「プロセス」が簡単だと「結果」の責任を取らなくなる

10月21日(月)16時45分 財経新聞

 スマートフォンでのタクシー配車アプリが数多く登場していますが、無断キャンセルの多さから、業界がユーザーに注意を呼び掛けているとの話題がありました。
 複数のアプリで同時に配車予約をして、一番早く来たタクシーに乗って、他を無断キャンセルしたり、配車予約をしているのに、通りかかった別のタクシーに乗車したりという例が増えているそうです。
 このことが、乗務員がアプリからの予約を受けない「アプリ離れ」につながる恐れがあり、キャンセルが多いユーザーのサービス利用を制限する場合もあるとのことです。

 同じような話で、忘年会や新年会の時期を中心に、飲食店予約の無断キャンセル問題がありました。
 こちらはまだ電話による予約も多いようですが、それでも飲食店の検索サイトのおかげでお店探しが容易になって、店とのつながりの薄い一見の客が増えたことにも一因があるでしょう。

 また、企業の新卒採用での説明会予約の話もあります。就活ナビサイトを使った活動で説明会予約が簡単にできるようになり、その頃から出席率低下の問題が出てきました。予約では「満席」なのに、ふたを開けてみると出席者が半分にも満たなかったりします。
 ほとんどの企業は、定員に対する予約人数を水増しして対応しますが、それでも人数を読むことには難しさがあります。きちんと事前にキャンセルしてくれれば、他の希望者が予約することもできますが、キャンセルが開催当日だったり、無断キャンセルだったりすると、ただ空席が増えるだけになります。

 多くの応募者に来てほしいと思うのは、会社側の勝手な都合なので、学生をあまり強く責められませんが、以前はいちいち電話で予約しなければならなかったのが、今はサイト上のワンクリックだけで予約ができてしまいますから、その簡単な手順のせいか、説明会に申し込んでいたことすら忘れているケースもあると聞きます。

 これらの話に共通するのは、利用者の利便性を考えて、予約や申し込みといった手続きのプロセスを手軽で簡単にしていることです。そして、そうやって「プロセス」が簡単になると、その「結果」に対する責任感も比例して希薄になってしまうのです。

 タクシー配車や飲食店予約では、自分の都合だけで行動する客が増え、会社説明会の予約では志望度の低い参加希望者が増えました。「プロセス」を簡単にすると、母数が増えるというメリットの一方、「結果」として顧客等の質は下がってしまいました。
 ある会社で、経費精算手続きの「プロセス」を簡素化したところ、「結果」として不正や無駄遣いが増えてしまったのは、典型的な例の一つです。

 このように「プロセス」の簡素化は、利便性を上げる、量を増やすといったことには有効ですが、「結果」として無駄が増えたり、歩留まりが低下したり、様々な面での質が下がったりします。
 ここでは、やはり目的によって「プロセス」と「結果」のバランスを取らなければなりません。

 その方法はいろいろで、「結果」の不履行に対してキャンセル料、利用禁止といったペナルティーを与えることや、簡素化した「プロセス」を多少の手間が必要な形に見直すことが一般的ですが、それではそもそも期待したメリットも薄れてしまいます。工夫が必要なところです。

 ちなみに、タクシー配車アプリの一つでは、ユーザーと通話やメッセージでやり取りする機能を備えた乗務員向けのタブレット端末を配置して、例えばドライバーからユーザーに直接到着時間を知らせたり、ユーザーから「車両が見つからない」などといったメッセージのやり取りを可能にして、トラブル解消とサービス向上を両立させようという試みがされています。

 「プロセス」が簡単になると、「結果」に対する責任感も薄れることをよく考えた上で、「プロセス」と「結果」のバランスを取った仕組みを工夫する必要があります。

※この記事は「会社と社員を円満につなげる人事の話」からの転載となります。元記事はこちら

財経新聞

「責任」をもっと詳しく

「責任」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