「さすがですねー」と流すより効果的…「俺、凄い人と知り合いなんだ」と自慢する"マウント人間"の対処法
2024年10月27日(日)16時15分 プレジデント社
写真=iStock.com/DNY59
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/DNY59
■承認欲求をこじらせた「マウント人間」
人間関係の中で、相手から「認められたい」という欲求、つまり「承認欲求」は、誰にでもあります。その基本的な欲求を持つこと自体は健全であり、全く否定しません。本書も、大きな視点では、その欲求を満たすためのスキルを伝えています。
ただ、気を付けないといけないのは、承認欲求をこじらせて、無理に「認められよう」としてしまうことです。そのひとつが、いわゆる「マウンティング」です。自分はそんなことしないよ、と思うかもしれませんが、気付かずにやってしまうこともありますので要注意です。
マウンティングの代表的なパターンは、以下の3つです。
①地位を誇示したいばかりに、自慢話に走る
②優秀さをアピールしたいばかりに、知識を披露したがる
③中心にいたいばかりに、自分の話しかしない
一生懸命マウンティングしても、人から認められません。そんなことをして、仮に相手から「すごいですねー」とか「さすがですねー」と、ポジティブにリアクションしてくれても、ホンネは裏腹。そんな言葉はタテマエに過ぎず、内心では不快な気持ちを持たれている可能性も大いにあります。
■同じ自慢話を繰り返すという地獄のループ
あなたは、上記のような方法でマウンティングされて、愉快な気持ちになったり、相手に対して好意を持ったりしたことはありますか?
きっとないでしょう。だからあなたも積極的にそれをやらない方がいいです。
冷静に考えて、ダメそうな方法だと分かるのに、それでもやってしまうのは、マウンティングすると、「自分で自分を認めること」ができてしまうからなのです。それで相手からも同じように思われると錯覚し、知らずにエスカレート。そして最悪なのは、その人にアピールできるような新しい実績や強みの獲得がなく、ネタ切れとなり、何度も何度も同じ話をされ続けるという地獄。
アピールできる実績の有無に関わらず、もっと健全な方法で「承認欲求」を満たすことはできないでしょうか。別の方法があるならば、自分を押し出す(PUSHする)のではなく、相手のよさや面白さを引き出す(PULLする)、つまり「回せる」存在になることで、「この人がいると違う」「この人がいると楽しい」と思われることです。
「マウンティング」と対極にある、「回す」アプローチは、いうなれば縁の下からアプローチしていく、「グランディング」とも呼べるでしょう。
■自慢話に乗っかってもだれも得しない
いろいろな「マウント」のタイプと、その対処法を紹介します。
① ワタシえらいだろ型(地位を誇示したいばかりに、自慢話ばかりに走る人)への対処
典型的なマウンティングのタイプでしょう。「話題に合わせて、それに役立つ自身の人脈を紹介してくれたり、その人自身の立場を使ってくれたりする人」がいると、それはなかなか得がたいものであり、助かることもあります。
しかし、それがエスカレートしてくると、延々そういう話を繰り返したり、自分が自慢できる話題にむりやり転換したりする人がいます。「こんな凄い人と知り合いだ」とか「こんな凄いことをやった」と言われると、まあ普通「凄いですねぇ……」としか言いようがありません。
そういう「見せかけのポジティブ反応」が、さらにその人を、悪い方向に調子付かせてしまうのです。
■アイコンタクトで「つまんない」とほのめかす
【ソフトな対処法】自慢話に、いちいち律儀に反応しない
ポジティブに反応するから、その行動が強化されると述べましたので、その逆をやればいいのです。ただ、無視するのもなんなので、「へぇー」くらいでいいでしょう。+αのコメントなど一切いりません。
そうすると相手は「コイツを何とかひざまずかせてやろう」と思い、ますますいろいろとかぶせてくるでしょうが、そこはぐっとこらえて、微笑をたたえながら流すのがいいと思います。
【ハードな対処法】他の人に目を合わせる
わざわざその人に喧嘩を売る必要はありません。平和が一番です。だから直接的に失礼なことをしてはいけませんが、間接的に「皆、あなたの話、つまんないと思っていますよ」と感じてもらうことくらいならセーフです。
一番おすすめなのは、目をそらすのでもなく、うつむくのでもなく、他の人にそれとなく目を合わせ、「何かのアイコンタクト」をしているような印象を与えるのです。でも「この人つまんないね」とやりとりしている証拠はどこにもありません。ごまかせます。
■言っていることは正しい、めんどくさい人
② ワタシ賢いだろ型(優秀さをアピールするために、知識を披露しまくる人)への対処
仕事における人間関係でよく出てくるタイプです。「その話題やテーマについて、有している詳細な知識や、専門的な見解を伝えてくれる人」がいると、その場の会話や議論がより質の高いものになりますし、メンバーにとっては貴重な学びにもつながります。
