EV車は前途洋々か?

10月6日(水)16時43分 財経新聞

 EV車推しの元祖、中国で電力不足が深刻化している。

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 停電で工場が稼働を停止したり、一般家庭も停電で生活に支障が出る状況で、「EV車押し」はどうなるのかが興味深い。

●EV車への土俵転換を画策した中国
 内燃機関が自動車の主流であり続けるなら、中国は未来永劫欧米や日本に追いつけない。せいぜい「金にあかせて先進国の自動車メーカーを傘下に収める」だけだろう。

 そこで短絡的に、部品メーカーの裾野が狭く、技術蓄積が無くても「或る程度のレベル」なら製作出来て、部品点数が少なくて済むEV車へのシフトを画策した。

 「土俵とルールを変えれば、何とかなる」と考えた結果が、昨今いろいろ騒がれているEV車シフトの元凶である。そこに、ディーゼルエンジンで技術レベルの低さを露呈したドイツが追従した。

●各国の電源構成事情
 EV車に関する「1充電走行距離」等の問題が全て解消したにしても、自動車を全てEV車にして「走行に使用する電力」を、不自由なく利用可能な国は極めて少数である。

 せいぜい「原子力発電比率71.5%のフランス」や「水力発電約50%のノルウェー」位だろう。

●各国の電源構成
  2017年
     石炭 石油  天然ガス 原子力 水力 その他 (CO2排出)
世界 38.5  3.3 23.0 10.3 15.9  9.0   (64.8)
米国   31.0  0.8  31.4  19.7  7.1 10.1   (63.2)
日本  33.2  6.6  37.5  3.1 7.8  11.8   (77.3)
フランス 2.7  1.3  7.3 71.5 9.0  8.2   (11.3)
ドイツ 39.0 0.9 13.5 11.8 3.1 31.7 (53.4)
中国 67.9 0.1 2.8 3.8 17.5 7.9 (70.8)

●中国の状況
 上記「各国の電源構成」表で明らかな様に、中国の場合、電源構成の70.8%がCO2排出を伴う。

 そして石炭火力発電比率が67.9%と、その大きさが際立っている。加えて、それは前近代的な「煙もくもく」の旧式な石炭火力発電所なのだ。

 2008年の北京オリンピックの際には、街全体を覆う大気汚染で、昼間でもフォグランプが必要な位のスモッグ対策として、工場を無理やり操業停止させた事は、記憶に新しい。

 その石炭を、武漢のウイルス研究所の調査を提唱したオーストラリアに反発して輸入制限した為に、逆にわが身に降りかかっての電力不足なのだ。

●日本の状況
 日本の場合、CO2排出を伴う「石炭+石油+天然ガス」は77.3%で、一見日本の方が酷い印象を与えるが、天然ガスが37.5%で、石炭火力発電比率は33.2%でしか無い。

 その上根本的に違うのは、日本の石炭火力発電は「クリーンコール技術」(石炭ガス化複合発電)によるもので、従来タイプと較べてクリーンだから、「石炭火力発電」といっても雲泥の差がある。

 日本も天然ガス等の多くを輸入しているので、原発再稼働やメタンハイドレート等の活用を検討しなければならない。

●ドイツの状況
 ドイツは脱原発を掲げ、原子力発電を11.8%まで落とした為、電源構成の53.4%がCO2排出を伴うので、本来EV車には適合しないお国柄だ。

 しかし、フランスが原子力発電で71.5%を賄っているので、フランスから電力の供給を受けている。中国の尻馬に乗ってEV車だと騒げるのもフランスのお蔭なだけである。

●他国の状況
 インドの電力事情に関しても、10月5日には「インドに迫る電力危機」と報じられた。

 インドの場合、モディ政権が、インドの貿易赤字約16兆円(19年度)を改善する為、輸入高が1位である年間約14兆円の原油・石油製品の輸入を低減したいと考えている。

 インドの現状は自動車普及率を見ると4輪車が3.2%、2輪車が12.3%程度で中国やASEAN諸国よりも低いが、将来的に普及が進めば石油輸入も拡大するので、EV車普及を視野に入れている。

 電力に余裕が無い国に、EV車は不向きなのは明白だ。

●電力は潤沢にあるのか
 「カーボンフリー」と唱えれば、地球環境に優しいみたいな印象を持つ様だが、「EV車」と「内燃機関車」を比較すれば、現在の電源構成から見ればEV車の方が環境に悪い。

 加えて、夏場のクーラー使用がピークの時期には、現状でもギリギリで綱渡りの状況だから、EV車に回せる電気にどれ位余裕があるのだろうか。

 COVID-19蔓延以前で、今年ほどの猛暑酷暑で無くても、夏の甲子園での高校野球を自宅でクーラーをかけて観戦すると、試合が盛り上がるタイミングには電力会社がパニック寸前だったりした。

●結論として
 夢の様なEV車が完成したとする。

 車載電池が革新的な進歩を遂げて、「1充電走行距離」の問題が全面的に解消し、嵩張る給電装置が不要となって団地の青空駐車や2段式機械駐車設備、タワーパーキングにも普通に駐車可能となり、勿論「発火事故」とは無縁となっても、肝心の燃料に代わる電気が満足に手に入らなければ、EV車の前途は洋々だとは絶対にいえない筈である。

財経新聞

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