急旋回して消費税廃止を主張、れいわに倣う共産党

10月8日(火)6時0分 JBpress

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(筆坂 秀世:元参議院議員、政治評論家)

 日本共産党は今年(2019年)7月の参院選挙に向けての公約「希望と安心の日本を 参院選にあたっての日本共産党の公約」の大きな柱に、「くらしと景気を壊す無謀な消費税10%への増税中止の審判を」ということを掲げていた。

 そこには次のように書かれていた。

<家計消費が減り、実質賃金も下がり、景気の悪化が現実になっている時に、5兆円にも上る消費税増税を家計と消費に押し付けるのは、あまりにも無謀です。『消費税増税に賛成』という人たちからも『こんな時に増税していいのか』という声が上がっています。

 それでも安倍政権は、消費税増税に突き進んでいます。このままくらしと景気をこわす大増税を座して見ているわけにはいきません。参議院選挙で『増税ストップ』の審判を下し、増税中止に追い込みましょう。>

 このどこにも消費税の廃止とか、税率の引き下げという主張は書かれていなかった。いずれにしても共産党の主張が通ることはなく、予定通りに10月1日から増税が実施された。共産党に投票すれば増税が中止になると思った人は、ほとんどいなかったであろう。やる前から分かっていたことだ。


まさか私の主張を参考にしたとは思わないが

 私は7月に上梓した『日本共産党の最新レトリック』(産経新聞出版)の中で、日本共産党の「増税中止」という主張について次のように批判していた。

<『消費税増税ノー』という共産党の主張も、もっともらしいがおかしい。共産党はそもそも消費税の増税そのものに反対してきた。1989年に税率3%の消費税が導入されると、翌90年には共産党主導で『消費税をなくす会』まで結成している。

 同党は97年に5%に引き上げられた際も国民の暮らしが破壊されるとして猛反対した。2014年に8%に引き上げられた際も同様だった。だったら掲げるべき政策は、『増税ノー』ではなく、『消費税廃止』か、今なら最低限でも『5%に戻せ』でなければおかしいのではないか。

 だが、そうは言わないのである。本気ではなく、建前なのだと感じてしまう。導入も、その後の2回の増税も、『仕方がない』と是認してきたのだ。>

 ところが最近、共産党がこの私の指摘した通りの主張に急旋回し始めたのだ。


「新たなたたかい」は形だけ?

 それが10月1日付の「消費税減税・廃止を求める、新たなたたかいをよびかけます」というよびかけ文である。そこには次のように述べられている。

<31年の歴史によってその害悪が天下に明らかになったこのような悪税(消費税のこと)を続けていいのかがいま問われています。

 日本共産党は、消費税導入が強行されたその日から、一貫してこの悪税の廃止を求めて奮闘してきた政党として、消費税廃止の旗をいっそう高く掲げ、国民のみなさんと力をあわせてその実現をめざす決意を表明するものです。>

<2014年に安倍政権が強行した8%への大増税の結果、5年半が経過しても家計消費は回復するどころか、増税前にくらべて年20万円以上も落ち込むという深刻な消費不況に陥っています。働く人の実質賃金も年15万円も落ち込んでいます。8%への大増税が重大な経済失政であったことは明らかです。10%への大増税は、失政に失政を重ねる言語道断の暴挙となったのです。

 こうした経緯に照らしても、消費税を5%に減税することは、経済・景気・暮らしを回復するうえで、当然の緊急要求ではないでしょうか。>

 何と私が指摘した通りのことを言い出したのだ。

 消費税がそんなに悪税で、その増税が大災厄を国民の暮らしにもたらしてきたのなら、先の参院選で「増税中止」という8%までなら容認するようなスローガンをなぜ掲げたのか。このよびかけ文には、その釈明が一言も書かれてはいない。真剣に廃止や税率引き下げを考えているのであれば、なぜ誤ったスローガンを掲げたのか、そのことを真摯に分析し、釈明をすべきであろう。

