特報! 関西電力の調査委員長が積水ハウスでも暗躍

11月11日(月)6時0分 JBpress

(写真はイメージです)

写真を拡大

 関西電力による金品授受問題を受け、関西財界で一人の弁護士の存在がクローズアップされている。

 小林敬氏——。彼は大阪に拠点を持ついわゆる〝ヤメ検″の弁護士である。

 小林氏は関西電力の金品授受問題に関し「調査委員会」の委員長を務めていたが、さらに別の企業不祥事でも調査に携わっていた。積水ハウスが55億円もの損失を出したあの「地面師事件」でも、被害にあった同社の「調査対策委員会」の委員を務めていたのだ。

 どちらの事件も企業の「隠ぺい体質」が指摘され、その姿勢が批判されている。そして、その両社の調査に関わっていた小林氏の行動に、一部で疑問の目が向けられている。


関電事件と積水ハウス「地面師」事件

 関西電力の問題では小林氏が委員長を務めた「調査委員会」での調査の杜撰さが批判されているが、積水ハウスの地面師事件においても全容解明を目指した「調査報告書」について、その公表を頑なに反対した一人として、調査対策委員会のメンバーの「不評を買っていた」というのである。

 事情に詳しい積水ハウスの幹部が言う。

「積水ハウスの地面師事件では、調査対策委員会が取締役会に提出した『調査報告書』が公表されないままになっている。このため国内外の株主や一部のマスコミからは『隠ぺい体質』『コーポレートガバナンスの不全』と指摘され、関西電力と同じ批判が巻き起こっています。

 積水ハウスが「調査報告書」を公表しないのは現経営陣が拒否しているからです。しかし実は当初、調査対策委員会では独自に「調査報告書」を公表しようという動きがありましたが、実現しませんでした。その背景には小林弁護士の存在があったとされています」

 関電と言い、積水ハウスと言い、その隠ぺい体質と批判を受ける問題の背後に小林弁護士がいると目されるのはなぜなのか。いったい小林弁護士とは何者なのだろうか。

 関西電力の「調査委員会」と積水ハウスの「調査対策委員会」での彼の動きを詳しく見ていくが、まずは彼が検事だった時代にも今回の構図とよく似た事件が発生しているので、そこから紹介していこう。


大阪地検証拠改ざん事件での「功績」

 小林氏は1951年生まれの68歳。76年に検事に任官し、2010年に大阪地方検察庁検事正に就いている。

 この年、あの厚生労働省元事務次官の村木厚子さんの事件として知られる「大阪地検特捜部主任検事証拠改ざん事件」が発生。前代未聞の検察不祥事だった。

 証拠改ざんに加わった主任検事や、当時、大阪地検特捜部長だった大坪弘道氏、同副部長の佐賀元明氏が逮捕される中、その上司として「改ざん」についての報告を受けていたのが小林氏だった。冤罪を生みかねない極めて悪質な「改ざん」にもかかわらず、小林氏は大坪氏から「過失によるデータ改変」としか報告されなかったということで、大坪氏らのように刑事責任を問われることもなく、懲戒処分を受けて検事正を辞任しただけで終わった。この時、小林氏は、データ改変が行われたという報告を上級庁に伝えなかった。

 大坪弘道元特捜部長の控訴審の代理人を務めた郷原信郎弁護士はこう指摘する。

「2013年9月25日に大阪高裁で言い渡された大坪氏、佐賀氏ら両被告の控訴審判決では小林氏らについて『重大事件における最重要の証拠であるデータに手を加えたという重大な不祥事との認識を持って、被告人両名に対し、真相の解明を急ぐなど迅速な対応を指示するとともに、上級庁にも直ちに報告すべきであった』と、大阪地検の最高幹部としての小林氏の責任を厳しく指摘しています」

 結果的に小林氏が「重大な不祥事」に対して反応せず、上級庁にも報告しなかったことで、事件を大阪地検内部にとどめ、大阪高検、最高検へと責任を拡散することを防いだようにも見える。それは、検察の世界にとっては、大きな「功績」と言えるものになったのではないか。

