閉店相次ぐ地方百貨店 不振商品の洋服の売り場が多すぎる

10月24日(水)7時0分 NEWSポストセブン

百貨店で両手に買い物という時代は終わった

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 郊外や地方を中心に「百貨店」の閉鎖が相次いでいる。大型ショッピングモールやファストファッションの台頭、そしてネット通販の普及などで売り上げ減に歯止めがかからないことがその要因とされているが、果たして大都市以外の百貨店は生き残れない時代なのか。ファッションジャーナリストの南充浩氏が、百貨店復活の処方箋を説く。


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 三越伊勢丹ホールディングス(HD)が、地方・郊外店3店舗を閉鎖することを発表しました。昨年にも千葉三越、多摩センターの2店舗を閉鎖していますので、2年連続で複数店舗の閉鎖が決定したことになります。


 今回、閉鎖が発表されたのは、伊勢丹府中店、伊勢丹相模原店、新潟三越の3店舗で、どれもピーク時に比べて売上高は半分前後にまで落ち込んでいます。三越伊勢丹に限らず、百貨店各社の地方支店・郊外店は毎年のように閉鎖や譲渡が発表されてきました。理由は売り上げ不振によるものです。


 例えば関西圏でも、そごう西武が高槻店と三宮店を阪急阪神に譲渡しましたし、大丸松坂屋も今年8月には京都・山科にある大丸山科店の閉店を発表しています。ではどうして、地方支店や郊外店の売上高が不振になったのでしょうか。それには無理からぬ理由があります。


(1)地方支店・郊外店は売り場面積が狭いので商品バリエーションが少ない

(2)ファッション衣料に関していえば、ハイセンスブランドを集積しても地方にニーズがない

(3)イオンモールやららぽーとに代表される大型ショッピングセンターに若年〜中年客を奪われている

(4)電車で20〜30分圏内にある都心大型百貨店に客を奪われている

(5)シニア層からの支持は厚いが、そこに向けて効果的な施策を打ち出せていない


 などが挙げられます。一方、大都心の大型店もすべてが好調というわけではありませんが、今のところ比較的好調な売れ行きを見せている店舗も多くあります。



 例えば、三越伊勢丹HDでも伊勢丹新宿本店は好調で、百貨店の中で単店舗としては不動の売上高日本一を誇っています。また他に目を転じれば、大阪・難波の高島屋大阪店、大阪・梅田の阪急百貨店うめだ本店、大阪・天王寺の近鉄百貨店あべのハルカス本店は、どれも好調で売上高が前年実績を上回っています。


 先ごろ発表された今上期中間決算の数字を見ても、大丸松坂屋を展開するJ.フロント リテイリングや高島屋は好調だったといえます。


 J.フロント リテイリングの2018年3〜8月期連結業績は、売上高に相当する売上収益が前年同期比3.1%減の2272億円だったものの、百貨店事業の売上高はインバウンド需要と富裕層が牽引して1.8%増の1346億円と伸びました。営業利益を示す事業利益も同6.6%増の242億円でした。


 高島屋も同様で、2018年3〜8月期は、売上高に相当する営業収益が前年同期比1.9%増の4415億円と増収しており、主力の百貨店事業の営業収益は同1.8%増の3837億円と増収しています。国内はメンズ・ウィメンズともにアパレルは不調とのことですが、インバウンド需要の継続的な伸長や富裕層を中心とした底堅い消費に支えられ、高額品や雑貨が売れて増収となっています。


 このように、今の百貨店ビジネスは、インバウンド需要と富裕層需要を取り込めている大型都心店によって支えられているといえます。


 とはいえ、インバウンド頼みも常に安定的ではありません。事実、2015年秋ごろから年末にかけてインバウンド需要は軒並みトーンダウンし、三越銀座店もこのころは大苦戦を強いられていました。いま外国人観光客などの消費が旺盛でも、東京オリンピックを境にどうなるかは未知数といえるでしょう。


