窮地に追い込まれた三菱スペースジェット (3) 主力機とするM100に、ローンチカスタマーが決まらない!

11月15日(金)18時31分 財経新聞

「スペースジェット」(画像: 三菱航空機の発表資料より)

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 遅れに遅れる三菱スペースジェット(MSJ)の開発だが、開発に着手した時期(当時はMRJ)の開発幹部に対して、ボーイングの幹部が「737のコクピットを使わないか?」と持ち掛けていたとの話が伝わっている。ボーイング737は1967年に初飛行を遂げ、派生機も含めて現在までに1万機以上が生産されている航空機のベストセラーだ。高い信頼性を誇り、2010年頃でも年間300〜400機の売上実績があった。

【前回は】窮地に追い込まれた三菱スペースジェット (2) 契約解除が先行、新たな契約は進まず!

 当時、この話は三菱航空機の幹部に伝えられたものの、一顧だにされなかったという。「スリーダイヤが他社のノウハウに頼れるか」というプライドがあったのかも知れないが、航空機として成熟の域に達していた737の心臓部を採用していたら、設計上の制約は多々発生したにせよ、時間と資金のロスは最小限で済んでいた筈だ。

 70席級のM100には顧客名非公開先との15機の売買協議が6月に明らかにされ、9月には米メサ航空と100機の受注協議を開始することが発表されている。10月に米地域航空会社のトランス・ステーツ・ホールディングス(TSH)との間で締結されていた、100機のスペースジェットM90(90席級)の受注契約が解消されたが、三菱航空機はスペースジェットM100への切り替え交渉を続ける。

 スペースジェットM100の認知度が急上昇している感があるが、三菱重工はM100の事業化を正式には承認していないようだ。

 航空機メーカーが新型機の製造開発に踏み切る場合に、十分な規模の発注を行い製造計画を後押しするような顧客(ローンチカスタマー)が求められる。M90(旧MRJ)の場合は、第1号顧客として25機を発注した全日空がローンチカスタマーにあたる。企業の知名度やステイタスが評価されていなければ、ローンチカスタマーとして祭り上げることは難しい。

 ローンチカスタマーは、新型航空機の設計にも関与する権利を得るといわれるくらいの重みがある。今のところ、三菱航空機はスペースジェットM100のローンチカスタマーに応しい交渉相手に巡り会えていない。三菱重工も立場上、ローンチカスタマーが決まっていない新型航空機の開発計画を決裁できない。

 ローンチカスタマーがいなくても、実績と信用が確立しているメーカーであれば、新型機の開発は不可能ではないが、既に5度の納入延期を繰り返して6度目が現実味を帯びている三菱航空機にそれを求めることは酷である。

 懸念されるのは、今回の報道で三菱重工が専門家に開発計画の再精査を依頼していると伝えられていることだ。5度目の納入延期を余儀なくされた時点で、「20年代の半ばに日本の空を飛ぶ」ことが最重要課題だった。そんな1丁目1番地すら反故にせざるを得なくなった苦衷が、外部に再精査を依頼するという決定に溢れている。

 ちぐはぐさが余りにも目に付く国産ジェット開発物語だ。ストーリーがどんな結末を迎えるのかは想像すらできないが、明確なことはスペースジェットM90の型式証明を取得して、初号機を全日空に納入しなければ何事も始まらないということだ。

 スペースジェットM90が実機として就航に至れば、M100のローンチカスタマーに就任する航空会社の出現も期待できる。その時点で6月に打ち上げた、サポート体制の構築、量産体制の整備、M100の開発といった航空機事業の残り3本が初めて現実味を帯びることになる。

 しかし、量産化を期待したサプライヤーの中には、我慢の限度とする先も・・・(4)に続く

財経新聞

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