タケモトピアノ そのユニークなビジネスとCM制作の舞台裏

11月17日(日)16時0分 NEWSポストセブン

ずらり並んだピアノたち

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 コメディアン・財津一郎が歌って踊るお馴染みのメロディ「ピアノ売って、ちょ〜だい♪」のテレビCMで知られるタケモトピアノは、世界60か国以上の国々に、国内で買い取ったピアノを再生して届ける事業を展開している。そのユニークなビジネスの舞台裏とCM制作秘話に迫る──。


 一度耳にしたら忘れられないキャッチーなフレーズとメロディ──。『ポツンと一軒家』や『ドクターX〜外科医・大門未知子〜』(ともにテレビ朝日系)でおなじみのピアノ買取り大手・タケモトピアノのCMは、今もなお強烈なインパクトを放っている。


「『ポツンと一軒家』は、レギュラー放送前の単発番組の時にたまたま会長と観ていたらホロっとさせられましてね。番組から伝わってくる温かさや、登場する人たちの優しさみたいなものが、会長の人柄や社風にぴったり合う気がしてCM提供することにしたんです」


 こう語るのは、同社広報を担当する北川勝利氏。CM制作にも携わった北川氏によれば、ホームページのアクセス数は前年比150%増で、問い合わせも増えているという。


 知名度抜群のタケモトピアノだが、社業の中身は意外なほど知られていない。会長を務める竹本功一氏が、米国のガレージセールで中古ピアノが販売されているのをヒントに1979年に起業したというから、創業40年を迎える。


 創業当時、折しも高度経済成長とともにピアノが一般家庭に広く普及していた頃だったが、子供が成長して弾き手がいなくなり、埃をかぶったままのピアノを持て余す家庭が少なくなかった。手放す手段がなかったこともあるが、ピアノはどの家庭にとっても特別なものだった。幼いわが子が小さな手で鍵盤を叩く姿は忘れがたい。心温まる懐かしい思い出が、ピアノにはたくさん詰まっていた。


「そんな大切なものを引き取るからには、生半可な気持ちではできません。お届けする家庭でも大事に弾いてもらうために、誠心誠意、お客様とピアノに向き合う覚悟でここまで来ました。買い取らせていただいたピアノは、入念に修理と整備を行ない、今では欧米を中心に世界60か国以上の国々に輸出しています」(竹本会長)


 創業の信念を込め、「ピアノ買取り」という馴染みの薄いビジネスを広く知らしめるために制作されたのが、コメディアン・財津一郎氏を起用したCMだった。財津氏のギャグ「〜してちょうだい!」を取り入れ、軽妙な振り付けの演出によって視聴者の目と耳に鮮明に焼きついた。


 自宅療養中の財津氏が取材に答えた。


「ピアノから奏でられる美しい音で救われた人はたくさんいるはずで、私もそのうちのひとりなんです。当時のタケモトピアノは、買い取ったピアノを東南アジアの貧しい小学校などに送るボランティアをしていました。こんなに素晴らしいことはないと、快く引き受けました」


 CM撮影が行なわれたのは、財津氏が脳内出血で倒れて休業していた1997年で、復帰後初の仕事だった。手術で剃ることになった頭髪が伸びず、五分刈り姿だったが、軽妙なステップと歌声を披露した。


 このCMを観た子供がなぜか泣き止む、とメディアで取り上げられたことはよく知られたエピソードだ。


「子供の好きそうな踊りや、口ずさみそうなフレーズを意識しました。それが、赤ん坊の耳に届くと自然と聴き入って、泣き止むようになるという不思議な効果につながったんです。子供に受け入れられるCMは、すべての層に響くと考えていたので、私にとっては想定内の反響でした(笑い)」(北川氏)


 一家の思い出が詰まったピアノが、タケモトピアノの手によって新しく生まれ変わり、今日も世界のどこかで軽やかな音色を響かせている。


●撮影/内海裕之 取材・文/小野雅彦


※週刊ポスト2019年11月22日号

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