新型カローラ 「日本専用設計」はこの12代目で最後か

10月14日(月)7時0分 NEWSポストセブン

トヨタ自動車の新型「カローラ」(時事通信フォト)

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 マイカーを持ちたいという日本の庶民の夢をかなえるクルマとして1966年に生まれたトヨタ自動車の大衆車「カローラ」。その12代目となるモデルが9月に発表された。ボディはセダンおよびツーリングと称するステーションワゴンだが、この新型カローラは、日本のユーザー向けに作られた“最後のカローラ”になるかもしれない──と指摘するのは、自動車ジャーナリストの井元康一郎氏だ。


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 カローラの日本向けモデルは前世代モデルにあたるセダン「カローラアクシオ」およびステーションワゴン「カローラフィールダー」まで車幅が1.7m以内の、いわゆる5ナンバーサイズに収められていた。


 それに対して新型はボディサイズが大きい海外向けのカローラとクルマの基本部分を共有するため、セダン、ワゴンとも全幅1745mmの3ナンバーボディへとサイズアップを余儀なくされた。昨年発売したハッチバックの「カローラスポーツ」とあわせ、シリーズすべて5ナンバーを逸脱することとなった。


 だが、これでも今回のセダンとワゴンは、カローラスポーツの1795mm幅に比べるとナローボディだ。カローラスポーツは欧州を主体に販売されるグローバルモデルをほとんどそのまま日本に投入したものであるのに対し、ワゴンとセダンは海外モデルとは別デザインの日本専用設計である。


 ボディサイズは広がったが、左右ドアミラーの両端の間隔はカローラアクシオ/フィールダーとほぼ変わらない。全長はセダン、ワゴンとも4.5mと、アクシオ比で10cm増に何とか収めた。ホイールベース(前後輪の中心の距離)は2640mmで、海外向けのカローラより60mmも短く、カローラスポーツと同じである。3ナンバーサイズにはなったが、5ナンバーに慣れた顧客に最大限配慮した設計といえる。


 今日、カローラがバカ売れしているのはアメリカと中国だ。カローラスポーツのように海外規格のモデルを持ってくれば、日本でのフルモデルチェンジは簡単な改設計ですむ。現に、ホンダ、マツダ、スバルなどはとっくにそうしている。


 トヨタもそうしたいのはヤマヤマだったに違いない。何しろトヨタは今後、グローバルでの販売車種数を大幅に減らす計画であることを公表しているのだ。いくらクルマの基本部分を共用化するとは言っても、サイズや仕様がオリジナルだと開発の手間は相当かかる。にもかかわらず、このタイミングでわざわざ日本専用のモデルを作ったのはなぜか。


「おそらくこれは、カローラにとって日本における最後の賭けなのだと思います」と、トヨタの技術系幹部の一人は言う。


「すでに広く知られていることですが、日本ではカローラはすでに、法人と高齢者のためのクルマになっています。ユーザーの若返りはモデルチェンジのたびに課題になっていたのですが、ほとんど効果がなかった。


 このまま行くと遠くない将来、平均年齢がぼちぼち免許返納を考えるくらいまで上がってしまう。そうなったら日本ではカローラもいよいよおしまいです。そうなる前にもう一度、若返りを図ることにトライするのが、今回のカローラの使命なのだと思います」


 創業80年を突破したトヨタはその歴史の中で多くのクルマを作ってきたが、昔ながらのブランドはもういくらも残っていない。その中でカローラは、オフロード4×4「ランドクルーザー」や貨物車「ハイエース」と並び、これからも残っていくであろう鉄板のブランドだ。が、それはグローバル市場での話。日本ではこのまま消えてしまっても、もはやほとんどの人が困らないクルマになっている。


「難しいのは、単にクルマを格好良くしたり高性能化したりすれば客足が戻るわけではないということです。


 若年層にとってカローラは、そもそも名前を知らないか、会社の営業車やシニア向けのクルマといったネガティブイメージを持っているかのふたつにひとつ。いきなりクルマのキャラクターをガラリと変えて、既存の顧客を逃がし、新しい顧客は付かないということになったら目も当てられません。


 ボディの肥大化を何とか最小限にしつつ性能やデザインを刷新して、既存顧客と新規顧客の両取りを狙おうとしているのでしょう」(トヨタ系販売店幹部)


