ついに日本に歩み寄ってきた文在寅政権の本音

11月10日(日)15時15分 プレジデント社

日中韓や東南アジア諸国連合(ASEAN)など16カ国が参加する東アジア地域包括的経済連携(RCEP=アールセップ)首脳会議の記念撮影で並ぶ安倍晋三首相と韓国の文在寅大統領ら。タイ・バンコク近郊で11月4日。 - 写真=AA/時事通信フォト

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■文氏が「少し座ってお話しましょう」と呼びかけた


徴用工判決問題を巡って韓国が日本に「対話」を強く求めている。


たとえば文在寅(ムン・ジェイン)大統領は10月4日、バンコクで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議の会場内で安倍晋三首相とソファに腰掛けて言葉を交わした。



写真=AA/時事通信フォト
日中韓や東南アジア諸国連合(ASEAN)など16カ国が参加する東アジア地域包括的経済連携(RCEP=アールセップ)首脳会議の記念撮影で並ぶ安倍晋三首相と韓国の文在寅大統領ら。タイ・バンコク近郊で11月4日。 - 写真=AA/時事通信フォト

会場の控室で安倍首相が文氏と握手をして挨拶した際、文氏が「少し座ってお話しましょう」と呼びかけ、安倍首相がこれに応じた。事前の準備はなく、2人の英語通訳だけが同席したという。日韓両政府とも「首脳会談」とはせず、日本政府は「言葉を交わした」、韓国大統領府は「歓談した」と説明した。


元徴用工に対する賠償を日本企業に命じた昨年10月の韓国大法院(最高裁)の判決以来、正式な会談を調整できない状態が続いていた。座って話したのは、昨年9月のニューヨークでの日韓首脳会談以来である。



■日韓関係の改善努力をアメリカに示したい


安倍首相と文氏の会話は11分間と短かったが、文氏は「私たちが申し上げていることが、解決策の全部ではない。いくつもの選択肢が考えられる。引き続いて話し合いたい」と語り、韓国側の窓口を大統領府の高官とする案も示した。


正式な首脳会談の実現につなげるために文氏の側近に対応させようというのだろう。


韓国は日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の失効が11月23日に迫り、アメリカから協定の維持を何度も求められている。今回、文氏が安倍首相と11分間、言葉を交わした裏には、日韓関係の改善に努めていることをアメリカに示す狙いがある。同盟国アメリカに対するポーズなのである。文氏はかなり困っているのだろう。


■アメリカは「GSOMIA」の継続を強く求めている


アメリカは本気だ。真剣だ。北朝鮮がミサイル・核の開発を続けるなか、米国防総省は11月7日、エスパー国防長官が13日から韓国などアジア4カ国を歴訪すると発表した。韓国の鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)国防相と会談し、GSOMIAの継続を強く求める方針だ。さらにスティルウェル米国務次官補も11月6日、韓国を訪問し、康京和(カン・ギョンファ)外相ら韓国政府高官に対し、協定の継続を要請した。


日本政府はこのアメリカの動きを見逃してはならない。アメリカの動きをテコに使って韓国政府を説き伏せる必要がある。


11分間の話し合いの中で、安倍首相は文氏にこう伝えたという。


「元徴用工らへの請求権問題は、1965年の日韓請求権・経済協力協定で解決済みで、韓国側が国内問題として解決すべきだ。外交当局間の協議を通じて懸案を解決したい」


これまで日本政府が主張している原則的立場である。正論だ。主張はぶれていない。説得力があり、評価できる。



■韓国はアメリカの言動に敏感になっている


ここでアメリカがGSOMIA継続を求めて韓国を揺さぶっている状況を利用しない手はない。


アメリカの動きに合わせ、韓国に適切な対応を求めるのだ。できればアメリカにそれを言わせることである。その言葉は遠回しで構わない。水面下の調整的な発言でもいい。


安倍首相とトランプ米大統領と親密さは、文氏もよく知っている。韓国はアメリカのちょっとした言動に敏感になっている。効果はあるはずだ。


12月下旬には中国で日中韓の首脳会談が行われる。中国の習近平(シー・チンピン)国家主席が顔を出すと、話がこじれる。日本政府はそれまでに日韓改善の糸口をしっかりつかんでおきたい。


韓国の文喜相(ムン・ヒサン)国会議長は10月5日、東京都内で講演し、「徴用工問題の解決に向けた新たな立法措置を検討中だ」と明らかにした。日韓両国の企業や韓国政府が関与する基金を設立し、元徴用工らへの賠償を肩代わりさせる案だというが、「韓国側が国内問題として解決すべきだ」との日本政府の原則から外れる。


ちなみに文議長は、慰安婦問題を巡って「天皇陛下の謝罪が必要だ」との今年2月の発言について、「日本の方々の心を傷つけた。申し訳ない」と陳謝した。当然である。なぜもっと早く謝罪できなかったのか。


