【緊急寄稿】ヤフーはLINEの何が欲しかったのか?

11月15日(金)7時45分 文春オンライン

 11月13日、「ソフトバンクとLINEが経営統合」という報道があった。


 翌朝、両社共に「本件を含めさまざまな可能性について協議を行っているが、現時点で決定した事実はない。今後開示すべき事実が発生した場合は、速やかに公表する」と、玉虫色の声明を発表した。


 通常、この手のコメントは「事実だけど今は言えない」という時に使われる常套句だ。企業取材をメインとしている記者としては、下手をすれば当日、あるいは数日中に緊急会見が招集されるだろうと心積もりをしている。



LINEの買収に興味があると言われていた孫正義社長 ©getty


両社の提携には成功例も


 ソフトバンク・孫正義社長がLINEの買収に興味があるという話は、数年前から噂されていた。


 ヤフーは、昔パソコンを購入し、ブラウザを開くとトップ画面がヤフーだったという30代以上がメインユーザーだ。「ネットはパソコンで始めた」という人が多いだろう。一方、LINEはスマホメインのユーザーが圧倒的だ。8000万の利用者を抱えるが、毎日熱心に使うのは10〜20代がボリュームゾーンとなる。


 中心となるユーザー層が被らないという点において、ヤフーとLINEの経営統合はうまくいくように思う。


 実は、すでに成功事例となりつつある両社の提携がある。それは通信事業だ。



 LINEは2016年に格安スマホ「LINEモバイル」を始めたが、2018年に自社単独での経営を断念。ソフトバンクに51%出資してもらうという救済策を選んだ。結果、表向きは「LINEモバイル」を名乗ってはいるが、現在ではソフトバンクのサブブランドとなっている。



 ソフトバンクの携帯電話事業は、「ソフトバンク」と、ヤフーのスマホという位置づけの「ワイモバイル」、さらに「LINEモバイル」という3つのブランドを抱えているのだ。特にワイモバイルとLINEモバイルはともに「格安スマホ」のジャンルで競合している。


ヤフーは店舗、LINEはネット


 この売り分けについて、ソフトバンクの宮内謙社長は「ソフトバンクはiPhoneを中心とした大容量プラン、ワイモバイル(ヤフー)はショップで接客して販売し、LINEモバイルはネットで契約や購入できる人を対象にしていく」と筆者に語ったことがあった。


 今回の経営統合はこの「ヤフーは店舗というリアルの世界、LINEはネットの世界に強い」という関係性で見るとわかりやすい。


 例えば、いま盛り上がりを見せているQRコード決済。ソフトバンクが手掛けるPayPayは100億円規模のキャンペーンばかりに目が行くが、実は全国20ヶ所以上に営業拠点を設け、地道に加盟店開拓をしている。この営業力が、他のQRコード決済サービスには真似のできない強みなのだ。実際、国内では150万ヶ所で決済が可能だ。地方でも「こんな小さなお店でPayPayだけは使えるのか」と驚かされることも多い。


 思い起こせば、ソフトバンクがADSL事業「Yahoo! BB」を始めた時も、街中にパラソル部隊が出現し、街ゆく人にモデムを無料で配りまくっていた。


 イメージこそ最先端なIT企業のように見えるソフトバンクだが、実態は足と汗で稼ぐゴリゴリの営業の会社でしかないのだ。



  一方、LINEがメインとしているユーザーはネットを使いこなしている人となる。


 LINEの決済サービスであるLINE Payは、ユーザー間で割り勘などができる機能が魅力だったりする。もともと、メッセンジャーアプリとして普及しているので、飲み会の約束をLINEでして、集合時間に遅れそうになったらLINE、飲み終わった後の割り勘もLINEでできるというのが最大の利便性なわけだ。他社のQRコード決済も割り勘機能を載せてきてはいるが、LINEほど多くの人に普及しておらず、「みんなでサクッと割り勘」にはなりにくい。


 また、QRコード決済の手数料は微々たるものなので、それだけではビジネスとして絶対に儲からないと言われている。



 では、QRコード決済ビジネスは何で稼いでいくのか。



担当者が語ったLINE Payの「強み」


 かつて、取材したLINE Payの担当者は、「店頭でLINE Payを使って支払ってもらえば、店舗とお客さんがLINEでつながる。そうすれば、店舗はLINEでお客さんにクーポンや会員証を送ったりすることができる。手数料だけでなく、プロモーションや広告が収益源として期待できる」と話していた。



 ソフトバンクのPayPayはユーザー数1500万人と、国内ナンバーワンのQRコード決済サービスだが、この「店舗とユーザーをつなげる」という機能に乏しい。PayPayの将来性を考えた時、どんなにユーザー数と使える店舗が多くても手数料収入だけに頼るのは無理があり、決済の延長線上にある「プロモーションや広告で稼げる仕組み」が不可欠だったのだ。


 その点、LINEは8000万というユーザーを抱え、その多くは四六時中、スマホを片時も離さず使っている人だ。


 ヤフーとユーザーの接点は、ユーザーがパソコンを起動している間だけに限られる。もちろん、ヤフーもスマホにシフトしたが、他社からは完全に乗り遅れた。


 結果として、スマホにおけるユーザー接点を奪うために、LINEを経営統合するという選択をしたのだろう。


 ソフトバンク、ヤフー、LINE。いずれの社も、日本でインターネットの可能性を信じ、インターネットを便利に楽しく使える道具にしようと邁進してきた企業だ。その3社が手を取り合うということで、日本発の、もっと便利で楽しいインターネットを作ってもらいたいものだ。



(石川 温/週刊文春デジタル)

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