五輪選手村マンション 割安でも中古売却時に苦戦の予想

11月27日(火)7時0分 NEWSポストセブン

建設が進む東京五輪の選手村(写真/時事)

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 2020年東京五輪・パラリンピックの選手村になる中央区・晴美の臨海エリアは、五輪後に大規模マンションに改修、販売されることになっている。10月下旬、この新しい街の名称が「HARUMI FLAG(ハルミフラッグ)」に決定。マンション価格の予想から早くも“割安”との声が広まっているが、果たして巨大住宅エリアの誕生が不動産市場にどんな影響を与えるのか。住宅ジャーナリストの榊淳司氏がレポートする。


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 考えてみれば恐ろしいことが起こり始めている──。東京都中央区の晴海エリアには2020年の東京五輪で選手村が設けられる。その跡地を開発して4145戸の分譲マンションが誕生するのだ。建物の完成は2022年の秋。入居予定は2023年の3月以降だとされている。


 このマンション「HARUMI FLAG」の販売は2019年の5月に始まる予定だという。首都圏でも郊外なら3000戸規模のマンション開発はさほど珍しくはないが、東京都中央区というアドレスで4145戸というスケールで新築マンションが供給されるのは相当に珍しい。


 当初は「50階建てのタワーマンション2棟」とされていたのに、ふたを開ければ18階建てが3棟。どういう理由で計画が変更になったのかはよくわからない。最近、世の中にはタワーマンション自体に対する懐疑的な見方が広がっているので、そういう風潮に忖度した可能性も考えられる。


 ともあれ、限られたエリアにこれだけの新築マンションが一気に供給されるインパクトは大きい。そこで、マンション市場にはどのような影響をもたらすのか考えてみたい。


 東京都心の新築マンション市場はこの5年ほど、住宅というよりも金融商品の取引市場の様相をみせていた。つまり「住む」ために新築マンションを購入するのではなく、値上がり益への期待や相続税対策としての需要が強かった。特にタワーマンションの場合は、少なからぬ割合でそういった購買行動が見られた。


 現状、そういう思惑で買われた住戸が中古市場において「新築未入居」として大量に売り出されている。新築時よりも1、2割高い売り出し価格が付けられているので、動きは鈍い。ほぼ停滞しているといってもいい状態だ。


 このHARUMI FLAGについては、アドレスこそ東京都中央区だが金融商品的な思惑による購買行動はほとんどないと推定される。その理由は、資産性の脆弱さだ。



 まず、最寄りとなる地下鉄大江戸線の「勝どき」駅までは徒歩17分から22分。この距離を毎日歩くのは現実的ではない。


 BRTと呼ばれる新交通が整備される予定だが輸送力が脆弱。街区内に停留所が設置されるが、そこを利用する便の1時間当たりの輸送力は地下鉄の1割以下と見込まれる。とてもではないが、通勤や通学で都心方面に向かう全員を運べないはずだ。きっと東京駅方面へ向かう何台ものシャトルバスを走らせることになるのではないだろうか。


 こういう利便性に難のあるマンションは値上がりしにくい。また、賃貸としても借り手を見つけにくい。だから、金融商品としての魅力は薄い。


 ということは4145戸のほとんどは実需での購入を想定するしかない。つまり、4145世帯が実際に住むためにHARUMI FLAGを買わなければ完売しないということになる。


 肝心の販売価格は正式に発表されていないが、一部報道によると坪単価270万円から280万円だそうだ。86平方メートルの住戸なら7200万円ということになる。パワーカップルと呼ばれる共働き世帯の収入は1400万円以上。新築マンションの購入目安は年収の5倍ちょっとだから、今の金利水準だと十分に手が届く範囲内だ。


 2019年の5月から販売が始まるとして、入居までは46か月。それまでにめでたく完売させるには1か月に90戸ペースで成約していかなければならない。1年で1080戸。かなりのハイペースだが、その間には五輪が開催される。そこでは販売がかなり盛り上がるはずだ。


 また、仮に今の新築マンション市場で坪単価270万円から280万円という価格帯で売り出されたとすると、少なくとも中央区の中では最安水準。城南でも大田区の住宅地エリアの価格水準である。坪300万円以上が当たり前になった世田谷区内なら見つけにくい価格帯だ。したがって、販売当初はそれなりの勢いで売れていくとは考えられる。


 ただし、こういうマンションの購入を検討する場合、華やかな広告に惑わされるべきではない。仮に、入居してから10年後に売却するときには、すでに新築時のイメージは消えている。そのマンションのスペックだけが頼りだ。



 マンションの資産価値を決めるのは9割が立地だ。千代田区の番町や渋谷区の代官山といったブランドエリアでもない限り、立地とは最寄り駅の格と距離。このマンションなら、駅にいちばん近い住棟で「勝どき駅から徒歩17分」ということになる。


 15年後、勝どき駅周辺で中古マンションを探している人は、まず「スーモ」などで検索を掛ける。選ばれる検索範囲は「徒歩5分以内」と「徒歩10分以内」がほとんどだろう。他に「徒歩15分以内」というボタンもあるが、そこまで範囲を広げてくれる人は全体の5%もいないはず。ましてや「20分以内」は……。


 さらにこういう大規模マンションの場合、築10年を過ぎると中古で売り出されている住戸が常時数十物件という状況になる。中には売り急ぐ方も出てくるので、相場が崩れやすい。特に不況期には急落しやすい物件になる。


 最後に、もうひとつ気になるところは、引渡し時の金利だ。今のゼロ金利政策が4年半先まで続いているだろうか。少なくとも、その時点で黒田日銀総裁は他の誰かに交代しているはずだ。そして、住宅ローンの金利は今より上がりこそすれ下がる余地はほとんどない。返済プランを無理目に組んでおくと、引渡し時に想定外の事態を招くことも考えられるだろう。

NEWSポストセブン

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