中国空軍:異常で危険な飛行と領空侵犯の全貌

10月16日(金)6時0分 JBpress

中国空軍の戦闘機や戦闘爆撃機が東シナ海で危険な行為を続けている(写真は中国の戦闘爆撃機JH-7、2020年9月3日撮影、China Militaryより)

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 中国空軍は、東シナ海から南シナ海で、国際規範を無視して無謀で危険な飛行を繰り返し行っている。

 この危険な飛行は、主に我が国の領土である尖閣諸島上空を含む中国の防空識別区と日本の防空識別圏が重なり合う空域で行われている。

 ここで、中国の海空域であるかのように振る舞い、他国の飛行の自由を妨げるような行為をしているが、これは違法だ。

 中国軍は近年、軍事戦略上定めている第一、第二列島線、さらに中国本土から遠方での作戦能力構築を目指している。

 特に、第一列島線と重なるわが国周辺空海域では、訓練、演習、情報収集を頻繁に行っている。海軍艦艇、海・空軍機、中国海警局所属の公船や航空機など多数が確認されている。

 この活動には、中国公船によるわが国領海への断続的侵入や、領空侵犯、自衛隊艦艇・航空機への火器管制レーダー照射や戦闘機による自衛隊機・米軍機への異常接近などが含まれ、不測の事態を招きかねない。

 国際規範を無視した危険な行為を伴うこともあり、強く懸念される状況となっている。

 これらは、お互いが領域を主張する空域で行われているもので、中国空軍は、やめることなく、ひたすら継続している。

 もし、接触する危険性を回避するために、日本がこの空域から引き下がれば、中国は前に出る。そして、いったん進出したところから引き下がることはない。

 この結果、中国の領域が太平洋側に押し出され拡大される。中国が領域を拡大するための一環として行われている典型的な手法だ。

 現場では、航空自衛隊(空自)が極めて厳しい緊張感をもって直接これらに対応しているのである。

 中国は、どのようにして空領域拡大の実績づくりをしているのか。

 このために、中国軍機が、どのように、無謀で危険な飛行を行っているのか。

 そして、日本として中国軍にどのように対処すべきなのか。

 これらについて事例を紹介しつつ考察する。

抜け目ない国際法違反:
飛行の自由を妨げる防空識別区の設定

 尖閣諸島周辺においては、2012年12月に中国国家海洋局所属の固定翼機が中国機として初めて、わが国の領空を侵犯する事案が発生した。

 その後も同局所属の航空機が、我が国領空への侵犯や接近飛行を繰り返している。

 中国は2013年に、尖閣諸島の上空までもカバーする「防空識別区」を身勝手に設定した。

 防空識別圏(区)(ADIZ)というのは、飛行する航空機などの敵味方を識別して監視する空域であり、国際法上確立したものではないが、日本、米国、カナダをはじめとする諸国により設定されてきた。

 これは、航空機がADIZに侵入した場合には、飛行計画の提示が要求されるが、識別に当たっては強制措置を伴うものではない。

 だが、中国はさらに「東中国海防空識別区航空機識別規則」を公示して、指令に協力しないか従わない場合には、「防御的緊急措置」をとる旨を加えて規定している。

 だが、この規定は、公海やEEZ上空における飛行の自由を妨げるものであり、適用された場合には、国際法上の違法行為となる。

 近年、中国空軍は、グラフにあるとおり尖閣諸島周辺を含むわが国周辺海空域における活動を活発化させている。

 そして、行動を一方的にエスカレートさせる事案など、大きな懸念材料となっている。

 空自による日本に接近する外国機への緊急発進(スクランブル)の回数は、2019年度(令和2年度)947回を記録し、その内、中国機は675回と70%を超える。

 平均すると、1日に2回、毎日実施されている状況である。

航空自衛隊年度別緊急発進回数の推移


空自機への無謀で危険な飛行

 日中空軍機が重大な事故が発生しそうだったのは、2014年の5月と6月、東シナ海の公海上空で空自の電子情報収集機「YS-11EB」と海上自衛隊(海自)の画像情報蒐集機「OP-3C」が、中国空軍の戦闘機「Su-27」(中国名「J-11」)フランカー の2機による異常な接近を受けたことだ。