■日韓関係の悪化は北朝鮮を喜ばせるだけだ


「不信感を深めていた両首脳が、ようやく向き合ったことは一歩前進だ。日韓関係は元徴用工問題に端を発し、極度に悪化した。これを、本格的な関係改善につなげてほしい」


こう冒頭部分で書くのは、11月6日付の毎日新聞の社説だ。


毎日社説は「まずは、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)が継続されるように外交努力を急ぐべきである」と主張し、次のように指摘する。


「GSOMIAは、日米韓3カ国による安全保障協力の象徴的な枠組みである。協定の締結により、北朝鮮問題での3カ国間の情報共有がスムーズになったといわれる」


「北朝鮮は協定の破棄を韓国に迫っていた。実際に破棄された場合、日本との安全保障協力の見直しに向けて韓国への圧力を一層強めることが予想される」「そうなれば、北朝鮮の核・ミサイル問題の解決はさらに困難になろう。中国とロシアを利するとの指摘もある」


日韓関係の悪化は北朝鮮を喜ばせることになる。同様に中国とロシアも陰に陽にと、恩恵を受ける。韓国にはそこを十分理解してほしい。



■安保と経済を一緒にする韓国の主張には無理がある


さらに毎日社説は指摘する。


「ただし、日本が輸出規制を撤回すれば、GSOMIAの破棄決定も取り下げるという韓国の主張には無理がある」


毎日社説が指摘するように、韓国の主張はどこから見ても「無理」なのである。韓国は感情的になっている。


「確かに、日本が輸出規制を発表した際、元徴用工問題への対抗措置との認識を示唆したのは不適切だった。日本が歴史問題と通商政策を絡めるべきではなかったのと同様に、韓国も経済問題と安全保障政策は切り分けて判断するのが筋だ」


「歴史問題と通商政策」「経済問題と安全保障政策」。やはり、次元の違う2つを一緒にして論じるところに大きな無理が生じるのだと沙鴎一歩も思う。


毎日社説は韓国の反発を「感情的もつれ」とみなす。


「韓国が輸出規制に強く反発するのは、『植民地支配を受けた被害者が、なぜ加害者である日本に報復を受けるのか』という感情的なもつれがあるためだ」


■「融和ポーズに騙されるな」と産経社説


次に産経新聞の社説(11月6日付)を読んでみよう


「日韓関係 融和ポーズに騙されるな」という見出しからして嫌韓調である。


書き出しも「『徴用工』判決問題をめぐる韓国の文在寅大統領や文喜相(ムン・ヒサン)国会議長の最近の言動を見ても、対日関係改善の熱意は薄いと思わざるを得ない」と韓国政府に手厳しい。


「一歩前進」とする毎日社説とは大きく違う。おなじニュースを取り上げても新聞社によって社説の内容は異なる。そこが社説を読み比べるおもしろさである。


産経社説は訴える。


「両首脳は訪問先のタイ・バンコク郊外のホテルで11分間言葉を交わした。着席しての対話は1年1カ月ぶりだ。持ちかけたのは文大統領だが韓国側が非を改めるという表明はなかった。単なる融和のポーズに騙されてはならない」


「韓国側が非を改めるという表明はなかった」とまで指摘するが、その根拠はどこにあるのだろうか。



■韓国を攻撃するだけでは、先に進むことはできない


「来日した文議長は、昭和天皇と上皇陛下に対する重大な非礼、侮辱を公式謝罪することもなく、日韓の企業などから寄付を募って元徴用工に支給する法案を検討中だと触れて歩いた。問題点ばかりの『提案』に応じてはならない」


分からなくもないが、これもまた厳しい指摘と主張である。この産経社説を書いた論説委員はよほど韓国が嫌いなのだろう。


さらに産経社説は文議長の掲げる法案を真っ向から否定する。


「日本の朝鮮統治時代をめぐる相互の請求権は日韓の協定で『完全かつ最終的に解決』され、国交が正常化した。その交渉過程で韓国側は、個人補償は韓国政府の責任で行うと明言もしている。寄付も含め、日本側が金銭を支払う必要は毫もない」


産経社説はこうも書く。


「韓国がつくり出した国際法違反の状態は、足して二で割るような妥協で解決できる問題ではない。日本の一部メディアなどには日韓双方に歩み寄りを求める声がある。事の深刻さを理解せず、韓国による不法行為の被害者である日本の立場を踏まえない愚論だ」


一体、「日本の一部メディア」とはどこの媒体なのか。ケンカを売るなら、具体的に名前を挙げるべきだろう。


それになぜ「日韓双方に歩み寄り」を求めてはいけないのだろうか。ときには相手国の立場に立って考える余裕も、外交には必要だ。外交も人間と人間との対話である。対話にはバランス感覚が求められる。産経社説のように攻撃するだけでは、先に進むことはできまい。






(ジャーナリスト 沙鴎 一歩 写真=AA/時事通信フォト)

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