 小林氏はこの監督責任を問われ懲戒処分を受けて検事を退官したが、検事を辞めた後、弁護士登録した小林氏を迎え入れたのは、大物検察OBだった。小林氏のその後の経歴には、関西に強い影響力を持つ元検事総長の土肥孝治氏の存在が見え隠れしている。

 というのも、小林氏は13年には阪急阪神ホテルズの「食材偽装問題」を受けて同社の第三者委員会の委員長を務め、さらに17年には積水ハウスの監査役に就任しているのだが、阪急阪神ホテルズの親会社の阪急阪神ホールディングスにも、積水ハウス、また関西電力のいずれにも土肥孝治氏が監査役に就いていたからだ。

 小林氏が今回の関西電力の問題で調査委員会の委員長に就いたのは昨年のこと。土肥氏が同社の監査役を担っていた時期だ。そしてそこでの小林氏の仕事ぶりはと言えば、高浜町の森山栄治元助役(以下、元助役)から金銭を受け取った関西電力の経営陣や幹部たちに寄り添ったものだったと言ってよい。

 その内容を詳しく見てみよう。


関西電力の闇

 今回の関西電力の問題は、同社の幹部20名が3億2000万円もの金品を、元助役から受け取ったというもので、その中に経営トップの八木誠会長や岩根茂社長までもが含まれるという前代未聞の不祥事だった。

 事件発覚の端緒は昨年、関西電力の発注会社である建設会社への国税当局の査察。これを受けて関西電力は、幹部らが建設会社の顧問を務めていた元助役から金品を渡されていたことを把握し、弁護士3名と副社長1名と常務執行役員2名による調査委員会を立ち上げる。この委員長に就いたのが小林氏だった。調査委員会は昨年9月11日に報告書をまとめ、10月に常任監査役へ報告した。

 しかしその報告書の内容は、責任の所在があいまいなものだった。

 小林氏は「(小林弁護士所感)」という文書を報告書に添付して、コンプライアンス上の問題を指摘するものの、「不本意な形ではあっても誠実な対応を続けた挙げ句、税務当局との関係でも多額の出捐を余儀なくされた担当者らの境遇には、むしろ同情さえ禁じ得ない」と個人の金品受領への対応を正当化したうえで、「このような非常識で困難な対応を当該職員の個々に迫った原因は、結局のところ、会社あるいは組織としての対応をするという決断を、会社がなしえなかったこと、その勇気が幹部らになかったことに尽きるのであって、その点は、大いに反省を求めざるを得ない」と指摘している。

 要するに、小林氏は「収賄罪」や「特別背任」にも問われかねない幹部らの行いについて、その違法性を指摘するどころか、幹部個人の経営上の責任についても、一切踏み込むことはなかったのである。

 朝日新聞(10月6日朝刊)の報道によれば、関西電力のある監査役は「元検事が違法性なしと判断した点を考慮して、監査役会として行動はしなかった」と証言している。小林氏が委員長として作成した報告書が免罪符の役割を果たしてはいなかったか。

 この報告書は監査役会では共有されたが、取締役会に報告されることはなく、経営をチェックする社外取締役の目にも触れることはなかったという。結局、報告書が公開されたのは報道による問題発覚後の10月2日のことだった。

 八木会長と岩根社長が報道による批判が高まるまで辞任しなかったのも、この報告書の影響があったと考えざるを得ない。結局、この「調査委員会」での調査では十分ではなく、関西電力は新たに第三者委員会を設置することとなった。

 共同通信ニュース(10月2日)によれば、小林氏は報告書の公開について問われ「会社の判断に任せた」と話しているというが、当時、関西電力の監査役には土肥氏が就いていた。その監査役会で報告書は留め置かれ、経営の最高機関である取締役会に報告されていない状況は、まるで大阪地検の「証拠改ざん事件」の際に小林氏が取った行動と似通っている。これは偶然なのだろうか。

 こうした情報公開への後ろ向きな姿勢は、積水ハウスの地面師事件の「調査報告書」の公表の問題についても色濃く反映されたというのが、前出の積水ハウス幹部の見立てである。


積水ハウスの地面師事件「報告書」公開に一人、反対

 積水ハウスが約55億5900万円の損失を出した地面師詐欺事件は、17年6月に社内で発覚。当初、全容解明に積極的な和田勇会長(当時)のもと取締役会の要請で調査対策委員会が立ち上がった。社外監査役の篠原祥哲氏が委員長を務め、2名の社外取締役、そして社外監査役である小林敬氏がメンバーとなった。

