「妻の友人と自宅不倫」的な後味悪さ…東京の女子でなく「地元香川で元グラドルと逢瀬」玉木雄一郎代表の罪深さ
2024年11月12日(火)17時15分 プレジデント社
写真=共同通信社
首相指名の衆院本会議後、取材に応じる国民民主党の玉木雄一郎代表=2024年11月11日午後4時46分、国会 - 写真=共同通信社
■国民民主党大躍進から一転のスキャンダル
10月27日に投開票が行われた衆院選では、与党の自民党と公明党が大幅に議席を減らして過半数割れとなった一方、立憲民主党と国民民主党は議席を大幅に増やした。
特に、国民民主党は選挙前の4倍にあたる28議席と大躍進し、自民党と立憲民主党の双方からラブコールを受けるようになった。党代表である玉木雄一郎氏は政局のキャスティングボートを握る「時の人」となり、衆院選で公約した「手取りを増やす」「年収103万円の壁」スローガンとともに連日メディアに登場するようになった。
そのキーマンにスキャンダルが発覚した。
11月11日午前6時、〈玉木雄一郎氏「高松観光大使」元グラドルと隠密不倫デート&地元ホテルで逢瀬〉というWeb記事が公開されたのだ。
これを受け、午前9時半に玉木氏は衆議院議員会館で「概ね事実です」と記者会見を開いて謝罪した。同日午後、国民民主党は両院議員総会・代議士会を開催し、玉木氏の代表続投と、首相指名選挙で玉木雄一郎代表に投票することを全会一致で決めた。
そして、同日18時45分から都内で開催された国民民主党の街頭演説では、榛葉賀津也幹事長を伴った玉木氏は群衆に向かって深々と頭を下げる……という慌ただしい一日となった。
■罪深い地元不倫
SNSの反応を見ると当然「がっかりした」といった批判の声は多いものの、辞任要求は少ないように見える。「迅速な対応に好感」「不倫は家庭の問題」「責める権利があるのは奥さんだけ」「続投して『手取りを増やす』を実現してほしい」などと容認する声が多く、中には「財務省の陰謀」「自民党のハニートラップ」などと発信する人も存在し、ネットに親和性のある若い世代の玉木氏人気を改めて実感した。
筆者は今回に限らず「不倫は犯罪ではない」「政治家は政策で結果を出せば良い」と考える一人であるが、玉木氏のケースでは「香川の女と地元不倫」と報じられている点で罪深いと思う。
なぜ、そう言えるのか。
かつて発覚した「育休不倫」の宮崎謙介氏、「パパ活不倫」の宮澤博行氏、「赤ベンツ不倫」の広瀬めぐみ氏(いずれも当時、自民党議員)など、最近の政治家の不倫報道はあとを絶たないが、典型的な国会議員の不倫は「地方の選挙区に妻子などを残し、東京に単身赴任している隙に、東京の女子とお楽しみ」パターンが多い。
今回の報道にあったJRホテルクレメント高松は、高松駅近辺では最も格式のあるシティホテルで、会合や人の出入りが多く人目に付きやすい。地元国会議員やグラドルなら、なおさらだろう。玉木事務所も折にふれこのホテルで会合を開くことが多く(写真参照)、ホームグラウンドと言えるような場所である。
議員活動15周年パーティーのポスター(国民民主党 香川県総支部連合会HPより)
相手の女性も「高松市観光大使」ということで玉木事務所にも出入りしており、玉木夫人とも面識があったことが記者会見で明らかになっている。「香川の女と地元で密会」という報道を読んで、「奥さんの友人と自宅で不倫」のような後味の悪さを感じた香川県民は少なくないだろう。
政治家にとって選挙区は聖域である。婚外恋愛がやめられないならば、せめて「香川県内では逢わない」「事務所には出入りさせない」といった最低限の節度と矜持を持つべきだった。
今年4月の衆議院東京15区補欠選挙で国民民主党の公認候補として内定して玉木氏と共に各種メディアに登場し、その後に内定が取り消された元ミス慶應の女性が、9月に自殺する騒動があった。
