アマゾンの"法人通販"は業界を破壊するか

10月13日(金)9時15分 プレジデント社

『図解!業界地図2018年版』(ビジネスリサーチ・ジャパン著 プレジデント社刊)

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9月20日、アマゾンがついに日本で法人向け購買専用サイトを開始した。米国では2015年にスタートしており、日本は4カ国目。アスクルやMonotaRO(モノタロウ)など競合する日本企業に大きな影響が見込まれる。法人向け通販業界はアマゾンに破壊されてしまうのか。『図解!業界地図2018年版』(プレジデント社)の著者が分析する——。

■日本勢を圧倒するアマゾンの品ぞろえ


ネット通販世界最大手の米国アマゾン・ドット・コムが、日本での「BtoB」ビジネスを本格化させる。個人向けの「BtoC」では大きな変革をもたらしてきただけに、企業向けの「BtoB」でも同じことが起きる可能性がある。そうなればアスクルやMonotaRO(モノタロウ)などの日本企業の業績にも大きな影響を及ぼすことになる。


アマゾン・ドット・コムは1995年の創業以来、世界各地に物流センターを設置するなど規模拡大に邁進。現在、世界で運営している物流センター・カスタマーサービスセンターの広さは1億8000平方フィート(約1670万平方メートル)を超す。三井不動産、三菱地所、住友不動産の3社合計のビル貸付面積、およそ1000万平方メートルを上回る規模である。


アマゾンの16年12月期の売上高は約15兆円、総資産は9兆円を超す。キャッシュの獲得力を示す営業キャッシュフロー(CF)も2兆円に迫る。売上高と営業CFに限れば、イオンとセブン&アイ・ホールディングス(HD)の合計を上回る。


世界の最先端を走るべく投資を先行してきた企業だけに、各種の利益率は低水準にとどまり、最終赤字(純損失)も珍しくはなかったが、1兆3500億円まで売上規模を拡大させてきたクラウド事業(アマゾン・ウェブ・サービス事業)が、確実に利益を生み出すようになってきた。


日本における売上高は、米国、ドイツに次ぐ。推移は8703億円(14年)、9090億円(15年)、1兆1876億円(16年)と右肩上がりだ。17年1月〜6月の半年決算でも、世界売上高は20%を超す伸びを示しており、日本での販売も同じ上向き傾向を示していると見ていいだろう。



そのアマゾンが、法人向けの購買専用サイト「アマゾンビジネス」の運用を今年9月から日本で開始した。15年にスタートした米国ではすでに、100万社以上の顧客を獲得。16年にはドイツ、17年4月には英国で開始しており、日本は4カ国目である。



アマゾンの競争力の源泉は「2億種」といわれる圧倒的な品ぞろえだ。さらに低価格や即日配送などの利便性も提供する。それに加え、アマゾンビジネスでは、文具・オフィス用品などの販売で「数量割引」「月末締めの請求払い」といった新しいサービスを提供することで、法人客の囲い込みを狙う。


■アマゾンは1000円売ると30円儲かる


法人向け通販に本格参入したアマゾンと真っ向から競合する日本企業はアスクルだろう。同社はアマゾンとは対照的に、オフィス用品の翌日配送サービスというBtoBでスタート。現在はヤフーの子会社で、この数年は個人向けの「LOHACO」事業を本格化させている。


法人向け通販では、大塚商会がオフィス向け通販事業「たのめーる」、コクヨが通販事業子会社のカウネットを展開していて、これらへの影響も想定される。直近の年次決算における売上高は、アスクル3359億円、「たのめーる」事業1460億円、カウネット938億円だ。


専門通販を手がけるモノタロウやミスミグループ本社も競合となる。モノタロウは工場で使用する消耗品や補修用品などの通販事業が主力。ミスミは生産現場での標準品や金型部品などを手がけるメーカーであるとともに、ねじやボルト、切削工具など製造業向け製品の通販事業を展開している。売上高はモノタロウが696億円、ミスミが2590億円である。


ここで各社のビジネスモデルをわかりやすく捉えるため、アマゾン、アスクル、モノタロウ、ミスミについて、1000円の商品販売にたとえた収支を確認してみたい。



アマゾンの場合、1000円の販売で獲得する儲け(営業利益)は30円である。ただし、全体売上高のおよそ7割を占める商品の通販(仕入商品による販売)事業に限れば、35円程度の儲けになっていたようだ。


アスクルの儲けは、1000円の販売につき26円。売上高が1889億円だった10年5月期以降、連続増収を維持しているが、利益率は低い水準にとどまっているのが現実だ。



モノタロウは米国企業のグレインジャーの子会社。グレインジャーの売上規模は1兆1000億円とアマゾンには遠く及ばないが、日本で米国企業同士が競合していると捉えていいだろう。モノタロウの営業利益は、1000円の商品販売につき100円を超す。最大の要因は、アスクルより仕入負担割合が軽いことだ。アスクルの場合、1000円の商品の仕入代金は755円についているが、モノタロウはそれよりも100円以上安い600円台前半である。


■規模や商品点数では勝負にならないが……


ミスミは、1000円の販売で100円を超す営業利益を実現している。中国や韓国、ベトナムなどに生産設備を構えているように、自社生産もあるため原価率が低くなっているからだ。

ミスミの原価率は60%を切る。




『図解!業界地図2018年版』(ビジネスリサーチ・ジャパン著 プレジデント社刊)

物流施設の拡大に向けて、アスクルは埼玉県入間市と大阪府吹田市に合計で190億円、モノタロウも茨城県笠間市に90億円を新たに投資する。ただし、設備投資などへの実際の出金を示す投資CFの比較でいえば、1兆円を突破しているアマゾンとは比べようもない。


規模の拡大や配送のスピード化、商品点数といった正面からの戦いではアマゾン有利は動かない。それだけに、競合他社にとっては別の土俵での勝負や付加価値の提供がポイントになる。


たとえば、アスクルでいえば、これまで培ってきた販売代理店(エージェント)制度のさらなる活用である。顧客の開拓や集金業務などを担うエージェントは、約1400社を数えるという。


仕入先企業との間でリアルタイムにマーケティング情報を共有し、売れ筋商品の迅速な開発や欠品回避も重要なテーマになるだろう。



(ビジネスリサーチ・ジャパン代表 鎌田 正文)

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