勉強が得意になるかは「遺伝ガチャ」では決まらない…「算数が得意な子」が幼少期からやっている"遊びの種類"
2024年10月27日(日)18時15分 プレジデント社
※本稿は、菊池洋匡、こしいみほ『マンガで即わかる!学力があと伸びする子の親が大切にしていること』(実務教育出版)の一部を再編集したものです。
写真=iStock.com/goodmoments
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/goodmoments
■子どもが低年齢のうちに育てたい能力
算数と言えば、中学受験では最も差がつく科目です。高校受験でも大学受験でも、数学は差がつきやすいので、得意になるように育ててあげたいですよね。
では、算数・数学を得意にするには、どうすればいいのでしょうか?
その方法が、「空間認識力」を育てることです。
算数・数学が得意になるかどうかは持って生まれた才能次第……多くの人がそう思っています。確かに、才能がものを言う世界はあります。
しかし、それは本当にトップレベルの世界においてのこと。受験勉強レベルで「得意」になるためには、遺伝的に恵まれている必要はありません。
スポーツの世界に置き換えて考えてみましょう。オリンピックやプロスポーツで活躍できるのはごくひと握りです。多くの子どもたちが、オリンピックやプロを目指して本気で努力をしています。そのレベルでは、「本気で努力をする」のは全員共通の最低条件ですから、遺伝的な才能があるかどうかで結果に差がつきます。
■受験勉強レベルの得意・不得意は「遺伝以前の問題」
では、体育が得意になるために遺伝的な才能は不可欠でしょうか?
子どもたちの中には、運動系の習い事をしている子としていない子がいます。日常的に外で身体を動かして遊ぶのが好きな子と、家の中でゲームをしたりして遊ぶのが好きな子がいます。遺伝以前に、そこで基本的な運動能力の差ができています。
同じように勉強でも、数学オリンピックでメダルを取れるかどうかというレベルであれば、遺伝的な才能も必要かもしれません。しかし、受験勉強レベルで得意か不得意かといった差は、遺伝以前の問題です。普段の生活の中で、その能力を使う機会があるかどうかで差がつきます。
運動系の習い事や外遊びで運動神経を育てるように、知育系の習い事や遊び、運動等を通じて、お子さんの「空間認識力」、すなわち算数のセンスを鍛えてあげてください。
出所=『マンガで即わかる!学力があと伸びする子の親が大切にしていること』(実務教育出版)
出所=『マンガで即わかる!学力があと伸びする子の親が大切にしていること』(実務教育出版)
■毎日やったほうがいい「遊び」
単位換算は多くの子が苦手にするところです。毎回行きあたりばったり、カンで答える子が少なくありません。覚えるためのコツは2つです。1つは身近なものにして何度も使いながら覚えること、もう1つは法則性をつかむことです。
小学校低学年以下の子にオススメなのは、1つめの方です。低学年の子たちの脳は、まだ丸暗記型だからです。子どもは「自分のこと」を知るのが大好きなので、お子さんの身長や体重を使って覚えさせましょう。「今日の体重何キロだった? グラムで言うといくつになる?」などと何度も質問されて答えるうちに、すぐにmm(ミリメートル)、cm(センチメートル)、m(メートル)、g(グラム)、kg(キログラム)の単位換算ができるようになります。
長さ・重さの基本的な単位を覚えたら、次にかさの単位であるL(リットル)・mL(ミリリットル)・dL(デシリットル)を覚えましょう。マンガにも出てきたように、計量カップを使って毎日遊ぶといいでしょう。これも、何度も使ううちに徐々に覚えていきます。日常の習慣にしてしまえば、とてもラクになりますよ。
■苦手克服のコツは「法則性をつかむ」
これで基本的な単位を覚えたら、次は法則性を理解して覚えていきましょう。
「k(キロ)は1000倍という意味で、1kgは1000gだから、1kmは1000m、1kLは1000Lだな」といった具合です。同様に、「m(ミリ)は1000分の1だから、1Lは1000mLだな、1mは1000mm、1gは1000mgだな」と理解していきましょう。
d(デシ)やc(センチ)など、他ではあまり使わない単位もあります。そういったものは仕方ないので、反復練習で覚えましょう。
