「スバリスト」が“スバルの現実”に抱く不安の根拠

11月14日(日)6時0分 JBpress

(桃田 健史:自動車ジャーナリスト)

 スバル(SUBARU)は2021年11月11日、新型EV(電気自動車)「ソルテラ(SOLTERRA)」を世界初公開した。

 ソルテラはラテン語のソル(太陽)とテラ(大地)を組みあせた造語だ。ボディ寸法が全長4690mm×全幅1860mm×全高1650mm、ホイールベースが2850mmの5人乗りハッチバックだ。

 駆動方式はFWD(前輪駆動)とAWD(全輪駆動)の2タイプがある。モーターの最大出力はFWDで150kW、AWDでは前後モーターがそれぞれ80kWの合計160kWとした。搭載するリチウムイオン電池の容量は71.4kWhと、日産リーフの上級モデル「リーフe+」の62kWhより約15%大きい。満充電での航続距離も、世界標準規格のWLTCモードで530km前後(FWD)とリーフe+の458kmより長い。AWDでの航続距離は460km前後としている。


トヨタとの協業体制をますます強化

 ソルテラはスバルとトヨタが共同開発したEVだ。電池や電動駆動などの技術についてはトヨタが担い、全輪駆動を制御する「X-MODE」や衝突安全技術についてはスバルが開発を主導した。

 スバルの中村知美社長は、100年に一度の自動車産業変革期において「自動車メーカーとしては小規模なスバルが独自の価値を守りながら、急速かつ広範囲にわたる時代と技術の変化に遅れることなく対応していくためには、限られた経営資源を、強みと特長を伸ばすべき分野に選択・集中していく必要がある」として、ソルテラをトヨタとの協業体制強化の礎とする決意を示した。

 トヨタとスバルの提携は2005年に始まった。まず、当時の富士重工業がトヨタと業務提携に向けた基本合意を行い、スバルの北米における生産拠点「SIA」(スバル・オブ・インディアナ・オートモーティブ)で北米市場向けトヨタ「カムリ」の生産を始めた。

 その後、2008年には2ドアスポーツカーのトヨタ「86(2代目はGR86)」とスバル「BRZ」の開発・生産について協力を合意。2モデルは2020年に2代目に進化している。

 電動化については、2018年に北米向けモデルのスバル「クロストレック(日本では「SUBARU XV」)」でトヨタの電動化技術を取り入れた。

 そして、2019年には新たな業務資本提携に合意、EV専用プラットフォームとSUV(スポーツ用多目的車)タイプのEVを共同開発することでも合意している。そのSUVのEVが、トヨタが先に発表した「bZ4X(ビーズィーフォーエックス)」と今回発表のソルテラである。


スバルのイメージと“現実”のギャップ

 スバルは、日本政府と日本自動車工業会の方針に沿って2050年頃のカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量実質ゼロ)実現を目指すべき方向として定めている。ソルテラは「2050年カーボンゼロ」という大義を掲げて開発された。

 その上で、商品開発の現場では、スバルの開発関係者がトヨタのEV開発担当部署である「ZEVファクトリー」に出向し、「もっといいクルマつくろう」という合言葉を掲げ、また両社の開発チーム全員が互いに納得するまで議論を繰り返し、「仲良くケンカしよう」という開発現場の雰囲気を築いたという。

 だが、今回のこうした発表を通じて筆者が感じるのは、スバルに関わる多くの人たちがスバルに抱いているであろうイメージと、“スバルの現実”のギャップだ。

 中村社長が指摘するように、スバルが今後グローバル市場で生き続けるためには、トヨタの資本力、技術力、そして人材を有効かつ積極的に活用するトヨタとの協力体制強化が不可欠だ。その代表例が、ソルテラを基点とするEV化である。

 一方で、トヨタと共同で進めるスバル車のEV化に対して違和感や不安を抱いている人も大勢いる。

 スバル車の特長は、水平対向型という、独ポルシェなどごく一部を除いて量産されなかったエンジン形式を軸足として、セダンなどでも積極的にAWDを採用するという、独自の商品性にある。そうしたスバルらしさに惚れ込んでスバルに入社した人、またスバルの販売店で業務にあたる人が大勢いて、彼らの思いがユーザー(とくに「スバリスト」と呼ばれるスバルのファン)のスバル愛を生み出し、支えていると言ってよい。

 また、スバルの独自技術として、車体の骨格である「スバル・グローバル・プラットフォーム(SGP)」への転換がほぼすべての車種で完了した。SGPによって、スバル車の走りはどの車種も格段に進化した。さらに、自動車メーカーの中でいち早く予防安全技術の量産化を成功させたアイサイトも、スバルならではの技術として認知されている。

 一方、EVでは電動化技術の多くをトヨタが担い、また通信によるコネクテッド技術のエコシステムの構築をトヨタが中心になってスバル、ダイハツ、スズキ、マツダ、日野などと共に進めようとしているという現実がある。

 そのため現時点では、スバルに関わる人の中で「スバルの独自性は守られるのか? スバルはこれからどうなっていくのか」と不安を抱く人が大勢いるのだ。

 こうした多くの人のスバルへの思いを、中村社長を含めたスバル経営陣は十分に理解した上で、今回、急激な時代変化に向けて舵を切った。これからスバルはどのような現実に直面し、それをどう乗り越えていくのか。引き続き現場取材を進めながら、“スバルの現実”の変化を見守っていきたい。

筆者:桃田 健史

JBpress

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