の能力に大した違いはない。 同じ職場に圧倒的成果を出している人が一人でもいるのなら、「◯◯なのでできない」という理屈は、いますぐ捨てたほうがいいだろう。
もちろん、成果が出るやり方を「やりたい」と思えないなら、それは仕方がない。「やりたい」と思えないことについて「もっとやりたいと思え」とは言えない。
ただし、そんな人には、まず「うまくいっている人のやり方」を徹底的に研究してみることをおすすめしたい。
人間は「具体的なやり方」がわかれば、案外それをやってみたくなる生き物だからである。
その人の中に「やりたい」という気持ちが生まれないのは、単に「やり方」がわからないからなのかもしれない。
成果を出す方法がわかっても「やりたい」と思えないなら、そのときこそ、情熱を傾けられる別の仕事を探すべきだろう。
(本稿は『「悩まない人」の考え方──1日1つインストールする一生悩まない最強スキル30』の一部を抜粋・編集したものです)