神戸製鋼の品質偽装事件、納入先にも落ち度あり?

10月20日(金)6時14分 JBpress

神戸製鋼所は品質データ改ざん問題について、鉄鋼製品など新たにグループ9社で不正を確認したと発表した。会見に出席した同社の川崎博也会長兼社長(2017年10月13日、写真:つのだよしお/アフロ)

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 10月8日、鉄鋼大手の神戸製鋼所が、指定規格や性能を満たしていない鋼材を偽って客先へ出荷していたという不正事実を明らかにしました。この事件は筆者が暮らす中国でも「日本の製造が揺らいでいる」などという見出しとともに大きく報じられました。

 筆者は中国に来てから通信社で記者として働いたあと、日系メーカーで品質管理に従事した経験があります。今回はそんな筆者の視点から、なぜ長年にわたり不正が見過ごされてきたのかについて所見を述べたいと思います。


組織ぐるみの不正は明らか

 当初、神戸製鋼はこの問題はアルミ・銅製品に限られるとしていました。しかし、その後、鉄粉やばね鋼などの製品群でも同様の問題があることが明らかにされました。

 こうした不正は少なくとも過去10年以上にわたって行われていたとみられ、中には「数十年前から行われていた」という報道もあります。その期間の長さと不正のやり方を見る限り、組織ぐるみの不正が行われていたことは間違いないでしょう。

 神戸製鋼は2016年にも、ばね鋼で今回と同じように検査データを改ざんして出荷していたという不正が発覚しています。その前年にも同様の不正が発覚しており、今後こうした不正を根絶できるのか神戸製鋼の自浄能力についても疑念を覚えざるを得ません。


納入先でも見過ごされたのはなぜ?

 今回の事件は鉄鋼業界の名門たる神戸製鋼で起こった技術不正事件であり、なおかつ問題の鋼材を使用していた企業や業種が多岐にわたることから、世間でも大きな注目を集めています。

 しかし筆者には、報道を見ていてどうにも腑に落ちない点がありました。なぜこの問題が長年にわたり発覚しなかったのか? 言い換えると、なぜ納入先となるメーカー各社の受入検査時に検出されなかったのか? ということです。

 通常、どのメーカーでも仕入鋼材の受け入れ時には、その鋼材が指定規格通りであるかを、鋼材メーカーが発行する「ミルシート」と呼ばれる鋼材検査証明書と照合して確認します。さらに通常はロットごとに鋼材の一部を検査にかけ、その強度や耐性、硬度は当然のこと、場合によっては専門検査機関へ提出して鋼材を組成する化学成分も調べます。もしも納入された鋼材が指定規格や条件を満たさなければ、この時点で不良品と認定され、返品交換されることとなります。

 それだけに今回の事件の報道を見ていて、どうして今の今まで納入先は受入検査時に検出できなかったのか、不思議でなりませんでした。

 不正が行われた期間が短く、かつ該当製品の出荷回数も少なかった、というのであれば、納入先の受入検査で洩れていたと考えることができます。しかし今回の神戸製鋼の不正は期間が数十年と長く、また品目も多岐にわたり、複数拠点で頻繁に行われていました。それだけに、納入先の受入検査で検出されていてもおかしくない、というより検出されてしかるべき不正だと思うのです。


不正が見過ごされる3つのケース

 納入先となるメーカー各社はどうして検出できなかったのか。考えられるケースは以下の3つです。

 1つ目は、量産開始前、もしくは量産開始時期だけは良品を供給して、安定量産時期に入ってからは巧妙に品質を下げていた、というケースです。応用として量産開始以降も、検査用サンプルのみ良品を渡すというやり方もあります。これらは中国の鉄鋼メーカーがよくやる手口です。こうした工作をやられると確かに受入検査での検出が難しくなります。

 2つ目は、製品そのものの不良率は低かったというケースです。報道によると、神戸製鋼では検査自体は行われていなかったものの、規格や条件を満たしている製品もあったといいます。つまり、全部が全部不良品ではないということなので、受入検査も通ってしまいがちです。

 そして3つ目。これは一番望ましくない想定ですが、納入先のメーカー各社でほとんど受入検査をしていなかった、もしくはしていても杜撰だったというケースです。いわば、検査体制に不備があったのは神戸製鋼だけでなく、納入先のメーカー各社にも当てはまるのではないかという推測です。

 筆者は内心、今回の不正が納入先でも見過ごされてきたのは、3つ目の可能性が濃厚なのではないかという気がしています。


「日系大手だから安心」?

 なぜ3つ目のケースが考えられるのかというと、筆者の個人的な経験として、日系メーカー各社ではサプライヤーが日系大手の場合、仕入れた納入品に対する検査プロセスを省略するケースが多いからです。

 中国の鉄鋼メーカーが相手であれば、それこそ微に入り細に入り不良品が紛れ込んでないかを検査しますが(それでも混ざってくる!)、日系大手であれば、「長年不良がないから大丈夫」「大手だからうちより検査体制がしっかりしているはず」などと決めつけて、メーカーが発行する検査証明書の内容をそのまま受け入れてしまうところがあります。

 実際、今回のケースではJIS規格すら満たさない製品が神戸製鋼から出荷されていたわけで、きちんと受入検査にかけていれば確実に検出できていたはずです。それが長年放置されてきたということは、神戸製鋼のみならず納入先のメーカー各社でも受入検査プロセスに何か不備があったのではないかと疑わざるを得ません。

 仮にそうだとすると、果たして今回の問題は神戸製鋼だけの問題だと言えるのか。むしろ日本のモノづくり全体に投げかけられた問題であると言わざるをえません。


大手メーカーで相次ぐ「技術不正」

 これまで日本の製品は、世界各地で品質面に関して高い評価を得てきました。しかし近年、今回の神戸製鋼の例に限らず、日系大手メーカー各社で検査不備、性能データの偽装や隠蔽、リコール案件の放置といった、あえて言うならば「技術不正」ともいうべき事件が相次いでおり、品質への評価は大きく揺らいでいます(下の表)。

 利益水増しなどといった会計不正については、監査法人による年次監査などによってある程度防止体制が担保されています。しかし、技術不正は専門家でなければ見抜けない問題が多く、その対策はメーカー各社の品質管理現場の良心に大きく依存しています。

 近年の技術不正事例を見ていて、筆者が感じることは大きく2つあります。1つ目は、一度技術不正を犯した企業はその後も不正を繰り返しやすい。2つ目は、大手だからといって必ずしも品質管理やコンプライアンスがしっかりしているわけではない、ということです。

 品質管理の現場にいる皆さんは、この2点についてぜひとも改めて認識してほしいと思います。

筆者:花園 祐

JBpress

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