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人が人に値段をつける「成果主義」のおそろしさ

11月20日(水)9時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/designer491

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グループウェア大手のサイボウズは、十数年前までとてつもないブラック企業だった。成果至上主義に走った結果、離職率は28%まで上がった。サイボウズ副社長の山田理氏は「人が人に値段をつける仕組みは、どうやっても不満が出る。人を『支配』で動かせる時代は終わった」という——。

※本稿は、山田理『最軽量のマネジメント』(サイボウズ式ブックス)の一部を再編集したものです。



写真=iStock.com/designer491
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■容赦なく辞めていくミレニアル世代


人が辞めていく理由は、どこにあるのでしょうか。


大企業の役員の方と、働き方の多様性について話していると、よくこんなことを言われます。


「サイボウズさんだからできるんですよ」


そんな悠長なこと言っていて、いいのでしょうか。今やミレニアル世代はもちろん、その下のZ世代も働きはじめている時代です。彼らは「会社が合っていない」と感じたら、容赦なく辞めていきます。


インターネットで世界中のさまざまなニュースに触れられる。つまり、彼らは「主体的に居場所を選択できる環境」にあります。


彼らが会社に求めているものは、何なのでしょうか。経済競争によって生じる社会問題、凄惨な事件、紛争。それらを目の当たりにして、富を得ることイコール幸せではないことに、子どもの頃から気づいている。一方で、それなりの経済的なゆとりを確保して自分の人生を実りあるものとしたい、とも考えている。


そのために、自己実現を果たし、自分の幸せはもちろん、周りの幸せも叶えたい、そして社会的な影響力を発揮したい。


彼らが会社に求めるのは、「未来の可能性」です。


にもかかわらず、相変わらず「昭和のマネジメント」を続けている会社は、間違いなく敬遠される運命にあります。


・成長できる実感が得られない

・やりたいわけではない仕事、得意でもないことを押し付けられる

・上司はハラスメントを気にして微妙な距離感で接してくる

・非効率的な業務フローが未だに残っている

・働き方改革と言いつつ業績目標は据え置き

そんな会社で、彼らが「働き続けよう」と思うはずがないのです。



■「資本主義のアップデート」には抗えない


アメリカに来て、本当によくわかったことがあります。


会社という組織は今、大きな岐路に立たされています。「資本主義のアップデート」という抗えない流れに。


世界時価総額企業ランキングを見ると、トップの10社中、8社はアメリカ企業です。50社まで見てみると、アメリカ一強の牙城に中国が切り込む一方、日本企業は唯一トヨタ自動車が40位台に留まるだけ。


このランキングが意味しているのは、ますます拡大する貧富の差です。「GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)」を筆頭に、一部のIT企業や金融機関などの社員や投資家が富を得る一方、その恩恵を受けられず、日々の暮らしに困窮する人々が増えています。


製造業や農業が産業の中心となってきたアメリカ中西部や南部はもちろんのこと、比較的豊かな東海岸、西海岸でさえ、地区によってはホームレスや車上生活者が貧しい暮らしを余儀なくされているのを、わたしはこの目で見てきました。


■GAFAで働きながらNPOを立ち上げる若者たち


アメリカの若者たちはその状況を目の当たりにして、立ち上がりはじめています。このまま放置していいはずがない、と「GAFA」で働きながらもNPO法人を立ち上げたり、ボランティアに熱心に取り組んだり、社会貢献に人生のリソースを費やしている。


彼らは、新しい資本主義のあり方を模索しているのです。これまでの資本主義は、端的に言えば「株主の利益追求が優先され、会社が株主によって支配される社会」でした。社員には、四半期ごとの短期的な目標をクリアすることが求められ、長期的観点からの投資は株主を説得しなければ難しかった。


それに対抗するように、今起ころうとしているのは「会社の民主化」です。


会社を市民の手に取り戻し、まさに「社会の公器」とする。


株主だけでなく、そこで働く社員、顧客、取引先などあらゆるステークホルダーが、一人ひとり意思ある「人間」として、健全に暮らせるビジネスモデルを実現すること。「消費する側」として、会社が生み出した享楽に金銭を費やすのではなく、「自ら参画する側」として、より社会的意義の高いものに投資し、自分も影響力を発揮する。


