小泉進次郎・東京都知事を画策する小池百合子

10月13日(金)6時0分 JBpress

東京都の小池百合子知事。(c)MODE PRESS/Yoko Akiyoshi 〔AFPBB News〕

文中敬称略

 「最も高い『ガラスの天井』を打ち破ることができなかった。でも、誰かがきっと打ち破るでしょう。思った以上にその時が、早く訪れることを願っています」

 希望の党代表の小池百合子は、昨年11月、米大統領選でそう敗戦の弁を述べたヒラリー・クリントンと自分を比較するのが大好きだ。

 昨年7月の都知事選に圧勝し、女性初の東京都知事に就任した小池は、米CNNのインタビューでもヒラリーの弁を例に挙げ、「日本の場合、ガラスの天井というより、“鉄”の天井。(米国より)もっと固く、差別的で、打ち破るのは相当大変だ」と強調。

 自分の挑戦はヒラリーより困難だと、あえて誇らしげに言っているように見えた。


画像にはっきり映る小池の野心

 総裁選の前哨戦とも捉える都知事選で“鉄”を打ち破ったと、満面に笑みを浮かべ、画面の向こうの世界の視聴者に、“自分ファースト”のお得意パフォーマンスを展開した。

 テレビはリアルだ、とよくいう。画像というのは、時には、何千の言葉より、鮮明にその真意を映し出すと言われるからだ。テレビ出身の彼女が、得意とする“技量”でもある。

 そう、将来的に日本の政治家のトップを狙おうとする小池の大いなる野心がギラギラ映し出されていた。

 彼女は放送、筆者は活字で、同じメディアでも、世界はまるで違う。しかし、メディア界の先輩として、それこそ中国の台頭を目の前に、日本の国力を上げ、「頑張って世界を引っ張ってほしい」。まずは首都の東京から、と願っていた。

 しかし、その願いは落胆とともに消え去られた。豊洲市場移転問題をはじめ、「改革」を最優先に掲げたものの、ある市民団体の代表は次のように怒りをぶつける。

 「都議選を前に、決められない批判をかわし、選挙戦を有利に運ぶための“選挙ファースト”の『豊洲移転、築地再整備』の方針を打って出て、財源確保の保証もないまま、都民や市場関係者を雲にまき、大勝利」

 「さらに、民主的合意形成はスピード性に欠けるといえ、情報公開どころか密室で、しかも独断で、過去の知事の責任追及を示すことで、自らの対応への批判をかわすなど、小池さんは『東京大改革』というよりか、あえて保身のため、都政を混乱させることに終始していたようにも見えた」

 今回、都知事の仕事に専念し、衆院選の出馬を断念し、自らが首相になるという小池の夢が打ち砕かれたことは、彼女にとって、決してマイナス面だけではない。

 今後の首相の座争奪戦で、政界も大手メディアも女性排除思考が強く台頭することを再認識させられ、かえって仕切り直しの知恵やヒントを得たことだろう。

 打たれ強い彼女は、「政界の渡り鳥」と揶揄されようが、その逆境を肥やしにして、ここまで登り詰めてきた。

 はっきり言って、人気に匹敵する政治家としての実績や手腕はまだないが、伏魔殿のような政界で、”女・一匹”、 鋭い嗅覚でもって力の向くベクトルを嗅き分けなければ、とっくの昔に自滅していただろう。

 しょせん様々なしがらみを抱える男性には、困難なウルトラC級の技で、躊躇せず決断と行動が伴う小池への男社会からの羨望とねたみが渦巻いている表現ともとれる。

 なので、当然、こんなことで諦めるような彼女ではない。

 小池の野心は相当なもので、もしかしたら男性以上かも。余談になるが、自分の分身のように愛玩している愛犬も「総ちゃん」。老犬だが、総は小池が、「総理」から命名したぐらいだ。長年の夢を実現させるためなら、手段を選ばない。


小泉純一郎元首相との“蜜月”を装う

 希望の党立ち上げの発表には、仲間を呼ばず、異例にも1人で記者発表を行った小池。その直後には小泉純一郎元首相と会談。「頑張れ、と励まされた」(小池)。

 衆院選に出馬するのかと、当時も、後にもメディアから再三聞かれたとき、「小泉さんから、都知事をしっかりやれと言われてますから」と否定。政界引退後の今も、国民から高い人気を誇る劇場作りの生みの親、小泉元首相にあやかれとばかり、“蜜月”を装う。

 しかし彼女の視線の先は、もはや22日の総選挙ではない。

 その向こうには、小泉元首相ではなく、国民の「次期首相候補アンケート」で必ずトップに君臨する政界のプリンス、小泉進次郎がいる。

 公示の10日、この2人は、東京10区を選挙戦遊説の「第一声」の地に選んだ。自民党の得票獲得を握る「選挙の顔」、小泉進次郎は、希望の党代表の小池の地盤に殴りこみをかけた。

