キリンビール “後追い”で新商品を投入する意味

11月22日(水)7時0分 NEWSポストセブン

新商品発表会見。左が山形氏。

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 サントリーに続き、「7%」という高アルコールの“第3のビール”を発表したキリンビール。ビール業界が迫られる「消費者のニーズの変化」と「税制改正の波」。それに対応するための動きと見られる。満を持して新商品を送り出すのは、異業種のP&Gから転職してきたマーケティングのプロだ。ジャーナリストの永井隆氏がその狙いと見通しを分析する。


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 キリンビールは、アルコール度数7%の『キリンのどごしSTRONG(ストロング)』を来年1月23日から発売することを発表した。いわゆる「新ジャンル」とも表現される“第3のビール”に属する。発表に立った山形光晴マーケティング部長は「高アルコールで飲みごたえを実現した」と話す。ビール類(ビール、発泡酒、第3のビール)のアルコール度数は4.5〜5.5%が一般的だが、それより高い7%に設定されたのだ。


 同じ7%に設定した第3のビールとしては、サントリーが『頂〈いただき〉』を7月に発売。しかもサントリーは、アルコール度数を7%から8%に上げた『頂』のリニューアル商品を2月6日から発売するとキリンの商品発表の6日前に発表したばかりである。第3のビールの高アルコール領域で、両社が激突していく様相だ。


 店頭価格が第3のビールと重なる缶チューハイでは、高アルコール(7〜9%)カテゴリーはずっと伸びてきている。酒類全体の消費が落ち込んでいるにもかかわらず、だ。安くてすぐに酔える高アルコールの発泡性アルコール飲料は数少ない成長分野であり、カテゴリーを超えてコスパ競争が激化していくのは間違いない。


 クラフトビールにノンアルのビールテイスト飲料、トクホコーラと、ここのところ業界で先陣を切って新分野で事業展開してきたキリングループ。今回、“後追い”で商品を投入するのは、それなりの危機感があるためだ。ビール類市場は、今年を含めて13年連続で縮小するのが必至の情勢になっている。さらに、現在は3つに分かれている酒税が2020年から2026年までかけて段階的に一本化され、キリンが強い第3のビールは段階的に増税されていく。


 ビール『一番搾り』では特に家庭用に注力しているキリンだが、得意分野である第3のビールを伸ばす必要に迫られている。こうしたなかキリンは、まずは量を獲得していく行動に出たといえよう。装置産業であるビール会社は、量を確保しなければ収益を得られないのだ。


 第3のビールにおける最大ブランドである『のどごし』。本体の『のどごし』は酒税法上は「その他の醸造酒(発泡性)(1)」(原料に麦芽を使わない、いわゆるマメ系)。これに対し同じ第3のビールでも今回の『のどごしSTRONG』は「リキュール(発泡性)(1)」(麦芽を使う、いわゆるムギ系)。こうした違いを乗り越えて、ブランド資産を活用して高アルコールに打って出た形なのだ。


 もうひとつ、今回の『のどごしSTRONG』には重要な意味がある。マーケ部長の山形氏は2015年にプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)から、スカウティングによりキリンビバレッジに転じ今年3月から現職という経歴をもつ。マーケティングのプロフェッショナルである。


 キリングループは、大物の転出も目立つ。缶コーヒー『ファイア』、ペット茶『生茶』などのヒットで知られる佐藤章氏は2016年、キリンビバレッジ社長を辞し湖池屋社長に転じた。すでに高級ポテトチップのヒット作を生んでいる。


 昨年までの16年間で、唯一アサヒに勝ってトップシェアをとったのは2009年。この年に社長を務めていたのが松沢幸一氏だ。2011年、東日本大震災の津波で被災した仙台工場をトップとして陣頭指揮して短期間に復興させた手腕も高く評価されたが、2012年にキリンを辞す。大学で教鞭を執るなどした後、今年5月、明治屋社長に就任している。


「行く人、来る人」が交錯するキリン。伝統的な会社の中で、プロのサラリーマンである山形氏には、その“生き様”が試されることになる。

NEWSポストセブン

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