今からインスタを始めるなら何をやるべきか

11月19日(月)6時0分 ダイヤモンドオンライン

尾原和啓(おばら・かずひろ)さんプロフィル/1970年生まれ。京都大学大学院工学研究科応用人工知能論講座修了。マッキンゼー・アンド・カンパニーにてキャリアをスタートし、NTTドコモのiモード事業立ち上げ支援、リクルート、ケイ・ラボラトリー(現:KLab、取締役)、コーポレイトディレクション、サイバード、電子金券開発、リクルート(2回目)、オプト、Google、楽天(執行役員)、Fringe81(執行役員)の事業企画、投資、新規事業などの要職を歴任。現職の藤原投資顧問は13職目になる。ボランティアで「TEDカンファレンス」の日本オーディション、「Burning Japan」に従事するなど、西海岸文化事情にも詳しい。著書に『どこでも誰とでも働ける』(ダイヤモンド社)、『ITビジネスの原理』『ザ・プラットフォーム』(NHK出版)、『モチベーション革命』(幻冬舎)などがある。

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気圧や気温の差によって、バズるか・バズらないか・炎上するか違う?! 書籍『マーケティングの仕事と年収のリアル』の著者・山口義宏さん(インサイトフォース代表取締役。@blogucci)が、マッキンゼー、Google、リクルートなど13職を経たIT批評家の尾原和啓(@kazobara)さんと、リクルート出身で数々の起業経験をもつ事業家のけんすうこと古川健介(@kensuu)さんという、その道のプロお二人を迎えてお送りする豪華鼎談。第2回では、ユーザーをその気にさせる環境やストーリー作りなどについて、お二人の頭の使い方をのぞかせてもらいます。


気圧が下がると炎上しやすくなる


山口義宏さん(以下、山口) 前回の話を総括すると、ウェブマーケティングの場合は、とにかく打率が低くても、他の人より回数を多くこなせば、結果として勝てるってことですよね。



尾原和啓さん(以下、尾原) そこは、普通のマーケティングと比べると、ウェブはコストが安いぶん100倍失敗できますからね。


山口 面白い。確かにそうですね。


尾原 たとえば『どこでも誰とでも働ける』という僕の本も、キャッチコピーとか決めるときに、発売前にオンライン広告を出したんですよ。どのタグラインがクリックされるか30種ぐらい作ってみて、一番クリック率が高いタグラインを発売初日にツイートしたから、当然みんなバズってくれる。しかも、それに3万円かけてないですからね。そういう確率論的なアプローチと職人的なアプローチがミックスされてきているのが、最近の傾向かもしれません。


けんすうさん(以下、けんすう) あと、気圧や気温の差によって、バズるかバズらないか炎上するか、違ったりしますしね。


山口 気圧ですか。


けんすう 気温差が大きかったり気圧がガッと下がると、落ち込む人が多いので、すっごい炎上しやすいんですよ。誰かが天気予報を見て「ここから2週間ぐらいはすごい炎上が起きる」って言ってたら、確かにすごい起きた。


山口 地震学者みたいな(笑)。


尾原 それって真実で、ウェザーニューズという会社が画期的だったのは、世の中で実用的な予測指標を作ったことですよね。たとえば「ビール指数」というのを作って、気温や湿度がどういう条件になるとビールがめっちゃ飲めるとか。あとは「よろめき指数」といって、女性が口説かれる確率が高くなるのは気圧が急に下がった後だとか。


数をこなす原動力は「楽しさ」か「効率性」か


山口 お二人とも、絶対数をこなしてまず感覚をつかむということですけど、面白いからやるんですか。


けんすう 効率的だから、というだけですね。。


尾原 僕は圧倒的に趣味ですね。人が見つける前に、このルールなら俺もう知ってるもんね、という状態が好きなだけ。


けんすう ああ、そうですね。尾原さんはハックが好きですね。


山口 それを、みんなにおすそ分けしたい、というのもありますか。


尾原 そういうわけじゃなくて、「俺、知ってる」っていう事実だけが好きなんです。でも、知ってしまった事実にはもう興味がないから、自分だけで抱えているよりほかの人にあげたほうが、いい人に見えるから開放してるだけ。それを自慢したいわけでもないし。ハッカーってそういうもんでしょ。僕にとっては、漁場を見つけ続けることが筋トレな感じなの。常にやってないと、筋肉が落ちたら死ぬって感覚だから、自分に義務づけてるんです。


山口 なるほど、確かにハッカーですね。


尾原 ハッカーっていうのは、歪みがあったらおれが最初に発見して直したんだ、っていうこと自体がオナニーなので、それ以上でも以下でもない。



山口 けんすうさんは、効率が一番だから、ちょっとそこは違うんですかね。


けんすう 両方ですね。たとえば、知り合いの会社を手伝うとして、どうやって会社の知名度をあげるか。ちゃんとしたマーケティングをするのもいいんですけど、会社概要のページだけでバズらせられるとすごく得ですよね。コンテンツがほとんどなくても、知名度があがるので。そういうことを考えるのは好きですね。


 僕、 ハウツーメディアの会社やってたんですけど、そこで、会社への道順を動画でわざわざとって、ハウツー動画にしていました。行き道だけを説明するのに、異常にわかりやすくするという。それをやっていると、「この人達、すごいハウツーにするな」となってちょっと笑いが取れました。


尾原 笑うって、それ自体がもうトラップだよね。


けんすう 偏らせるとウケる、みたいなのはありますよね。…って、こんな話でこの対談は大丈夫ですか?