なお、日本ではcL(センチリットル)という単位はあまり使いませんが、ヨーロッパではメジャーです。1mが100cmなのと同じく、1Lは100cL(センチリットル)です。規則性がわかっていれば、旅先で見慣れない単位を見かけてもすぐに理解できるので、ちょっと面白いですよね。
出所=『マンガで即わかる!学力があと伸びする子の親が大切にしていること』(実務教育出版)
出所=『マンガで即わかる!学力があと伸びする子の親が大切にしていること』(実務教育出版)
■テレビゲームの「意外なメリット」
ゲームは百害あって一利なし——そんなイメージを持って、敵視している親御さんもいますよね。確かに、害が多いのは間違いありません。しかし、実は利点もたくさんあります。ワーキングメモリの働きがよくなり、集中力が高まり、「空間認識能力」も向上します。これらは勉強で良い成績を取るために必要な能力です。ゲームには脳トレになるという側面もあるのです。
また、ゲームの種類によっては、知識の習得の助けになるものもあります。有名なものだと、『桃太郎電鉄』です。現在「教育版」が開発されていて、学校・教育委員会・地方自治体に無料で提供されています。
学校教育が遊びを通じて賢く育てるという方向に変わっていったら、子どもにとっても学びが楽しくなっていくので良いことですね。その一方で、自己コントロール力の低下を招く危険があるという大きなデメリットがあるため、制限も必要になります。
■ゲームは「1日1時間まで」ならOK
重要なのは、なぜ制限が必要なのかを納得させることです。子どもが納得しない状態で無理に取り上げても、友達の家に行ってゲームをしたり、隠れてゲームをしたりするだけです。そうしたご相談をたくさん受けてきました。子どもの行動を一方的に管理し、制限しようという発想を手放して、話し合いましょう。
菊池洋匡、こしいみほ『マンガで即わかる!学力があと伸びする子の親が大切にしていること』(実務教育出版)
では、ゲームはどれくらいまでならやらせてもいいのでしょうか?
慶應義塾大学の中室牧子教授らの研究によると、1日1時間程度のゲームは子どもの学力に全く悪影響はないことが示されています。東北大学と仙台市教育委員会の共同研究でも、同じく1時間を超えてゲームをすると成績は下がるが、1時間未満であれば問題がない、という分析結果でした。
もちろん、ゲームを1時間、YouTubeを1時間、SNSを1時間で合計3時間といった状態だと、ゲームだけ1時間以内に収まってもダメです。ゲームやパソコンなどのスクリーンタイムは、合計1時間を目安にしましょう。
出所=『マンガで即わかる!学力があと伸びする子の親が大切にしていること』(実務教育出版)
出所=『マンガで即わかる!学力があと伸びする子の親が大切にしていること』(実務教育出版)
----------
菊池 洋匡(きくち・ひろただ)
中学受験専門塾 伸学会代表
開成中学・高校、慶應義塾大学法学部法律学科卒業。10年間の塾講師歴を経て、2014年に伸学会を自由が丘に開校。現在は目黒校・中野校と合わせて3教室に加え、オンライン指導も展開。現在メルマガ・公式LINEは1万人超、YouTubeは10万人超の登録者がいる。主な著書に『小学生のタイパUP勉強法』『「やる気」を科学的に分析してわかった小学生の子が勉強にハマる方法』『「記憶」を科学的に分析してわかった小学生の子の成績に最短で直結する勉強法』『「しつけ」を科学的に分析してわかった小学生の子の学力を「ほめる・叱る」で伸ばすコツ』(実務教育出版)などがある。
----------
----------
こしいみほ(こしいみほ)
マンガ家、イラストレーター
埼玉県在住の、小学生2人の母。マンガ家・イラストレーターとして、コミックエッセイや実用系マンガ、挿絵を中心に制作。楽しく・わかりやすく・親しみやすい、「た・わ・し」な表現で支持を得ている。著書に『ころんでもポジティブ』(オーバーラップ)、『不調と痛みが消える!10秒筋膜ほぐし』(主婦の友社)、『マンガでカンタン! SNSマーケティングは7日間でわかります。』(Gakken)がある。
----------
(中学受験専門塾 伸学会代表 菊池 洋匡、マンガ家、イラストレーター こしいみほ)