しかし、それがエスカレートしてくると、自身しか知らないこと、できないことを示せる優越感と、その気持ちよさを感じ始め、いつしか、そのテーマについて未熟な他のメンバーに対して傲慢な態度を取り始める人がいます。
ただ言っていることは正しいので、とくに言い返せる訳でもなく、その人が独走する中で、何となく空気だけが悪くなっていく、という状況にはまります。
写真=iStock.com/mapo
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■「私は何も知らない…」と落ち込まなくていい
【ソフトな対処法】教えてくれたことを、爽やかに感謝する
がーっと自分の知識を披露されて、劣等感でシュンとなっしまうから、その人にますます優越感を感じさせてしまうのです。だからまず、そんな態度を示さないことです。といいますか、示す必要もありません。たまたまその領域でその人が詳しいというだけです。
むしろ前のめりに、興味津々でその人の話を聞いてメモり、めっちゃ参考になります! と感謝するくらいの気丈さが必要です。
【ハードな対処法】逆に、質問してみる
劣等感を感じて押し込められるのでなく、「私がそんなこと、知るわけないだろ」くらいの気持ちで、「例えば、○○の場合はどうすればいいですか?」などと、こちらから質問を投げかけてみるのです。
難しい質問でも構いません。回答の内容が分からなければ、無理にポジティブに反応する必要はありません。そんなやりとりをしていると、一方的に言いくるめられていた空気が少し変わっていくでしょう。
■「楽しませたい」がエスカレートすると…
③ワタシ面白いだろ型(とにかく人の話を取る、自分の話しかしない人)への対処
どんなところにもいるタイプです。「誰かが出した話題に乗り、自分のエピソードを話してくれる人」がいると、当然会話も盛り上がり、楽しい場となります。
しかしそれがエスカレートしてくると、ある自分の得意な話題となったら、来た! とばかりに、話したい人がいそうなのに、押しのけて自分のエピソードを話したり、流れの中で、自分が話したいトピックに変えていったりする人がいます。
このタイプは、自分が話すこと=場を楽しませることだと勘違いしているのです(私、昔はこのタイプだったかも……)。
どんな人にも「面白い話をして楽しませたい」という欲求はあります。そんな欲求をメンバーから奪い続けてしまうと、1人だけが浮いている、退屈なコミュニティになっていきます。
■嫌味なく悪いクセに気付かせるフレーズ
【ソフトな対処法】そもそも乗らない/薄めに反応する
対策としては1つ目と同様です。その人の独走に、仕方ないなと乗っかってしまうから、本人も気付かないのです。せっかく楽しかったのに、いつものように急に話を奪ってきたな、話題を転換してきたな、と思ったら、もうその時点で反応しなくてもいいです。
別にムスッとする必要はありません。微笑をたたえながらじっとしておけばいいでしょう。何か言葉を発している訳ではないので、ばれません。
楠本 和矢『人・場・組織を回す力』(クロスメディア・パブリッシング)
【ハードな対処法】一言いって、先ほどの話題に戻す
せっかく盛り上がっていたのに、話を奪われた、話題を転換されたら、その人の話が一息ついたタイミングで、嫌味なく「で、さっきの話に戻していいかな?」とか「それで、さっき皆が話していたトピックに戻るんだけど」などと一言いって、元の話題に戻してみてください。
話を奪うクセ、自分のことしか言わないクセがある人には、少しずつでも、その悪いクセに気付かせてあげないといけません。
いかがでしたでしょうか。あくまでも、「そんな人がいたときの対処法」として整理していますが、自身としても、知らず知らずに上記のような存在になってはいませんか?
心理要素としては、誰しも少しは持っているものです。だからこそ、そうならないよう気を付けたいものです。いい機会と捉え、自身を省みてみましょう。
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楠本 和矢(くすもと・かずや)
grament代表
大阪府立茨木高校、神戸大学を経て、丸紅株式会社に入社し、新規事業開発を担当。その後、英国系ブランドコンサルティング会社を経て、博報堂コンサルティングに参画。同社の執行役員/HR専門組織の組織代表を兼任。組織管掌に加えて、プロジェクトの最前線で企画・運営のリード、ファシリテートを継続的に行う。2016年、株式会社grament設立。「自律的変革」というテーマを、幅広くかつ深く追求し、独自のPMO型コンサルティグを展開している。加えて、講演・企業内研修、関連テーマの執筆・コメンテート、幼児向け教育事業の支援等を行う。著書に『TRIGGER 人を動かす行動経済学 26の切り口』(イースト・プレス)、『会議の生産性を高める 実践 パワーファシリテーション』『人と組織を効果的に動かす KPIマネジメント』(すばる舎)、『龍馬プロジェクト 日本を元気にする18人の志士たち』(共著、ビジネス社)、『サービスブランディング』(共著、ダイヤモンド社)などがある。
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(grament代表 楠本 和矢)