そうやって、働くこと、楽しむこと、生きることがゆるやかに接続している状態が、新しい時代を生きる若者の目指す世界です。



■人間は貨幣を稼ぐために「チーム」を作った


先日、『天才を殺す凡人』や『転職の思考法』の著者である北野唯我さんと対談した際、参加者からこんな質問をもらいました。


「これからの会社には、『居場所』としての役割は残りますか?」と。「会社はなくなるんちゃうかな、と思いますけどね」と、わたしは答えました。


「ボーダレス化」の時代です。今やあらゆる情報やスキルは、ひとつの会社が占有するものではなくなり、個人や国をまたいで行き来しています。


つまり、「情報という資産がだれのものかわからなくなっている」状態です。その中で、そもそも株主がいて、会社があって、法人という人格をつけ、「これはわたしのもの、あれはあなたのもの」と分断する概念は、どんどん薄れていっています。


会社はそもそも、人が生きていくために、飯を食うために生まれた「チーム」です。


最初は狩猟動物として、みんなで獲物を仕留めるための集団が生まれました。次に、農耕を始めて「村」というチームをつくり、大量に稲を生産できるようになりました。そのあと、人は貨幣を発明しました。「会社」は、その貨幣を稼ぐために人間がつくり出した「チーム」なのです。


■人を「支配」で動かせる時代は終わった


しかし今では、会社という枠を飛び越えたプロジェクトがあちこちで生まれはじめています。個人の複業も当たり前になりました。


この状況が示しているのは、会社というチームそのものが古びてきている、という実態です。会社が営みを続けるうえで、社員に無理やり忠誠を誓わせたり、だれかの犠牲を強いたり、利益ばかりを追求したりすれば、即座にインターネット上で晒される時代。労働者人口が減りゆく時代。そういった会社は確実に淘汰されます。


世の中にある会社は遅かれ早かれ、公明正大に向かっていく。会社は民主化されていきます。株主だけでなく、社員、顧客、取引先などあらゆる人が幸せに暮らせる社会を築くことを理想とするならば、もはや「会社」という形にすらこだわらなくてもいいのかもしれない。極論を言えば、「会社はなくなってもいい」とわたしは考えています。


人は「支配」ではもう動きません。人を動かすのは「理想」であり「共感」です。会社は「個人を縛る組織」ではなく「自立した個人が集まる組織」になっていきます。



■「いいね!」のシェアが新しい世代の行動原理


ミレニアル世代やさらに若い「Z世代」と言われる人たちが生まれ育ったのは、巷にモノが溢れ、インターネットが当たり前にある時代です。無数の情報から好きなものを選ぶことができて、仮に身近な友人と話が合わなくても、SNSで簡単に共通の趣味を持った仲間を見つけられる世界。


そこでは「こうしなさい」というトップダウンの権限は機能しません。「いいね!」と思えることを選び、体験し、それを人にシェアする。それが新しい世代の行動原理です。そしてそれは、そっくりそのまま仕事選び、会社選びにも当てはまります。


共感で、動きが変わる。共感が、成果につながる。


現在起こっているのは、情報が新聞からインターネットに変わった、とか、働く場所がオフィスからカフェに変わった、とか、そういう話ではなく、人々の行動原理、すなわちチームの行動原理のパラダイムシフトなのです。


そして、チームの行動原理が変わりはじめているなら、組織のあり方自体も変わりはじめているはずです。


■「年功序列」は楽なシステムだった


それは、これまでの組織とは、まるで反対のシステム。


逆に言えば、経営者にとっては、これまでの組織、つまり「年功序列」での支配ほど、楽なシステムはなかったのです。


どんなに仕事を頑張っていようが頑張っていまいが関係ない。毎年、決められた基準に基づいて自動的に給与を上げていく。会社側が、一方的に「お金をこれぐらい払うので、このくらい働いてくださいね」と個人を縛る、という仕組み。


しかも、みんながそれを受け入れていました。


わたしがかつて、サイボウズで成果至上主義を推し進めた理由は、この「年功序列」に対する強烈なカウンターからでしたが、実際にやってみると、「お金で人を縛る」ことは大変なことだらけでした。



■人が人を評価するなんて、おこがましすぎる


成果至上主義がもっとも反映された「鬼」の評価制度。それが「Up or Out」でした。社員を相対評価し、下から2%の人に対して、無慈悲な宣告を行うのです。


自ら掲げたミッションをクリアし、成果を上げた者はランクアップして、能力給をもらえる。頑張ってしっかり成果を出せば評価につながるのですから、とてもいい制度だと思いませんか? 