 クルマの成り立ちを見ても、サイズ面で既存顧客のカローラ離れを防止しつつ、デザインや仕様で若返りを図っているという意図が顕著に表れている。


 今回発表されたセダン、ワゴンは先に述べたように、クルマの基本部分の多くを共有する海外版カローラやハイブリッドカー「プリウス」よりホイールベースが6cm短い2640mm。道路や駐車場の狭い日本での取り回し性という点では5ナンバー時代のカローラに近い良さを維持している半面、車内は狭くなった。


 旧型にあたるカローラアクシオ/フィールダーは2600mmだが、こちらはサブコンパクトクラスの「ヴィッツ」との共通性が色濃く、エンジン搭載部分が短いため、車内はこちらのほうがずっと広い。


 クルマの仕様もこれまでのカローラとはまったく異なる。その最たるものは、後席の乗降性だろう。これまでのカローラはとにかく乗り降りがしやすいようにというのがボディ設計の最重要項目のひとつだったのだが、新型カローラでは乗降性の優先度が大幅に下げられたものと推察される。


 屋根が後ろ下がりになっているのに加え、ドアとボディの重なりが大きく、普通の体格でも乗り込みには結構身をかがめる必要がある。お年寄りがリアシートに乗り込むのは、アクシオ/フィールダーに比べればあきらかに難儀だろう。


 また、備え付けのディスプレイオーディオは光ディスクスロットなどが省かれ、任意の音楽を聴くにはBluetoothで接続されたスマホ内のミュージックファイルを再生したり、Spotifyなどのストリーミング配信を利用したりする必要がある。


 このように、サイズ面では従来の5ナンバーユーザーに配慮しながら、中身は若年ユーザーの好みにガッツリと寄せられた新型カローラ。性能面ではどうだろうか。


 本稿執筆時点では筆者はセダン、ワゴンとも本格的にテストドライブしていないが、クルマの基本部分を共有しているハッチバックのカローラスポーツを500kmほど走らせてみたときの印象に照らし合わせると、アクシオ/フィールダーとは比べ物にならないほど上がっていることは容易に想像がつく。


 新しいカローラ族は、トヨタのクルマづくりの新規格「TNGA」のコンパクトクラス向け技術セットで作られている。つまりプリウス、「C-HR」などと共通性が高いのだが、カローラスポーツはその中でもクルマの完成度が1段階高い印象だった。


 単なる速さだけでなく、スポーティな走りをしてもクルマの動きが落ち着いているのが特徴で、S字カーブでステアリングを切り戻すときもクルマのテールが変にブレたりぐらついたりすることが非常に少ない。また、舗装の補修跡が段差になっている箇所などでも、ボディのビビりやガツンという突き上げは最小限だった。


 ドライビングインフォメーションが希薄であることをはじめ欠点もあるにはあるが、それでも競争の激しいグローバルCセグメント(フォルクスワーゲン「ゴルフ」などのクラス)において、相当ハイレベルな部類に入ることは間違いない。


 セダン、ワゴンはカローラスポーツよりナローボディだが、走行性能を決める重要なファクターであるトレッド(左右輪の距離)はカローラスポーツとほとんど変わらないため、同じような特性を持っているものと考えられる。


 また、比較的車両価格の安いグレードに最高出力140psのパワフルな1.8リットルエンジンを搭載するなど、クルマを魅力的にするという点ではカローラスポーツ以上に腐心している痕跡が随所に見られる。こういった仕立てはひとえにユーザー層の若返りを目的としたものと言える。


「これでもユーザー層の若返りが果たせるかどうかは未知数。昨年出たカローラスポーツでは若年層もある程度取り込めたので、若者にカローラは絶対受け入れられないわけではないということはわかりましたが、若年層はセダンはまず買いませんし、ワゴンを買うお客様はSUVに流れている。


 どうしてもカローラでなければという決定的な訴求力があるかというと、依然として弱い」(首都圏のカローラ店首脳)


 トヨタは新型カローラ発売後も、5ナンバーのアクシオ/フィールダーをしばらく継続販売するという。そうした“保険”がありながらも、セダンとワゴンを日本専用に用意したトヨタの心意気がユーザーに響くかどうか、興味深いところだ。

NEWSポストセブン

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