「モテる男ほど女児が産まれる説」は本当なのか…基幹統計+独自調査でわかった「東北と九州」驚きの共通点

2024年11月27日(水)9時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/SeventyFour

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モテる男性ほど、女児をもうける率が高いという俗説がある。そんな投稿が反響を呼んだ独身研究家の荒川和久さんは「公的な調査はないが、いくつかのデータで類推することはできる」という——。
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■芸能人やお笑い芸人の子供は女児が多い?


「人は自分の見たいと欲する現実しか見ていない」


これは古代共和制ローマ末期の政治家であるユリウス・カエサルの有名な言葉です。それが事実かどうかよりも、人は信じたいものだけを信じる生き物なのです。


さて、もはや死語なのかもしれませんが「プレイボーイ」という言葉があります。多くの女性との浮き名を流し、女遊びなどを含めさんざん相手の女性を泣かせてきた男性などを指す言葉です。


そして、若い頃、そういう行動をとってきた男性に限って、自分の子どもになぜか女児ばかりが産まれるという俗説があります。具体的な名前をあげることは避けますが、芸能人やお笑い芸人などにおいても、思い当たる人が大勢でてくることでしょう。有名人ではなくても、自分の身近な知り合いの中にも「確かに」という人がいるかもしれません。なぜ、そんな説が言われるのでしょう?


先日、私のXでも同様の投稿を投げかけた際には、大きな反響がありました。


多かったのが、「因果応報説」です。因果応報とは、簡単に言えば、自らの行いは、善い行いをすれば善い報いがあり、悪い行いをすれば悪い報いがあるという意味です。


■「モテる男性ほどセックスが自分本位」説


多くの女性と恋愛をしても、最終的には一人を除いてお別れするパターンとなり、モテる男性であるがゆえに、自らがフる立場になることも多いでしょう。その中には「ワンナイトラブ」的なものも含まれますが、いずれにせよすべての別れが円満になるはずもなく、相手の女性に苦しい思いをさせたり、場合によっては修羅場を迎えるケースもあります。


しかし、そのような女性を傷つける行いは、自分が親となった際に、女児を授けられることで、自分の娘が同じような目に遭うかもしれないという苦しみを抱えることになります。つまり、自分が誰かに与えた苦しみは、違う形の苦しみとして返ってくるという意味での「因果応報」として女児が産まれてくるということです。


もうひとつは、「モテる男性ほどセックスが自分本位だから説」です。医学的に、女児が産まれるX染色体は酸性に強く、男児が産まれるY染色体はアルカリ性に強いといわれています。女性の膣内の酸性度は、通常は外からの雑菌を防ぐため酸性ですが、排卵日に近づくにつれてアルカリ性になり、また、セックス時にオーガズムを迎えた場合にもアルカリ性になると言われています。


■男児のみは28%、女児のみは28%


逆に言えば、女児が産まれるということは、男性が自分本位のセックスをして相手に満足感を与えられていない可能性があると考えられます。このことから、「モテる男性ほどセックスが自分本位で、だから女児が産まれやすいのだ」という論法になるわけです。


とはいえ、これらは「確かに」や「おもしろい」などと拡散されますが、実際に検証されたものではなく、少なくとも私の知るところでは「女を泣かせてきた男の女児率」などの公的な調査結果はありません。


とはいえ、別の形で類推することはできます。


子どもがすべて女児だけ(三姉妹など)のご家庭があると思いますが、それらの構成比実態については、厚労省の出生動向基本調査からわかります。2021年のデータから、妻の年齢40歳以上だけを抽出して、出生性別の組み合わせを見ると、男児のみ28%、女児のみ28%、混合44%という結果でした。


■「自分の父親はモテたと思うか」を調査


奇(く)しくも、女児だけの割合はほぼ3割ですが、これは常々私が提唱している「恋愛強者3割の法則」と合致しており、「恋愛強者の男性はその子が女児である確率が高い」などとこじつけたくもなりますが、この3割の父親が必ずしも独身時代に恋愛強者であったとは限りません。ここからわかるのは、個々の夫婦においては、男児だけ、または女児だけが産まれる場合があっても、全体的にはほぼ半々でバランスが取れているということのみです。


私は、今まで未既婚男女のいろいろな行動特性などを10年以上にわたって調査してきていますが、独身時代に恋愛強者だった男性が結婚して最終的にその子の性別バランスがどうなっているかまでは調べていません。