 最も接近した距離はOP-3Cに45メートル、YS-11EBには30メートルであり、これまで経験したことのない中国軍機とのニアミスだった。

 小野寺五典防衛大臣(当時)は、この異常接近について、「常軌を逸した近接行動だ」、さらに自衛隊機が撮影した該当機が「空対空ミサイルを携行していた」と指摘し、極めて強く批判した。

 空自関係者数人からヒアリングしたところによると、「中国軍戦闘機が日本の情報収集機に、後方から猛烈なスピードで接近して追い越していった。極めて危険な行為であった」というものであった。

中国軍機が空自機を追い越す危険な飛行のイメージ

 一方、中国は映像を公開し、日本の「F-15」戦闘機が中国軍機「Tu-154」に30メートルまで近づき追尾したと主張。

「挑発したのは日本側だ」「日本が中国の軍事的な脅威をあおり、国際社会を欺いて中国軍のイメージを損なわせ、地域の緊張を作り上げている」と日本を批判した。

 空自の戦闘機がスクランブル機に接近する場合、目標機に近い速度で影響を与えないように、当該機の横約600メートルまで接近し、離脱するまで、同じ速度で飛行する。

 衝突事故が発生しないように慎重に行動するという。

空自の慎重・安全な接近飛行(イメージ)

中国国防省が日本機が接近してきたとする映像をHPで公表

 中国が公表した映像を見ても、空自の安全で慎重な状況が見て取れる。

 ところが、中国は、日本の戦闘機の映像をズームにして映し出し、接近しているように見せかけたのだった。

 この映像にごまかされた日本のメディアは、中国批判のトーンを落としてしまった。

 空自が公表したものは写真であり、動画映像ではなかったために、強く非難する材料にはならなかった。

 今後、各自衛隊は中国のプロパガンダに押し切られないように、動画映像を撮影して証拠を掴み、外交の場に持ち込み、強く批判すべきだ。


米軍機にも危険な異常接近

 米軍の電子偵察機「EP3」は2014年5月に、南シナ海の公海上空で、中国軍戦闘機のSu-27(殲11)× 2機から約15メートルまで異常接近された。

 米統合参謀本部議長(当時)のデンプシー陸軍大将は「東シナ海上で米軍機が中国側の異常接近を受けている」と、日本メディアとの単独インタビューで明らかにした。

 中国外務省は「安全な距離を保っており、危険な行動は取っていない」と反論した。

 東シナ海の公海上空で、6月にも同様のことが発生した。

 警戒監視活動をしていた米太平洋軍の電子偵察機「RC135」は6月に、中国軍のJ-10(殲10)戦闘機に異常接近された。

 米太平洋軍は声明で「不適切な操縦」と非難、外交ルートや軍同士で懸念を伝えた。CNNテレビは国防当局者の話として、両機は30メートル程度まで接近したと伝えた。

 中国軍戦闘機は米偵察機に迫ってくるかのように高速で飛行したという。中国軍機は、空自機に対することと同様に、無謀で危険な飛行を行った。

 ただ、中国は、米軍機の行動に対しては、自国機の正当性を述べるだけで批判していない。中国は米軍に対しては、弱腰なのだ。


危険な戦闘機に加え無人機も投入

 中国軍は偵察や情報収集などを目的に高高度長時間滞空無人機(High Altitude Long Endurance HALE)や、ミサイルなどを搭載できる翔竜という無人航空機(Unmanned Aerial Vehicle UAV)を開発している。

