本格EV時代を前にパナソニックが「業態転換」

11月9日(金)6時14分 JBpress

エンターテインメントの観点で展示した完全運転自動EVコンセプト(筆者撮影、以下同)

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(桃田 健史:自動車ジャーナリスト)

「これって、パナソニックがトヨタの『e-パレット』を提供するってことか?」

 会場に集まった自動車業界関係者の中から、そんな声が聞こえた。

 パナソニックは創業100周年を記念して、2018年10月30日〜11月3日に都内で「クロスバリュー・イノベーションフォーラム2018」を開催。「次の100年の≪くらし≫をつくる」をテーマとして、次世代事業についての展示や講演、パネルディスカッションなどを行った。

 その中で、メイン展示会場の主役となったのが「新しいモビリティ」の世界である。

 同社の津賀一宏社長は基調講演で、「くらしアップデート業」というパナソニックの新たな企業価値を提示した。移動に関しても、部品メーカーとして自動車産業に関わってきたこれまでのポジションを大きく転換すると述べた。

 乗用車向けの車載器部品や、米EV企業テスラ向けの円筒型電池など既存ビジネスは継続しつつ、パナソニックが自らモビリティ事業に直接参入するというのだ。

 そうした企業としての意思表示を具現化したのが、完全自動運転EVのプラットフォームである。

 EVの主要部品であるモーター、インバーター、そして蓄電池というハードウエアと制御ソフトウエアはもとより、各種事業者向けに様々なサービス事業を提供するという。


モビリティサービスの元請けに?

 展示内容を見ると、郵便、宅配、移動飲食店など、EVプラットフォームをベースとして各種サービス事業に衣替えするイメージだ。これはまるで、2018年1月に米ラスベガスで開催された世界最大級の家電・IT見本市「CES2018」でトヨタが出展した「e-パレットコンセプト」のようなビジネスモデルである。

 だが、今回の完全自動運転EVプラットフォーム事業の企画担当者によると、「トヨタ向けを想定しているわけではない」と、きっぱり否定した。

 加えて、「交通インフラ事業者や大型商業施設デベロッパーと量産化に向けた話し合いを始めたところ」であることを明らかにした。パナソニックとしては土木事業におけるゼネコンのような立場で、モビリティサービスの元請けになろうとしているようだ。

 だが、そうなると、トヨタの「e-パレット」とのすみ分けをどうするのか? また、パナソニックとトヨタは、角型リチウムイオン二次電池の開発で連携を発表しているが、こうした技術領域での連携とサービス事業の連携は今後どうなるのか?

 さらに先日、ソフトバンクとトヨタが、ビックデータや画像認識システムを活用した自動運転技術開発を連携して進めると発表した。そこにパナソニックはどのように絡んでいくのか?

 今のところ、具体的な方向性や戦略は見えてこない。現状では、パナソニックは様々な連携の中での「可能性を探す」という立場にあるように筆者には思える。


完全自動運転はすでに実証実験の段階

 さて、電動車の技術領域ではテスラをはじめ多くの実績があるパナソニックだが、自動運転技術についてはどのような開発を行っているのか?

 メディアで取り上げられることは少ないようだが、実際には独自車両を仕立てて、公の場で走行している。

 例えば、福井県永平寺町では昨年(2017年)、町内にある全長約6キロメートルの遊歩道「参(まい)ロード」で実証試験を行った。同地では、経済産業省・国土交通省によって専用空間での端末交通実証試験が行われているが、パナソニックの実証試験はこうした国の動きとは別枠だった。

 使われた車両は2人乗りのEVである。地上局を設置して測量精度を上げるRTK方式のGPSや各種センサーを搭載した専用車両が「参(まい)ロード」を走行する風景を、地元住民が静かに見守った。

 今回発表された完全自動運転EVでも、永平寺町実証で蓄積された基礎データが応用される。けっして「まずはコンセプトモデルを出して、実証はこれから」というような“ハリボテ”の展示ではないのだ。

 100年に一度の自動車産業の大変革。それは、技術領域のみならず、モビリティサービスに関わるすべての領域で十分に起こり得る。

 2021年頃の量産化を目指すというパナソニックの新しいモビリティ事業。今後の動きをじっくり見ていきたい。

筆者:桃田 健史

JBpress

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