すくなくとも当時のわたしは、そう信じていました。


けれども……お察しのとおり、うまくいくはずなんて、ありませんよね。行きすぎた成果至上主義は、大きな歪みを生みます。


今ならこんな会社、だれが働いてみたいと思うでしょうか?


そもそも、人が人を評価するなんて、あまりにおこがましいのです。ましてや、「値段をつける」なんておそろしすぎました。評価基準を設けても、それもしょせん人が決めたことです。全員が全員、納得できるものにはなりません。


それなら、「お金を唯一の価値基準にすることは、もうやめよう」。


結果、生まれたものが「100人100通りの働き方」を受け入れます、という会社のあり方でした。


■サイボウズは「市場価格」で給与を決める


では、サイボウズの給与はどうなっているのか。


答えは「市場価格」です。


多くの会社では、人事考課を行う際、面談を行い、個人目標やKPI(重要な業績評価指標)と照らし合わせます。「これは自分でどれだけできてると思う?」「もしこの数値に納得がいかないなら説明してほしいんだけど」……想像するだけで、お互いの胃が痛くなりそうですよね。


会社としては予算も限られていますし、あまり大盤振る舞いはしたくない。だから社員に対して、比較的厳しい評価をつける。逆に社員は、なるべくたくさん給与をもらいたい。だから自分がいかに貢献したかをアピールします。


しかも、そこには別の要素として、生々しい「人間関係」も絡んでくるわけです。ちょっと無茶ですよね。


そこでサイボウズでは、人事考課と業務フィードバックを切り分けることにしました。フィードバックはあくまで、社員がより力を発揮するために。



■社員自らが欲しい給与金額を提示する


そして、個人の給与を決定する基準は、「市場価格」を活用することにしました。給与が決まる流れはこうです。


まず社員は、どれくらい給与が欲しいのか、金額を提示します。それに対して、会社はまず「もしその社員が他社に転職するとしたら、どれくらいの給与を打診されるだろう」という視点で市場価値、つまり「社外価値」を割り出します。そこにくわえて、その人のチームでの貢献度、つまり「社内価値」を考慮して検討するのです。


また、社員によっては複業との兼ね合いで、サイボウズにフルコミットしない人もいます。その場合は、自分の何%をサイボウズに費やすのか計算して、配分します。


すると、「自分の市場価値は月給にして50万円だけれど、サイボウズには50%しかコミットできないから、25万円でお願いします」といった具合に給与が決まります。どれくらい給与をもらいたいかさえもバラバラ、100人100通りなのです。


■楽しくなくても「嫌じゃない」場所にする


こんな時代の中で、マネジャーの役割はこれからどう変わっていくのでしょうか。


わたしはサイボウズの入社式で、ここ数年、こんなことを言います。




山田理『最軽量のマネジメント』(ライツ社)

「みんな、サイボウズに入ってくれてありがとう。わたしの役割は、君たちを早く辞めてもらえるようにすることです」と。


なんてひどいことを! と思われるかもしれません。せっかく離職率を4%まで下げることができたというのに。


しかし、本当に素直な気持ちなのです。「早く辞められる」とはつまり、ほかのどの会社でも活躍できる素晴らしい人になってくれる、ということ。それだけの力をつけた、ということです。


そして、そんな人が「それでもいいからサイボウズで働きたい」と思ってくれるような会社にするのが、経営陣の役割ですし勝負どころだと考えています。


何も、モチベーションを上げる必要も、テンションを上げる必要も、「仕事を楽しく」させる必要もありません。すくなくとも、メンバーがすこしでも「会社に行くのがイヤではない」と思えるように、ひとつずつ原因を潰していくことです。



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山田 理(やまだ・おさむ)

サイボウズ 副社長

1992年日本興業銀行入行。2000年にサイボウズへ転職し、取締役として財務、人事および法務部門を担当。初期から同社の人事制度・教育研修制度の構築を手がける。2007年取締役副社長 兼 事業支援本部長に就任。2014年グローバルへの事業拡大を企図しUS事業本部を新設、本部長兼サイボウズUS社長に就任。同時にシリコンバレーに赴任し、現在に至る。

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(サイボウズ 副社長 山田 理)

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