 池袋駅東口の街頭演説で、開口一番。「小池さんに心から感謝したい。希望の党のおかげで、『真の希望』とは何かを考える機会をくれた」と話した。

 「自民党に、野党時代の苦しさを忘れてはいけないと、もう1度思わせてくれた。次の選挙ではなく、次の時代のことを考える戦いにしたい」と、意味深なコメントを披露する一方で、小池への痛烈な批判を展開した。

 この日の同駅街頭演説は、進次郎に軍配。進次郎の応援陣営は、小池のそれをはるかに上回っていたからだ。

 選挙という選挙を新聞記者時代に取材してきた筆者が知る限り、有権者の動向を判断する第1関門が、公示後の第一声。

 候補者はまず、選挙地盤である地元で派手にアドバルーンを挙げる。しかし小池にはかつての勢いはなかった。

 小池の地元でさえ、かつてのような希望を抱かなくなってしまった。走り出したら止まらない天然色が強い小池も、今回だけは元首相のアドバイスを受け入れ、都知事にとどまるという。小泉パパは胸をなでおろしているだろう。


オリンピック直前に切れる任期

 これまで都知事がコロコロ変わってきた東京。小池に投票した都民は、「改革」の中身もさることながら、今度こそは任期を全うする知事を、と小池に期待していたからだ。

 都知事に専念し、当面は世界的にも注目を浴び、自身にとっても政治家として格好の実績アピールが期待できる2020年の東京オリンピックの準備に奔走するだろう。

 願わくば、この成功で次期首相待望論の世論の追い風を再び自分に向けたいところだが、そうは簡単に問屋が卸さない。

 実は、小池の知事任期は、2020年の7月に切れる。オリンピックは7月から9月開催なので、五輪前に都知事選が訪れる格好だ。

 不祥事やスキャンダルに巻き込まれなければ、再選されるだろうが、そうなるとすぐさま辞任というわけにはいかない。

 オリンピックの開会式で知事としての存在感を内外に示すために、知事再選を目論んだと批判されるだけでなく、それどころか、政治家としての評価は急降下し、年齢的にも政界引退の危機を迎えることになる。

 さらに厄介なのは、現在65歳の小池が知事2期を全うすると、72歳。まだまだ、若いと言うだろうが、「改革」や「新鮮」が売りの小池にとって、これまでのような力強さを持ったイメージ作りには老いが待ったをかけるだろう。

 そこで奇策の好きな小池は考えるだろう、さらなる劇場は、小泉は小泉でも“進次郎劇場”だ。

 知事選の2020年7月までには、オリンピックの準備は整っているはず。衆院選がいつ行われるかは分からないが、まずは知事選の辞退は避けなければならない。

 小池としては、人気の進次郎に知事選で立候補してもらえれば、五輪開催に向けて、トップ若返りで「潔い小池」と評価が意外に高まるのではないか。

 高齢化が著しい政界の刷新イメージを世界にもアピールできるので、日本にとっても悪い策とは思えない。問題は、普通に考えてあの進次郎が受け入れるとは考えられないことだ。


小泉進次郎・東京都知事が誕生?

 しかし、進次郎は人気はあるとはいえ大臣経験もなく、政治家としての経験はまだまだ浅い。弱冠36歳。海外では、40歳前後で国のトップに就任するケースがあるが、バックに父親の存在があるといえども、自民党総裁のポストを得るのは容易ではない。

 一方、財政が欧州の一部の国を上回る巨大都市・東京を率い、世界に名を馳せるチャンスの五輪を成功させれば、行政経験に、政治家として、リーダーとして、付加価値がつく。

 遠回りのようで、内外で国のトップになり得る経験や素養を育むチャンスで、意外に近道かもしれない。

 ここにきて都民ファースト設立時の主要メンバーが小池批判で離党するなど、誤算続きの小池。改革派を自称してきたが、今後は、その中身、真価が問われる。

 女・一匹でなく、頼れるブレインを発掘し、国政のモデルとなるよう、目立つところだけでなく地味な行政事業にも労力を注ぎ、政治家としての実力を磨き、発揮してほしいものだ。

 「人生は賭けみたいなもの、浮き沈みが激しく、戦いである」

 石油商の父からそう教わって、「安全なところ、安心なところは嫌いだ」と豪語する。時として、大きな賭けに挑んできた小池。女性初の首相を目指すか、女・小沢のように政界のフィクサーに成り上がるか。

 小池がここ数年、投じた一石が、ガチガチの硬直した政界をジリジリ動かし始めているのは事実。小池新党の綻びが表面化し、これまで小池を持ち上げていたメディアは一変して今度はバッシングに興じている。

 "左に右に "・・・。小池が信用できないというメディアこそ、信用できない。日本の政界刷新、小池が評価されるところもあるのではないか——。

筆者:末永 恵

JBpress

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