関西のセレブタウン芦屋に程近い「裏岡本」に注目高まる理由

11月10日(日)7時0分 NEWSポストセブン

阪急神戸線「岡本駅」周辺

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 横浜とともに日本を代表する港町の「神戸」。三宮など繁華街は今や全国チェーンの飲食店が軒を連ね、昔ながらの風情は失われつつある。だが、三宮と西宮の間に位置し、セレブタウンの芦屋にも程近い町「岡本」周辺には、おしゃれな喫茶店や雑貨店などが多数あり、県外からの注目度も高まっているという。神戸国際大学経済学部教授で総務省地域創造力アドバイザーの中村智彦氏が、“裏岡本”の魅力を紹介する。


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 10月下旬、JR西日本が終電時間の繰り上げを検討しているというニュースが流れた。働き方改革や保線業務に当たる社員の確保が難しいといった理由からだ。しかし、もうひとつ理由として、深夜の利用客が減少していることが挙げられた点については、少し複雑な思いを持った人も多いようだ。


 JR三宮駅の深夜0時の利用客は、2018年度と比較して19%も減少しているという。三宮で古くから飲食店を営む経営者も、こう寂しそうに言う。


「震災後、三宮駅前の飲食店は次々と全国チェーン店に変わり、客引きが並ぶ光景は以前の神戸にはなかった。震災前の賑わいはもう戻らないのかもしれない」


 60代のサラリーマンも、「神戸らしい店がめっきり減って、久しぶりに訪れた友人が『これでは大阪市内と変わらない』と嘆いていた」と話す。筆者も知人が神戸を訪問した際に、「神戸らしさがなくなったね」と言われたことは一度や二度ではない。


 もちろん、まだまだ古くからの店や個性的な店も頑張っているのだが、JR三宮駅周辺の繁華街は様変わりしてしまった印象は否めない。


 個人店が減り、チェーン店が増加している理由のひとつは、不動産価格の上昇だ。国道交通省が3月19日に発表した公示地価で、兵庫県内の商業地は2.4%増と4年連続で上昇した。商業地の最高価格も三宮センター街の同市中央区三宮町で前年度比24.9%増で8年連続の上昇だった。


「再開発されたビルの賃料は高くなり、個人経営にとって経営するのが難しい水準になっている。経営者も高齢化しており、閉店した後には複数店舗を持つチェーン店になっている」(三宮で飲食店を営む男性)


 そうした一方で、平成30年の神戸市の観光入込客数は合計で3538万人と前年度比10.1%と大幅な減少となり、インバウンド効果がまだなかった2015年ごろと同水準となった。


 そんな中で、「昔の神戸っぽい雰囲気のある店が多い」と知人たちが評価するのが、阪急神戸線の芦屋駅から岡本駅周辺だ。特に、岡本駅周辺は、古くからの店に加えて、新しくオープンした店も含め、隠れたおしゃれなエリアになっている。


 例えば、阪急岡本駅の山側に並ぶ3軒の民家が店舗に改装され。人気を呼んでいる。岡本駅の南側はJR摂津本山駅に続く緩やかな斜面に商店街が続いている。


「北側はすぐに住宅が並んでいたところなので、私たちで“裏岡本”と呼んで盛り上げようとしているんです。先日も、以前、ここにお住まいだったという方がお見えになりました」


 と、女性向けの古着や雑貨も扱う「マザーミーツ喫茶店」の店主、浅見瞳さんが話す。


 民家を改造した店舗なので、カレーレストラン「ヒーハーカレー」でカレーを食べていても、ブティックでコーヒーを飲んでいても、まるで知り合いの家に招かれているような、ゆったりした時間が流れる。


 ヒーハーカレーのオーナーでデザイン会社を経営する家崎美明さんは、「岡本でも表通りはビルに建て替わり、チェーン店になっています。少し外れた裏通りなどで個人店が頑張っているのです」と話す。11月からはこうした個人店7店のオーナーで協力し、カルチャーやグルメの学びの教室を28コース開設する「裏岡本学園」も開催する。


 岡本駅には女子大学があり、もともと若い女性の割合が高く、おしゃれなブティックや雑貨店が並ぶ。さらに高級住宅地を控えていることから、老舗のパン屋や料理店なども多い。


 そんな町に最近、若い世代が「古民家」のような個性的な店を開くケースが増えた。


 駅の南側、商店街の通りから一筋入ったところの集合住宅「マンション藤」の1階にはユニークな店舗が並んでいる。その中の一軒、「まめ書房」は沖縄の本と工芸の店だ。セレクトショップとして沖縄産の工芸品や食品なども並ぶが、中心は沖縄に関する書籍。関西でも、沖縄関係の書籍をここまで揃えている店は他にないだろう。本を眺めていると、さんぴん茶を勧められた。


 このマンション藤は、2階以上には普通に住民が住んでいるので、1階の店舗に行くのも、まるで誰かの住んでいる住宅を訪問する気分だ。昔の集合住宅の鉄製の扉を開くと、店舗になっている。


 このマンション藤のすぐ近くにある「清風園」という集合住宅でも、1階にネイルサロンが入り、2階にはカフェがある。団地のような建物の階段を上がると、一室を改装した「ひつじ茶房」がある。ここもやはり誰かのお宅を訪問する気分だ。


 店名は、岡本でかつて40年以上続き有名だった児童図書専門店「ひつじ書房」からもらったというだけあり、店内は絵本など本や絵で溢れている。まるで居心地の良い図書館のような空間だ。岡本のある東灘区には、こうしたカフェや洋菓子店も多く、11月24日まで「ひがしなだスイーツめぐり」が開催されており、ひつじ茶房もアーモンドのチーズケーキなど特別メニューを目当ての客が訪れている。


 岡本駅周辺には、高級住宅地があり、古くからの富裕層向けの店から、女子大生向けのおしゃれなカフェまで、高級感とおしゃれ感が併存している。表通りは家賃も高くなっておりチェーン店が増える一方、築年数が経った民家や集合住宅を活用した裏通りの個人店も増えている。こうした個人店の頑張りが、「昔の神戸っぽい」高級感とおしゃれな雰囲気を醸し出している。


 若い世代が“神戸らしさ”をしっかり受け継いでいる小さな町、岡本。ちょっと足を延ばして訪れてみるのも良いのではないだろうか。

NEWSポストセブン

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