 だが真剣ではないのだ。“今は廃止の方が受ける”という技巧的な対応なのだ。れいわ新選組に学んだということだけだろう。れいわ新選組は、「消費税廃止」を明確に掲げて、予想以上に躍進を遂げた。本来なら共産党が主張すべきことだったのだ。「消費税をなくす会」まで作ってきたのだから。だが負け犬根性が染みつき、現状を大きく打破するような主張をする勇気も度胸もなくしてしまっているものだから、せいぜい現状是認の「増税中止」というスローガンしか掲げられなかったのだろう。

「消費税をなくす会」からして、参院選前には増税中止をメインの主張にしていたのだから、笑止というしかない。

 共産党の急旋回したよびかけ文をどれだけの人が読むか知らないが、真剣さを微塵も感じないようなよびかけが力を持たないことだけははっきりしている。れいわ新選組の山本太郎氏には、真剣さがある。だから大きな共感を呼ぶことができた。共産党が学ぶべきは、この真剣さであり、スローガンを形だけまねることではない。


れいわ新選組との党首会談は実現したが

 9月12日、共産党の志位和夫委員長とれいわ新選組の山本太郎代表との党首会談が行われた。そこでは、以下の合意がなされた。

一、野党連合政権をつくるために協力する。野党と「市民連合」との13項目の政策合意を土台とする。

一、安倍政権が進めようとしている9条改憲に反対する。

一、消費税については以下の点で協力していく。

 1.消費税10%増税の中止を最後まで求める。

 2.消費税廃止を目標とする。

 3.廃止にむかう道筋、財源などについて協議していく。

 4.消費税問題での野党共闘の発展のために努力する。

 この時は、10月からの消費税増税の前なので増税中止ということも入っている。共産党が消費税についての主張を急旋回させたのは、この山本代表との党首会談がきっかけになったのではと推測できる。

 消費税の10%への増税法案を成立させたのは、民主党の野田佳彦政権である。この時期の消費税増税には、他の野党が反対だとしても、立憲民主党も、国民民主党も、元は増税法案を成立させた民主党議員が大半を占めている。容易に消費税廃止にも、税率引き下げにも同調することはあり得ない。

 参院選前は、「増税中止」でとりあえずは野党がまとまることができた。だが増税が実施されてしまった現在では、「増税中止」のスローガンはもはや用済みになっており、これで共闘することはできなくなってしまった。消費税問題での野党共闘は混沌とした状態に陥ってしまったということなのである。


党勢を拡大できない本質的な理由

 共産党は来年1月に第28回党大会を開くことを決めている。またまた「第28回党大会成功をめざす」と銘打った党勢拡大大運動に取り組むそうである。目標は、「しんぶん赤旗」の日刊紙を2万3000人以上、日曜版を12万人以上の増勢に挑戦するそうである。党員は、すべての支部などが1人以上増やすとしている。支部数を公表していないので正確なところは分からないが、ほぼ2万人というところだろう(公表していても、必ずしも正確なものではなく、多めということもしばしばある)。

 ただどうやって増やすかについて、志位委員長が、「『そうはいっても簡単にいかない』という声もあると思います。『大運動』の目標達成が容易でない大仕事であることは事実であります。どうやってこれを成功させるかは探求・開拓の課題です。実践を通じて一つひとつ打開していきたい」と語っているように、成功の見通しはまったく立っていない。何しろ増やす方法をこれから「探求・開拓」するというのだから、大変だ。

 だが党員も新聞も減り続ける原因ははっきりしている。共産主義、社会主義を理想の社会などとは、誰一人思っていないからだ。香港を見れば、どれほど共産党の一党独裁体制に組み込まれるのが嫌なのか、分かるだろう。日本人だって同じだ。ここに目を背けていては、「探求」も「開拓」も不可能だろう。本当は消費税問題よりも、このことこそを真剣に探求すべきなのである。

筆者:筆坂 秀世

JBpress

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