渦中の観光大使も、玉木氏が「ウチの党から出馬しませんか」と口説くうちに壁の外に堕ちたのだろうか。もし、関係が明るみにならなければ、次の参院選あたりに同党の比例代表に出馬させるつもりだったのか……と考えるのは邪推が過ぎるだろうか。
■「103万円の壁」解消、財源は不明のまま
国民民主党の大人気政策「手取りを増やす」ための「103万円の壁」解消だが、「103万から178万円に引き上げ」となれば、約7兆円の税収減になると見込まれているが、その財源については明示されていない。同党は11月8日より自民・公明党と政策協議を開始しているが、「財源確保は政府・与党の責任」とひとごとのような反応である。
一方、国民民主党と同様に、日本維新の会は「現役世代の負担軽減」を公約にして、その財源として「高齢者の医療費自己負担3割」を明言したものの、今回の選挙で議席を減らしている。「代表は大阪府出身」「元幹事長の音喜多駿氏は東京生まれ東京育ち」という都市型政党の維新に比べ、「香川二区の玉木代表」「静岡選挙区出身で、ヤギの飼い主としても有名な榛葉幹事長」など農村部出身者が率いる同党では、「高齢者福祉カット」「世代間格差是正」に踏み込むのは困難なのかもしれない。
逢瀬で使用していたホテルではトークショーも頻繁に(国民民主党 香川県総支部連合会HPより)
■「尊厳死と終末期医療」で大平元首相を超える政治家に
選挙公示前の10月12日、日本記者クラブ主催の討論会で玉木氏は「若者をつぶすな(手取りを増やす)」と書かれたボードを掲げて、「高齢者医療制度を見直して現役世代の社会保険料負担を引き下げる」「尊厳死の法制化」「社会保障の保険料を下げて手取りを増やす」と提言している。
ジャーナリストの江川紹子氏が「尊厳死をこういう文脈で語ることに恐ろしさを感じる」とXで発信するなど、一部の有識者からは玉木氏が“社会保険料の負担軽減”の文脈で尊厳死に言及したことに批判が集まったが、炎上するほどの騒動にはならなかった。
SNSでは「勇気ある提言」「タブー視せず、議論が必要」などの発言も見られ、当事者の高齢者からの目立った反発はなく、選挙中も問題視されず、国民民主党は大躍進した。
選挙結果から見て、高齢有権者は「医療費3割」には抵抗するが「尊厳死」ならば受け入れやすいのだろうし、農村部出身の玉木氏や榛葉氏は地方の高齢有権者を説得するのに長けているのだろう。
香川県の政治家といえば、「瀬戸大橋に貢献した大平正芳元首相」が筆頭に挙がり、玉木氏は地元では「第2の大平正芳」として大平首相時代を知る高齢者の人気が高い。
今後、玉木氏は「終末期医療見直し」「尊厳死」にも尽力し、公約どおり「手取りを増やす」ことでスキャンダルを乗り越えていけるだろうか。
医療者のひとりである筆者としては、高齢者を説得し、北欧のように「自分で口から食べられなくなった高齢者はそのまま看取る」(それで現地の人々は納得している)といった形が日本社会の同意のもとで採用されれば、今回の汚名も簡単に吹き飛ぶのではないかと思う。瀬戸大橋以上の経済効果を日本にもたらして、大平氏を超える政治家への道筋になるかもしれない。
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筒井 冨美(つつい・ふみ)
フリーランス麻酔科医、医学博士
地方の非医師家庭に生まれ、国立大学を卒業。米国留学、医大講師を経て、2007年より「特定の職場を持たないフリーランス医師」に転身。本業の傍ら、12年から「ドクターX〜外科医・大門未知子〜」など医療ドラマの制作協力や執筆活動も行う。近著に「フリーランス女医が教える「名医」と「迷医」の見分け方」(宝島社)、「フリーランス女医は見た 医者の稼ぎ方」(光文社新書)
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(フリーランス麻酔科医、医学博士 筒井 冨美)