 そして空軍には攻撃を任務とする無人機部隊があり、周辺空海域などの偵察などのために、無人機を投入している。

 2017年5月、尖閣諸島周辺のわが領海侵入中の中国公船上空において、小型無人機らしき航空機が飛行しているのが確認された。

 このような小型無人機らしき物体の飛行であっても、当然、領空侵犯に当たるものだ。

 無人機であることを慎重に確認判定し、厳しくクレームをつけるだけではなく、最悪の場合は、無法に侵犯する飛行物体として、「撃墜」という選択肢も行うのだということを中国側に見せつけるべきであろう。

 このように、ほかにも中国軍の無人機の我が国領空への接近飛行事例は、多くあると見られるが、防衛省・統合幕僚監部から情報が公開されていないので不明である。


証拠を突きつけて強く非難すべし

 中国空軍は、ロシアから導入した戦闘機を多数生産し、空軍力の増強に努めてきた。

 現在、近代的戦闘機数が日本の4倍になり、空中警戒管制機を導入するなど総合的な運用システムも逐次整え、日本の空自との空戦に自信をつけつつある。

 南シナ海では、歴史や国際法規を無視して9段線を設定し、その内の小さな岩礁を占拠し、埋め立て、基地を建設した。

 習近平主席は、南シナ海を軍事基地化しないと発言していたが、今年の7月には、中国軍戦闘機8機や爆撃機を西沙諸島のウッディ島の滑走路に展開するまでになった。

 東シナ海では、日本の領土の上空を含み、日本の防空識別圏と重なっている範囲を身勝手に防空識別区として設定した。

 そして、戦闘機に掩護された爆撃機、情報収集機が南西諸島にある宮古海峡上空を突っ切って、一つは西太平洋に進出し、その一部は台湾に模擬攻撃を仕掛けているのである。

 中間線付近では、近づく空自や米軍機に対して危険な位置まで接近し、無謀で危険な飛行を繰り返して、日米機を追い返そうとしているのである。

 最近際立つのが、我が国近傍での海空軍による統合訓練とロシア軍との共同訓練である。

 これらが、日中中間線を越え、領空を何度も侵犯して行われることによって、海空の領域拡大の既成事実化につながるのである。

 これらすべての動きを積み重ねることは、日本の空でも、領域を拡張するための動きの一貫と見るべきであろう。一触即発の危機をはらみ、注意が必要である。

 我々が現役自衛官であった頃、朝鮮半島では米韓合同演習が毎年実施されていた。この演習に対し旧ソ連軍機が、演習の実態を偵察するために、連日日本海を飛行していた。

 旧ソ連が偵察飛行を実施している間、空自と米空軍は、間隙のないスクランブルで対処していた。

 絶対に日本海をソ連海にはさせない、自由にはさせないという姿勢で、発進、発見、接近、識別、状況の確認飛行を北海道沖から九州まで、24時間途絶えることなく厳格に対処していた。

 現在はどうなのか。中国軍に対しては、旧ソ連軍機に対応したように、隙間のない対応を採るべきである。

 日本の戦闘機2機だけで、接近してくる中国軍機の状況確認に向かうのでは、抑止力としては不足であり、危険な事態が発生した場合、その対処は難しい。

 日本の保有戦闘機を西にシフトさせ、東シナ海に睨みを利かせ、異常接近があった時には、いつでも全力投入で中国軍機を圧倒すべきである。

 また、地上のレーダーサイト、早期警戒管制機、早期警戒機も警戒監視へ増強投入できる姿勢を見せるべきである。

 最も効果的な対処法は、日米軍機が共同で中国軍機に接近し、日米同盟の力を見せつけることだろう。

 やられたらやり返す、という手法では紛争へのエスカレーションラダーを一気に駆け上ってしまう。

 外交と国防では、日米が足並みをそろえて対応していくことだ。

 東シナ海では、「中国軍機を日中中間線から中に入れない、中国軍機に無謀で危険な飛行をさせない」という日本の強い意志を見せつけるべきだ。

 日本は、沈黙することで問題を際立たせないという姿勢であってはならない。

筆者:軍事情報戦略研究所朝鮮半島分析チーム

JBpress

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