神戸製鋼のデータ偽装 東芝問題と根は同じ「村社会」の弊害

10月12日(木)7時0分 NEWSポストセブン

偽装問題で陳謝する梅原尚人・神戸製鋼副社長(写真/時事)

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 神戸製鋼所が取引先に納入するアルミ・銅製部材などの強度検査データを意図的に改ざんしていた問題は、大手メーカーの品質保証に対する信頼を大きく揺るがす事態に発展している。


 なにしろ、神戸製鋼が10年以上前から組織ぐるみでデータ改ざんに手を染めていた部材は、さまざまな製品に使われていたことが判明した。


 トヨタ、日産、ホンダなど自動車大手7社のクルマ部品のほか、JR東日本の新幹線、三菱航空機の国産初ジェット機MRJ、三菱重工業が打ち上げに成功したばかりのH2Aロケット、その他、自衛隊の防衛装備品にも使われていた。神戸製鋼によれば、供給先は200社にも及ぶという。


 同社は10月8日梅原尚人副社長が開いた謝罪会見で、データの改ざん事実を認めながらも、


〈納入先の(強度やサイズに関する)要求を下回っていたが、日本工業規格(JIS)が定める水準は満たしており、法令に抵触しているわけではない〉


 と釈明した。だが、昨年にもグループ会社でばね用銅線の強度偽装が発覚したばかり。杜撰な品質管理を繰り返す企業がいくら「安全性に問題なし」と強弁したところで、誰が納得するだろう。


「仮に各製品のリコールが起こらず神戸製鋼が損害を被らなかったとしても、失った信用と取引先の受注見直しを考えると、業績に与えるダメージは計り知れない」(証券アナリスト)


 そもそも、今回の問題は神戸製鋼だけに限った話なのだろうか。鉄鋼産業を巡る苦しい環境変化を解説するのは、雑誌『経済界』編集局長の関慎夫氏だ。


「1990年代末に日産自動車のカルロス・ゴーン元社長が『日産リバイバルプラン』を実行して取引先を半減する荒療治を行った結果、NKKと川崎製鉄が合併してJFEスチールが誕生しました。また、インドの巨大メーカーに対抗すべく新日鉄住金ができたりと、鉄鋼業界に再編の嵐が吹き荒れました。


 しかし、中国メーカーの大増産もあって市況は暴落。鉄鋼メーカーはどこも厳しい環境に置かれています。その中にあって神戸製鋼は合従連衡に加われず、スケールメリットを追うことができずに利益も出せないでいました」


 確かに神戸製鋼は2017年3月期まで2期連続の最終赤字に喘いでいる。そこで、起死回生の「戦略部門」として強化中だったのが、銅・アルミ事業だ。


「自動車の燃費・環境問題の一番の近道はクルマの軽量化であり、1台の車に使用されるアルミの量は増え続けている。神戸製鋼はアルミ部材の競争力を維持するために、5月に日本と韓国で550億円にのぼる大型投資を決断した。


 しかし、どうしてもアルミは鉄に比べて強度が足りないため、軽くて丈夫なアルミ製品に対する自動車メーカーの要求は年々激しくなっていた。会社上層部からは、取引先の要求を満たす製品の製造を厳命される。そのプレッシャーがデータ改ざんの恒常化へと結びついた」(全国紙記者)


 梅原副社長も会見で不祥事の原因を問われ、〈納期を守り、生産目標を達成するプレッシャーがあった〉と述べている。会社の生き残りや同業他社との納入競争に固執するがあまり、「多少数値をいじってもクレームがこなければ……」という雰囲気が組織全体に蔓延していたことは容易に想像できる。


 まるで“チャレンジ”と称して現場の事業部門に過剰な業績改善を要求していた東芝と同じ構図だが、前出の関氏は「村社会の形成という点で根は同じ」と指摘したうえで、こういう。


「会見で副社長も話していましたが、神戸製鋼では、従業員が一度ある工場に配属されると、その工場で長年働き人事異動もない閉鎖的な環境が築かれていたといいます。つまり、工場で働く人がひとつの家族であり、村社会だったのです。


 こうなると、外部のチェックが入ったとしても内部で一致団結して工場を守ろうとしますし、たとえコンプライアンス上、問題があってもそこで働く社員にとっては、その中の正義こそが絶対なのです。ヤクザの世界と一緒で、親分が白といえばカラスも白くなる。それが組織の一体感を維持する秘訣でもあったのでしょう」


 関氏は、程度の差こそあれ、多くのメーカーは神戸製鋼や東芝と似たような問題を抱えていると話す。


 今後、神戸製鋼の問題がどこまで広がるかは予断を許さないが、直近では日産の「無資格検査」も発覚したばかり。これ以上、名だたるメーカーの不祥事が続けば、それこそ「メイド・イン・ジャパン」の信用力は地に堕ちる一方だ。

NEWSポストセブン

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