 和田氏は当初から全容解明と責任の明確化、そして調査報告書の公表が念頭にあり、社内の部長クラスの会議でも「必ず全容解明をする」と宣言していた。それは委員長に就いた篠原祥哲氏や2人の社外取締役ら委員会のメンバーが和田氏に「しっかりと調査をして、結果を公表するべきだ」と迫ったことがきっかけだったという。

 その調査対策委員会がまとめた「調査報告書」は、当時の社長だった阿部俊則氏(現会長)について「経営上、重い責任がある」とその責任を明確に指摘している。

 先述したが、実はこの「調査報告書」については、積水ハウスはいまだ公表していない。筆者はその「調査報告書」を入手し、オンラインメディアでその内容を報じてきた。また最近では「週刊東洋経済」(10月19日号)でも、「調査報告書」について6ページの特集を組んでその内容が詳報されている。こうしたメディアの取材に対しても、積水ハウスは「公表しません」の一点張りである。

 ところが筆者が取材を進めたところ、「調査報告書」の作成中、調査対策委員会が取締役会から独立した機関であることを前提に「調査報告書」を独自に公表するという意見があったことが、このほど明らかになった。またこの際、メンバーの小林敬弁護士がただ一人反対したことで、公表は見送られてしまったというのである。

 この情報を筆者は信頼できる複数の情報源に確認したのだが、積水ハウスの広報部は、この事実関係の認識を問う筆者の取材にこう反論した。

「ご指摘の調査報告書は調査対策委員会から弊社取締役会に提出されたものであり、もとより第三者への開示は予定されておりませんし、その取扱いにつきましては、弊社が判断するものであります」

 しかし積水ハウスのこの主張は、現経営陣がクーデターを起こしたことと無縁ではないだろう。

 調査対策委員会による独自の公表が見送られた後、積水ハウスでは「調査報告書」の開示に積極的だった和田会長(当時)が、報告書で責任を明確に指摘された阿部社長(当時)の“クーデター”によって失脚する。まさにこの調査報告書が正式に取締役会に提出された18年1月24日のことだった。

 このクーデターのあと会長職に就いた阿部氏ら現経営陣こそが、調査報告書の公表を頑なに拒否しているのだ。


隠ぺいと論功行賞

 積水ハウスの調査対策委員会が示した「調査報告書」には、地面師事件の取引を決裁した阿部氏の責任が明確に示される一方で、同報告書では必ずしも責任が明確とされていない地面師事件に関与した執行役員が、事件を契機に退任している。

 しかし阿部氏は会長の座に就き「いまや実力者のようにふるまっている」(積水ハウス社員)。さらに3人の役員がこの決裁の稟議書に判をついたことが分かっているが、彼らはクーデターで阿部氏に同調し、まるで論功行賞のような人事を経て全員が代表取締役に昇格している。その結果、彼らの報酬は大幅にアップした。

 関西電力しかり、積水ハウスもしかりだが、日本の上場企業では、不祥事についていまだに情報開示が徹底されない。特に不祥事を契機として内紛が勃発した積水ハウスの例は、恣意的な「論功行賞」や「処断」が横行しているのではないかと、不審の目が向けられやしないだろうか。

 コンプライアンスや企業統治にも詳しい前出の郷原弁護士はこう指摘する。

「公益を担う組織で重大な問題の隠ぺいが平然と行われるようになることほど、社会にとって不幸なことはない。ただでさえ閉鎖的な日本の大組織が、さらに不透明となることで、組織は劣化を繰り返し、さらに重大な不祥事を起こすことになるでしょう。それをまた隠ぺいすることができるのは、それだけ権力の集中が進んでいるということです」

 なお小林氏が所属する弁護士事務所に小林氏への一連の批判について認識を問う取材を依頼したところ、小林氏は事務職員を通じて「個別、取材には応じられない」と返答した。

 果たして日本の上場企業のガバナンスは、いまの時代に本当に相応しいものなのだろうか。

筆者:藤岡 雅

JBpress

「関西」をもっと詳しく

「関西」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