大手企業「借金の中身」 トヨタの負債が高く評価される訳

10月30日(金)16時5分 NEWSポストセブン

トヨタの負債は他企業と何が違うのか(時事通信フォト)

写真を拡大

 新型コロナは、企業経営に深刻なダメージを与えている。資金繰りに苦しむ会社が頼るのは、金融機関からの融資──すなわち「借金」だ。


 特に大きな話題となったのが、ANAホールディングス(以下、ANA)の巨額借り入れだ。日本政策投資銀行など5行から、約4000億円の追加融資を受けることが固まった。同社は6月までに金融機関からの借り入れや融資枠の設定によって1兆円超の資金を確保していたが、さらに借金を上乗せすることになった。


 しかし一口に借金と言っても、その性質は様々。企業には「良い借金」と「悪い借金」が存在するのだ。


長期か、短期か


 実は日本を代表する企業の多くは、莫大な借金を抱えている。Yahoo!ファイナンスが公表している上場企業の「有利子負債ランキング」(2020年10月22日時点)によれば、1位はトヨタ自動車で約20兆5530億円、2位はソフトバンクグループで約13兆1320億円にのぼる。


 以下3位は野村ホールディングス(同9兆9800億円)、4位・日産自動車(7兆8000億円)、5位・ホンダ(7兆4700億円)、6位・三菱商事(5兆7600億円)、7位・武田薬品工業(5兆930億円)と続く(いずれも連結ベース)。


 上位に並ぶのは、名だたるグローバル企業ばかりだ。投資情報提供会社・カブ知恵代表の藤井英敏氏が語る。


「いくら有利子負債が多くても、事業利益の利回りが高ければマーケットは高く評価します。個人に置き換えると、いくら高い住宅ローンを借りてもそれを上回る収入があれば問題ないということです。融資された資金を効率的に回し、本業に資金投下することを投資家は好む。逆に借金が大きいのに、事業利回りの見通しが悪化しているような場合は投資家に避けられます」


 借金の使途が重要ということだが、その点で言えばトヨタは高く評価できるという。経済ジャーナリストの福田俊之氏が言う。


「トヨタは今年1月、静岡県裾野市にスマートシティを建設すると発表した。資本業務提携したマツダとは来年、米アラバマ州で新工場を稼働させると決めている。歴史的な低金利が続くなかで、借り入れを活用し、このように将来を見据えて積極的に投資をするのは、今の時代の経営スタイルと言えます」


 また、トヨタ自動車の借り入れスタイルも盤石な経営の理由になっている。


「トヨタ自動車の有利子負債のほとんどが返済まで1年超の『長期借入金』で、これは将来の成長が見込め、有益であると金融のプロがトヨタを信用している証拠です。一方、信用力が低いと長期借り入れができなくなり、『短期借入金』が増えていく傾向があります」(同前)


 過去に経営危機が表面化した東芝やシャープ、そして今年5月に経営破綻に陥ったアパレル大手のレナウンはいずれも「短期借入金」の悪循環が災いした。


「シャープは債務超過の状態が解消される2017年3月期まで、短期借入金が大半を占めていました。2016年3月期に経営危機に陥った東芝も、前年から短期借入金が倍増していた。レナウンも2018年、2019年から短期借入金が増えていたので、コロナだけが経営破綻の原因ではないでしょう」(同前)


 一般家庭にたとえるなら、生活費や家賃を払うために消費者金融で金を借り、その返済のためにまた別の消費者金融で借りるといった自転車操業の状態だったと言える。


 負債ランキング7位の武田薬品工業もトヨタ同様、“成長を見据えた借金”だと判断されているようだ。


「武田薬品工業は、昨年1月にアイルランドの製薬大手シャイアーを買収したことで有利子負債は従来の約1兆円から約5兆円にまで膨らみましたが、この日本企業として過去最大のM&Aで、世界の製薬大手の一角に食い込みました。その投資の結果はまだ出ていませんが、武田に注目している投資家は多い」(同前)


 2位のソフトバンクグループも同じく“投資のための借金”がメインだが、雲行きは怪しい。


「ソフトバンクGはもはや投資会社です。投資のためには豊富な資金が必要で、それを借金で調達していた。孫正義社長の投資拡大路線で成長してきたが、このところ巨額損失を出しており、経営を圧迫しかねない。


 また、自己資本比率が20%以上であれば企業経営の状態は健全とされていますが、同グループは2020年3月期決算で自己資本比率が15.9%となっている。武田薬品工業の自己資本比率は36.8%で、両社の事情は大きく異なります。かつてスーパーのダイエーも自己資本比率20%を割り込み、経営危機時は一桁台にまで低下しました」(同前)


※週刊ポスト2020年11月6・13日号

NEWSポストセブン

「トヨタ」をもっと詳しく

「トヨタ」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