ほとんど増えていない個人消費、統計データで明らかに

10月24日(水)6時8分 JBpress

日本の個人消費の実態は?(写真はイメージ)

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(花園 佑:ジャーナリスト)

 新聞や雑誌の経済記事はしばしば「個人消費の拡大を背景に・・・」「個人消費の冷え込みによって・・・」というように、景気動向の判断理由として個人消費の動向について言及します。しかし筆者は先日、ふと「今まで個人消費を示す統計データを見たことなんてあったっけ?」という疑問が浮かびました。マスコミの経済記事で、個人消費が前年比で何%増減したかというデータにはほとんどお目にかかったことがありません。

 個人消費動向に関する統計は、もちろん世の中に存在しています。けれども、日本のマスコミがそれらをきちんと分析して報道することは稀なようです。

 そこで今回は日本の個人消費の実態に迫るべく、政府や各業界団体が発表している売上統計データを調べてみました。


全体としては横ばいが続く

 今回、個人消費動向を調べるにあたって参照したのは主に以下のデータです。

・経済産業省が発表している「商業動態統計」の小売業売上高(販売額)
・スーパーマーケット業界団体の日本チェーンストア協会(CS協会)、全国スーパーマーケット協会(SM協会)による調査統計
・コンビニ業界団体の日本フランチャイズチェーン協会(FC協会)による調査統計
・百貨店業界団体の日本百貨店協会(百貨店協会)による調査統計

 まず、直近1年間における毎月の売上高変動率を見ていきましょう。

(なお、各協会が発表している前年同月比データには、当該月とその前年同月の売上高を単純に比較した「全店ベース」、比較期間中に開店・閉店した店舗を除外して比較した「既存店ベース」という2種類のデータが存在します。今回は市場全体の動向を探るという目的から、「全店ベース」の数値を引用することとしました。)

 上の表を見ての通り、2018年7月に百貨店業界が−6.2%を記録したのを除き、全データの変動値はすべて5%未満と小幅な変動に留まっています。業界別ではコンビニ業界のみが年間を通してプラス成長を維持し、逆に百貨店業界はマイナス月が7カ月に及んでいます。

 百貨店業界以外は、前年比がプラスの月がマイナス月を上回っていますが、前年比では全体として「横ばい」もしくは「微増」傾向だといえるでしょう。

 続いて、過去3年間の年次ベースで見たのが下の表です。

 こちらを見ると、全データの変動値はどれも3%未満で、年ごとに増減を繰り替えしています。以上から言えることは、「日本の個人消費は増えてもいないが減ってもいない」、つまり横ばいの状況にあるようです。


訪日旅行消費額は6年間で5倍以上に

 さて、国内の消費動向を観察するうえで筆者が注目しているのは、訪日外国人の影響です。近年、ますます重要度を高めている訪日外国人の貢献度合いについてみていきましょう。

 ただし、直接その貢献度合いを測る指標は見当たりませんでした。そこで、ひとまず観光庁が発表している「訪日外国人消費動向調査」から訪日外国人の旅行消費額と旅行者数の推移を抜粋してみました。

 上のグラフは2011〜2017年における訪日外国人の旅行消費額と旅行者数をまとめたものです。このグラフによると、2017年の訪日旅行消費額は4兆4162億円に達しており、その成長も2011年からわずか6年で5.4倍まで急増していることが分かります。

 なお、先ほど取り上げた、経済産業省の「商業動態統計」における2017年の小売業売上高は14兆2514億円でした。調査方法や種類が異なるので、単純に訪日旅行消費額が日本の個人消費の約3分の1を占めているとは言い切れません。とはいえ、訪日外国人旅行消費が大きな影響を及ぼしていることは間違いないでしょう。


日本の家計消費支出は本当に横ばいなのか

 前述の通り、政府、業界団体による調査では、日本の小売業売上高は横ばい傾向を示していました。それに対して、訪日外国人の消費総額は近年急増しており、年間では既に4兆円を突破しています。

 ということは、「日本の個人消費は、日本人による支出が落ち込む中、訪日外国人消費が穴埋めすることで横ばいとなっている」のではないかという仮説が立てられます。

 この仮説を検証するため、総務省統計局の家計調査報告を見てみました。同報告書の2017年における「総世帯」の消費支出をみると、2017年は名目0.4%増、実質0.2%減とほぼ横ばいでした。どうやら「日本人の支出が落ち込んでいる」というわけではないようです。

 筆者としてはやや腑に落ちない結論ではありますが、訪日外国人の消費額が急増する中、日本の国内個人消費は横ばい状況にあるというのが日本の個人消費の実態のようです。


個人消費はなぜ増えない?

 以上、日本の個人消費は現在横ばいであるという状況をお伝えしました。もちろん、落ち込んでいるよりはずっとマシなのですが、ここ数年、国内の個人消費はほとんど増加していないわけで、経済的にはあまりよろしくない状況と言えます。

 なぜ増えないのかといえば、単純に賃金が向上していないということが最大の理由ではないかと思われます。

 やや本題とはずれますが、先日報じられた、東京五輪のボランティア参加者への報酬について筆者は首をかしげざるを得ませんでした。報道によると、1人1日1000円のクオカードを配ることにしたそうです。しかし、もしもこれが1万円の現金であったら、下手な地域振興券などよりもずっと消費を促せたのではないかと思います。

 またこの金額であれば、一般的なアルバイト業務の賃金とも競合する金額となります。事業者側としては、従業員を引き留めるために賃金の引上げ上げに迫られることとなり、結果的に全体賃金の底上げも促せたのではないでしょうか。

 現在の日本政府の政策は、株価を上げることには熱心ですが、賃金の引き上げに関してはそれほどでもないように思えます。安倍政権は経済界に賃上げを要求していますが、本腰を入れているようには思えません。

 今回見てきたように今の日本の個人消費は横ばい傾向が続いています。果たしてこのまま横ばいのままでいいのか、この点についてもっと広く議論が交わされるべきである、というのが今回の結論です。

筆者:花園 祐

JBpress

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