尾原 ちょっと、この記事をバズらせるためには何を語るべきか考えないと!


山口 この本を売るためにはどうしたらいいですかね(笑)。


モノを売る神髄「リクルートのスリーステップ」を応用する


尾原 物を売るときの神髄っていうのは、リクルートの営業にあるんですよ。常にスリーステップで、「恐怖」「利得」「社会貢献」を仕込む


山口 よくわかります。(ウェブ上の検索や広告から最初にいきつく)ランディングページの構造ですね。


尾原 そうそう。現代の人たちは、今の生活にある程度は満足しちゃってるから、「これがないと、あなたダメになるよ」という恐怖を伴わない商品だと、心を動かされず手に取ってもくれない。その後に、「でも実際は得をするよ」と教えてあげて、しかも「得をするだけじゃなく社会のためだから」っていうと、「そうか」と納得してもらえる。



山口 言われてみれば、この本もそういう構造かもしれません。本の顔であるカバーは、手に取ってもらうために下世話に収入の話を持ち出して「3倍差」を強調していて。中身を見ると、最初のほうは給料やキャリアを上げるための話でやや煽り気味ですが、後ろのほうでは、とはいえ思い通りにいかないこともあるから自分の人生の満足条件をいかに見つけるかも大事だよ、という話をしてます。そして僕自身もまったくハイキャリアではないので、オチとして最終章で僕のキャリアについてまとめてあるんです。


尾原 ちょっと自己開示してね。


けんすう 「3倍」はぴんとこないかもしないので、「年収300万で終わる人と、1000万円超える人」みたいなほうが面白いと思いますね。300万で終わるって、キツい気がする。


尾原 これがあれば海の向こう側に行ける、みたいな感じをつくってあげることが大事ですよね。ニライカナイ(理想郷)を見せてあげる。


山口 この本でいえば、スキルさえ上がれば成果が出ると思っている人が多いので、そうじゃないよ、と強く言いたいですね。


けんすう 確かに。ダメな人ほどスキルを伸ばそうとするっていう不思議な傾向がありますよね。


尾原 でも、けんすうも中国語やろうとしてなかった(笑)?


インスタをストックコンテンツととらえる


けんすう 僕が中国を勉強してたのは、Weibo(微博。中国最大のSNS)でどのぐらいの期間があれば、日本のフォロワー数を超えられるのかやってみたかったからなんですよね。なんとなく300時間の学習コストで、2年ぐらいあれば超えられるんじゃないか、という仮説があったので、それを試したくて。


尾原 なるほどね。そもそも中国のマーケットはもう10倍だし。


けんすう だから、10分の1の労力でいけるはずかなと。そういう目的だから、中国語も発音は別にどうでもよくて。WeChat(微信。中国テンセントが運営するメッセンジャーアプリ)でボイスメッセージがくるかもしれないから、ヒアリングは必要かもだけど。


尾原 極端な話をすれば、TikTok(中国バイトダンスが運営するショート動画共有アプリ)上のフォロワーを取るだけだったら、言葉もいらないよね。中国人がどんな動作を好きかハックすればいい。でもなんで、けんすうっていつもそんなことやってんの?


けんすう ブログとかに「こうでしたよ」って解説するのが好きなんだと思う。そうすると、みんなに「フムフム」って思ってもらえる。


尾原 それが喜びなのね。


けんすう 最近、若者のマネをしようとして、今さらInstagramをやろうって会社あるじゃないですか。ハッシュタグを研究したり、若者が投稿してるのをそれっぽくうわべだけやってるので、若者から見るとすごい違和感があるみたいになっちゃってて。あれ超アンチパターンです。どうせやるなら、若者のマネをするのではなく、別の切り口でやらないといけないのではないかなと思います。僕は今、10年後に価値が出るコンテンツを、インスタでやってみています。


尾原 面白い。フローコンテンツとしてインスタを捉えるんじゃなくて、ストックコンテンツとしてとらえるっていう発想の転換だね。


けんすう なんですよ。たとえば起業家の顔写真を1〜2年集めておいて、10年後見た時に「あの有名な社長って、10年前はこうだったんだ」って使われるんじゃないかなと。なので、ずっと起業家の顔写真だけを撮り続けていますね。


尾原 「インスタ=今を切り取るツール」じゃなくて、過去を振り返るツールとして目標軸をズラしてるわけね。他の人が思いつかない視点から、オイシイ場所を見つけると、競争が少ないし誰も法則を作ってないから勝てるよね。


けんすう ただ、これだと企業の時間軸と合わないんですけどね。1年後の売上確保のためにフォロー数増やしましょう、って話に企業はどうしてもなっちゃうので。


尾原 でも、企業も将来につながる物語を今から仕込む発想も必要ですよね。たとえば日清のカップヌードルは意識してなかったかもしれないけど、浅間山荘事件(*)で警視庁の機動隊員がおいしそうに食べてくれてるっていうアーカイブが、まさに体が温まって美味しいものを食べて元気に働くぞっていう「Hungry?」ってキャッチコピーに連綿とつらなってるわけじゃないですか。(第3回につづく)


*浅間山荘事件:1971年、長野県軽井沢町にあった河合楽器の保養所「浅間山荘」に連合赤軍が人質をとって立てこもった事件。

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