しかし、2020年に20〜50代の未既婚男性の実際の兄弟姉妹の状況を調査しています。同時に、別の質問項目として、彼らの父親が「独身時代にモテたと思うか」という子の視点からの質問項目もありました。あくまで子の視点なので、それが事実を示すかどうかは不明ですし、「モテ=女遊びが多く、女を泣かせた」とも限りませんが、これらをクロス集計することで、「子が思うモテた父親の場合の女児率」は計算可能です。


■「モテ度高」階級は「女児のみ」が多数だが…


年代を現在の20代未婚男女(父親の年代は40〜50代想定)に絞って、「子が思う父親のモテ度」を5段階に分け、「一人っ子含む男児だけの兄弟」「一人っ子含む女児だけの姉妹」「男児と女児が混合の兄弟姉妹構成」の3つの割合がどれくらいかをまとめたものが以下のグラフです。


まず、全体的には、男児のみ3割、女児のみ3割、混合4割となっており、前述した出生動向基本調査の結果と整合しています。


その上で、「モテ度高」階級における構成を見ると、確かに、「男児だけ」は27%なのに対し、「女児だけ」35%と上回っており、加えて、モテ度が中間にさしかかるほど「女児だけ」の割合が25%程度に減り、「男児だけ」に逆転されています。


ここだけを見ると「モテる男の女児率高い説」もあるのかなと思いそうになりますが、一方で、モテ度が低くなればなるほど「女児だけ」率もまた34%へと上昇し、もっとも「モテ度低」階級での女児率と変わらなくなります。いわば、Uの字曲線を描いています。


■「女児率と離婚率」都道府県別で見るとどうか


要するに、モテた父親だから女児率が高まるということではなく、モテない父親でも女児だけしか産まれない場合もあるということです。もちろん、この結果は、あくまで子の主観によるものなので、これだけですべてを検証したというつもりもありませんが、結論としては、父親のモテ度と女児率とはあまり関係がないといっていいでしょう。


よくよく考えれば、産まれる子どもの性別は男児か女児かのふたつにひとつであり、それほど大きな差異が出るはずもありません。「女遊びが過ぎた男は女児率高め説」は、「言われてみればそうかも」と思いがちであり、加えて「そういえばあの人の家もそうだった」と酒の席での話として盛り上がるネタであるがゆえに、容易に信じられて、拡散されてしまうのでしょう。冒頭のカエサルの言葉通り、それこそが「人は見たいと欲する現実を見たい」というものです。


写真=iStock.com/Edwin Tan
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Edwin Tan

本稿を書くにあたり、他にも出生順位別や母親の年齢別の出生性比の違いについても検証しましたが、どれも変わりはありませんでした。が、思いつきで都道府県別の女児率と離婚率との関係を見ると、少しおもしろい結果となりました。


■東北と九州は女児率も離婚率も高い


以下のグラフは、2015年から2023年の8年分の都道府県別累積出生数における女児率の全国平均差分を表したものですが、それに同期間の累積特殊離婚率全国平均差分とを合わせると、一部のエリアにおいて強い相関があります。特に、東北地方と九州地方に顕著で、女児率の高いエリアほど離婚率も高くなっています。


■地域別に見るといろいろな発見が


東北と九州では、女遊びがすぎる男が結婚し、女児率高めになりがちな上、その後、女遊びがおさまらない男であるがゆえに離婚をしがち……ということでしょうか。それはそれでまた酒のツマミになりそうなネタです。


逆に、女児率の低い首都圏から北陸は離婚率も低くなっており、女児率と離婚率は全体的に相関があるかと思いきや、近畿から中国四国地方は女児率が低いのに離婚率は高い、とエリアによって異なる特徴があります。突出して女児率が高いのが山梨で、男児率が高いのが栃木と鳥取というのも何か要因があるのでしょうか。


もし、出生地や居住地によってその傾向が作られているのだとすれば、それはまた別途深掘りすると興味深い結果が出るかもしれません。


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荒川 和久(あらかわ・かずひさ)
コラムニスト・独身研究家
ソロ社会論及び非婚化する独身生活者研究の第一人者として、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・Webメディアなどに多数出演。海外からも注目を集めている。著書に『「居場所がない」人たち 超ソロ社会における幸福のコミュニティ論』(小学館新書)、『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』(ぱる出版)、『結婚滅亡』(あさ出版)、『ソロエコノミーの襲来』(ワニブックスPLUS新書)、『超ソロ社会』(PHP新書)、『結婚しない男たち』(ディスカヴァー携書)、『「一人で生きる」が当たり前になる社会』(中野信子共著・ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。
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(コラムニスト・独身研究家 荒川 和久)

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