「11月11日は独身の日」楽天の1年間の売り上げを、この1日だけで上回るアリババの戦略

11月11日(月)6時0分 文春オンライン

 11月11日は、「1」がたくさん並んでいるという理由で、若い人たちのあいだで、ふざけて「独身の日」と呼ばれていた。すなわち独身を祝ったり、デートや結婚の相手を探す日だった。けれども、いまやそんなことはすっかり忘れ去られてしまった。なぜなら、中国の巨大IT企業アリババによるeコマースイベントが敢行される、“人類史上最大のショッピングデー”へと変貌したからだ。



アリババの前最高戦略責任者のミン・ゾン氏


楽天による1年間の売り上げを、この1日だけで上回った


 昨年は、この1日だけの売り上げが3.5兆円。楽天による1年間(注・1日ではない)の売り上げである3.4兆円を抜いたため、日本でも大きなニュースとなった。


 そもそもこの企画を考えたのは、アリババグループの大手ブランド向けeコマースサイト「天猫(Tモール)」の従業員だった。アメリカで盛り上がっている「ブラックフライデー」や「メモリアルデー・セール」のようにできないかと、まねごと気分で始めたのだ。やがてそれが1日の売り上げとして類を見ないイベントになるとは、夢にも思っていなかった。


 いまや中国全土を席巻する“独身の日”には、一体、何が起きているのか。そして、その舞台裏はどうなっているのかを、お見せしよう。



「5、4、3、2、1」そして目の前で魔法が起きた


 2年前の2017年11月11日を振り返ってみたい。当時アリババ最高戦略責任者だった私は、前日の深夜、コマンドルームで待機していた。ずらりと並んだコンピュータ画面には数字が点滅し、トレンドラインが描かれ、ネットワーク速度や反応度が評価される。


 中国全土はもちろん、世界中のユーザーの指がスマホ画面の上で待機している。午前0時が近づくと、カウントダウンがはじまった(もちろん、中国全土でテレビが生中継している)。


「5、4、3、2、1」


 そして、私の目の前で魔法が起きた。



・わずか11秒で1億元(1500万ドル)を売り上げた


・7分23秒経ったところで処理された取引された件数は1億件へ 


・午前0時のセール開始からわずか12分後に最初の荷物が上海の消費者の自宅に届いた。


・午前4時までにカナダ産エビ300万匹アルゼンチン産のクルマエビ160万匹が注文された。


・午前9時までには粉ミルク5000トン使い捨てオムツ10億枚が売れた。


(衣料品、家庭用品、電子機器、宝飾品など、ありとあらゆるものが売れた)


・この日に出荷した荷物を全て並べてみたら地球1200周ほどになった。


・すベてを積み込むにはボーイング747型機が8万機以上も必要。


・荷物の総移動距離数は6276億4416万キロメートル(地球と冥王星のあいだを40往復以上する計算となる)


 いくら「ひらけ、ゴマ」といっても、ここまでくると想像を絶する。圧倒的なスピード感のもと、巨大スケールのネット通販が可能なのは、なぜか。アリババ全社員がこの日に向けて、何カ月もかけて懸命に準備を進めてきたからだ。ITシステムからフロントエンドのウェブサイト、決済システム、在庫管理から物流に到るまで、である。



「アリババはいずれ、最高なケーススタディになる」


 よく間違われるのだが、われわれはいわゆる“中国版アマゾン“でない。アマゾンは、「データ」に優れている会社だ。だがアリババは「データ」のみならず、「ネットワーク」をも構築している。「データ」と「ネットワーク」という2つの要素が、まるで「陰」と「陽」のように融合し、洗練され、進化しているのがわれわれの強みだ(このアリババ式「陰陽ビジネスモデル」は、「スマートビジネス」と呼ばれている)。



 アリババは1999年、ジャック・マーが自分の小さなアパートで18人のスタッフとともに始めた。INSEAD准教授だった私が2006年、ジャック・マーから直々にアリババ入社を誘われたときの決めゼリフはこうだった。「アリババはいずれ、あなたが書きたいと思うような最高なケーススタディになるから」。まさにその通りになった。




(ミン・ゾン)

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