 いずれにせよ、今後百貨店は東京や大阪など旗艦店を含めた大都市部の店舗しか生き残るのが難しいと言われています。三越伊勢丹HDでも伊勢丹新宿本店、三越日本橋店、三越銀座店の3店舗と各地方大都市の数店舗以外は大幅な売り上げ増は見込めません。大丸松坂屋、高島屋、そごう西武、阪急阪神など他の百貨店でも同じ状況にあるといえます。


 では地方百貨店、郊外百貨店が生き残るためにはどうすれば良いのでしょうか。アパレル業界にいる人間がいうのもおかしいですが、百貨店は都心店・地方店を問わず、思い切って衣料品の扱い量を減らすべきだと思います。



 業績が悪くなかった大丸松坂屋や高島屋でもメンズ・レディースの洋服の売上高は減少しているにもかかわらず、百貨店という施設においては洋服のフロアが大半以上を占めているのが実態です。


 都心の大型店はだいたい地下1階から地上9階か10階まで売り場があり、その上がレストランフロアとなっていますが、そのうち婦人服が3層〜5層、紳士服が1層〜2層、子供服が1層を占めています。洋服だけで最低でも5層、最大では8層も売り場を占めることになり、不振商品なのに売り場が多すぎることは明白です。


 今、百貨店でもっとも売れているのは食品、化粧品、それに宝飾品です。大丸東京店が好調なのは食品フロアを2層に増やしたためです。また化粧品も支持が厚く、百貨店では服など買ったこともない若い女性ですら、化粧品だけは百貨店で買っています。あとは富裕層が固定客化している宝飾品です。これらを強化拡充すべきです。


 そのうえで、地方百貨店は公共性の高い施設を積極的に導入するというのが効果的ではないかと思われます。


 2016年夏、私は数回にわたって三越伊勢丹HDの大西洋・前社長にインタビュー取材をしました。その後、大西氏が社長を電撃解任されたこともあり、結局、記事はお蔵入りしたのですが、その当時、大西氏は地方百貨店のリモデルプランとして2016年5月に大阪・枚方にオープンした複合商業施設「枚方Tサイト」に注目していました。


 この施設は奇しくも近鉄百貨店枚方店という閉鎖された地方百貨店の跡地に建てられています。郊外駅前店にもかかわらず、Tサイトは順調に集客しており、大西氏はその原因を、


「銀行に代表されるような公共性の高い施設をテナントとして誘致することが地方・郊外百貨店での集客に有効ではないか」


 と分析していました。地方・郊外の百貨店は若者よりも裕福なシニア層に支持されていますが、シニア層は百貨店に行っても洋服は買わない傾向が強いのです。



 1着何万円もするような、いわゆるシルバー婦人服を製造・卸売りしている某メーカー担当者も、


「当社は顧客層を若返らせることなく、顧客の年齢に合わせてきたが、60代・70代前半では奮発して高額な服を買っても、80代が見えてくると高額な服を買わなくなる」


 と現状を説明しています。日本人の平均寿命は男性80歳・女性88歳です。高額な服を買ってもあと何年も着られない可能性が高いから、もったいなくて買えないという心理が働くようです。また、体力も弱り外出するのも億劫になる人が増えます。


「それでも昔の高齢者は百貨店に行って高い服を買っていたじゃないか」という声もありますが、昭和の百貨店全盛期は“安い割にマシな服”がなかったのです。その代表がユニクロでしょう。平日の昼間にユニクロを覗くと、あまりのシニア層の多さに驚くはず。普段着やちょっとした外出はユニクロの服で十分満足と考えているのです。


 それを反映してか、いまだに日本で大成功したシルバーブランドは出現していません。「富裕な高齢者が高い洋服を買ってくれる」というのは、現時点では業界人の願望に過ぎないといえます。


 それよりも日々の生活でニーズの高い「食品」や「贈答品」などを強化・拡充するほうがよほど百貨店の業績アップにつながるといえます。そのあたりを冷静に考えない限り、地方百貨店が生き残ることは難しいのではないかと思います。

NEWSポストセブン

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