サムスン、「総帥不在」の中、大規模刷新人事へ

10月19日(木)6時10分 JBpress

韓国サムスン電子の権五鉉・最高経営責任者(CEO)。ソウルで(2016年10月27日撮影)。(c)AFP/SeongJoon Cho〔AFPBB News〕

 2017年10月13日、サムスン電子の代表理事である権五鉉(クォン・オヒョン=1952年生)副会長が、辞任する意向を明らかにした。これを機に韓国メディアは一斉に、グループ全体で大型刷新人事が必至だと報じている。

 問題は、「総帥不在」の中で、いったい誰が人事を決め、誰がグループのリーダーとなるのかが、見えないことだ。

 「かなり前から考えてきたが、これ以上、引き延ばすことはできないと判断した」

 権五鉉副会長は、社内メッセージでこう説明した。


半導体躍進の功労者

 権五鉉副会長は、サムスン電子の代表理事(代表取締役に相当)、理事会議長、最大の稼ぎ頭である半導体部門(DS部門)の部門長と液晶などを手がけるサムスンディスプレーの代表理事などを兼務する。事実上のサムスン電子のCEO(最高経営責任者)役割を務めている。

 代表理事や理事会議長職は2018年3月の株主総会まで維持するが、部門長などについては後任者が決まり次第、退く意向だ。

 権五鉉副会長は、ソウル大電子工学科を卒業後、韓国科学技術院で修士号を取得後、1985年にサムスン入り。6年後には、役員になった。DRAM開発の中心として実績を上げ、その後も「超高速昇進」を続けた。

 2004年に社長、2011年に副会長となった。

 ちなみに、サムスングループ全体で「副会長」という肩書きを持つのは、今は、事実上の総帥である李在鎔(イ・ジェヨン=1968年生)氏と権五鉉氏の2人だけ。2人とも、サムスン電子副会長だ。

 2012年からは、サムスン電子の事実上のCEO役割を務めている。何よりも、半導体部門の責任者として、2000年以降のサムスン電子の大躍進を支えてきた功労者でもある。

 権五鉉副会長は、満65歳を迎えることで、以前から退任のタイミングをうかがっていたようだ。


大規模人事は必至というが・・・

 権五鉉副会長の退任を機に、サムスン電子やサムスングループ企業で大型刷新人事が起きるという見方が有力だ。

 サムスングループの役員人事、特に社長級人事はここ数年、小規模にとどまっていた。というのも、「総帥不在」でトップ人事を決められなかったのだ。

 2014年5月、全権を握るオーナー会長である李健熙(イ・ゴンヒ=1942年生)会長が病気で倒れた。会長はその後、ずっと意識が戻らないままだが、社長級人事は「人事権者」の不在で滞った。

 会長不在が長期化し、復帰可能性が遠のくにつれて長男である李在鎔副会長が徐々に「総帥」としての役割を担っていた。

 李在鎔副会長主導のグループ人事があると思われていた2016年、朴槿恵(パク・クネ=1952年生)大統領(当時)を巡るスキャンダルが噴出した。

 サムスングループが、捜査の標的となり、李在鎔副会長は逮捕、拘束され、2017年8月に1審で懲役5年という重い有罪判決を受けてしまった。いまも拘置所にいる状態だ。

 この過程で、グループの司令塔だった「未来戦略室」は廃止になり、この未来戦略室の室長(副会長)や次長(社長)などが相次いで退社、逮捕され、有罪判決で拘置所に入っている。

 サムスングループ全体に激震が走り、社長級人事などとてもできる状態ではなかった。


非常時にサムスン電子を率いる

 こうした状況に中で、権五鉉副会長は、サムスン電子の経営を担ってきた。

 「創業以来の危機」といわれるスキャンダルの直撃を受けたにもかかわらず、サムスン電子は磐石の経営を続けている。

 権五鉉副会長が辞任を明らかにした10月13日、サムスン電子は2017年7〜9月期の決算見通しを発表した。連結営業利益は14兆5000億ウォン(1円=10ウォン)で過去最高記録を更新した。半導体事業だけで10兆ウォンを超える営業利益を稼ぎ出したと見られている。

 「総帥の逮捕、拘束、有罪」という未曾有の事態にもかかわらず、サムスン電子をきちんと経営してきた権五鉉副会長に対する評価は社内外では高い。

 ではどうしてこんな時期に退任を決めたのか。

 韓国紙デスクは、「経営が順調なうちに世代交代を進め、特に新規事業育成を加速させたいという考えではないか」とみる。

 李在鎔副会長の控訴審公判は始まったばかりで、サムスングループが、緊急事態に陥っていることに変わりはない。だからといって「非常事態」を理由に人事をこれ以上先送りするの事は避けたいという意向だというのだ。

 権五鉉副会長は、10月13日に従業員に送ったメッセージで「幸い、最高の実績を上げているが、これは過去に下した決断と投資のおかげで、、未来の流れを読んで新たな成長エンジンを探すことはできていない」

 「私の辞任が、こういう難しい状況を克服し、さらに高い挑戦と革新の契機になることを願う」

 自分の役割は、半導体事業を育て、非常事態でもサムスン電子の経営が揺らぐことがないようにするまでだ。あとは、若い世代に託したい。こんな考えから、一線から退くことを決めたようだ。


拍手を浴びての退任だが

 「拍手を浴びての退任だが、問題は、そう簡単でもない」

 ある大企業幹部はこう見る。

 権五鉉副会長の後任者、特に半導体部門の責任者すぐに見つかるはずだ。半導体部門にはそれだけ人材がそろっている。

 だが、サムスン電子の新しいリーダー、さらにグループ企業のトップを大幅に変えるとなると、「どう進めるのか、想像もできない」とこの企業人は話す。

 「人事権者」が誰なのか、見えないからだ。

 サムスングループは、創業以来、主要企業の専門経営者トップは、オーナー会長である総帥が決めてきた。この人事を支えたのが、会長秘書室や未来戦略室など、名称は変わっても存在し続けたグループ全体の司令塔役割を担う組織だった。

 だが、李健熙会長は病床だ。一連のスキャンダルで、李在鎔副会長は拘置所にいる。未来戦略室はなくなったままだ。いったいどうやって人事を決めていくのか。

 韓国メディアは、サムスン電子については、権五鉉副会長とともに、理事会メンバーに入っていた2人の社長を中心に経営を進めるのではないかと報じている。だが、1人は、権五鉉副会長と年齢が1歳しか変わらない。

 未来戦略室に代わって小規模の組織を新設してグループ人事を担当するという見方もある。しかし、「不透明なグループ経営を担っていた」という批判を浴びて解体してから1年もたたない時期に小規模とはいえ、こういう組織を復活させるのか。

 権五鉉副会長は、2017年上期だけで、139億8000万ウォンという報酬を得た。14億円という高額だ。利益連動ボーナス制度のおかげで、ここ数年、毎年、巨額報酬で話題にもなった。

 絶好調の時期に「拍手の退任」はいいが、実際にどう進めるのか。残されたサムスングループ幹部の苦悩が続くのは間違いない。

筆者:玉置 直司

JBpress

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