他人の予測に頼らず、自分自身で未来を読みとくには

11月28日(火)6時0分 ダイヤモンドオンライン

エイミー・ウェブ未来学者。その研究成果は『ニューヨーク・タイムズ』『ハーバード・ビジネス・レビュー』『ウォール・ストリート・ジャーナル』『フォーチュン』『ファストカンパニー』などの主要メディアに掲載される。コロンビア大学でメディアの未来の講師を務め、ハーバード大学のビジティング・ニーマン・フェロー(2014-2015)。日本語検定二級をもつ親日家。© Mary Gardella Photography

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AI(人工知能)、ゲノム編集、自動運転、フィンテック、IoT……世間をにぎわす最先端のトレンドは、すでに十何年も前から姿を見せていた。スマートフォンもしかり。1997年、東京・秋葉原で、著者エイミー・ウェブは、やがて大きなうねりとなる「シグナル」をたしかに聞いた——。

あらゆる予兆は、今この瞬間、どこかに現れている! 次なる「主流“X”」の見抜き方とは? その秘訣の一部を、『シグナル:未来学者が教える予測の技術』から無料公開する。



未来を読むための方法論


 本書では、未来を読むための方法論を紹介する。この体系的なアプローチを実践すれば、変化する世界への理解を深められるだろう。未来学者のモノの考え方、そして傍流から主流へと変わる新たなトレンドを予測し、未来についてより良い判断を、今、下す方法を学んでいく。


 リーダーシップを発揮すべき立場にあるのなら、戦略的にトレンドをモニタリングし、未来の戦略を立てなければならない。それは大企業のCEO、非営利団体のメンバー、人事部門の中間管理職、メディアの幹部、投資家、マーケティング責任者、政府の行政官、学校長、あるいは家計の責任者でも変わりない。怠れば、あなたの組織や将来の収入がリスクにさらされる。そればかりか、今日の行動が持つ意味を真剣に理解しようとしなければ、人類の未来が危うくなる。


 私は未来学者として、台頭しつつあるテクノロジーを研究し、トレンドを予測することを生業(なりわい)としている。「未来学(futurology)」という言葉は、「未来」を意味するラテン語(「futurum」)と、「学」を意味するギリシャ語の接尾語(「-logia」)を組み合わせたもので、1973年にオシップ・フレッチハイムというドイツ人の学者が生み出した。


 フレッチハイムはその数十年前、作家のH・G・ウェルズとともに新たな学問分野として「未来主義(futurism)」を提唱している。数学、工学、芸術、テクノロジー、経済学、デザイン、歴史、地理、生物、神学、物理学、哲学を組み合わせた学際的分野だ。


 未来学者の仕事は、予言を語ることではない。データを集め、台頭しつつあるトレンドを見つけ、戦略を考え、未来におけるさまざまなシナリオの発生確率を計算することだ。こうした予測は、組織が破壊的変化に直面するなかでもリーダー、チーム、そして個人が、質の高い情報に基づいて判断を下す一助として使われる。


 過去500年にわたり、世界を一変させた発明のほぼすべては、ひとえにテクノロジーがもたらしたものだ。活版印刷、六分儀、耕うん機、綿繰り機、蒸気機関、石油精製、低温殺菌、組立ライン、写真、電報、核分裂、インターネット、パソコン、すべてそうだ。どのテクノロジーもある時点までは、端っこの科学であり、技術的実験にすぎなかった。


 本書は、テクノロジー・トレンドそのものを論じる本ではない。書店に並ぶ頃には、時代遅れで価値のないものになってしまうからだ。世界の変化はそれほど速い。


 いくつかのトレンドを取り上げた本は結局、あなたの組織、産業、市場の未来に対する他人のビジョンを押しつけるだけだ。スマートウォッチ、仮想現実(VR)、モノのインターネット(IoT)などは、メディアの見出しにはうってつけだが、あらゆる組織を日々悩ませる問いの答えにはならない。


 今、どんなテクノロジーが台頭しつつあるのか。

 それはわれわれや顧客にどのような影響を与えるのか。

 ライバルはこのトレンドにどう対処する気なのか。

 新たにどのような協力・提携の可能性が生まれるのか。

 産業全体ないし部分にどのような影響を与えるのか。

 変化の推進力となっているのは誰か。

 結果として、顧客の要望、要求、期待にどのような変化が生じるのか。


 こうした問いに答えるには、他人の立てた予測に頼るだけでは不十分だ。研究者、他の経営者、各分野の思想的リーダーなどの見立てを評価し、取捨選択するための体系的プロセスが必要となる。自分自身で未来を読むための方法論が必要だ。


 本書では、社会の端っこで生まれつつある、一見、関係なさそうなアイデアを評価するための体系的アプローチを紹介する。


 われわれの未来は、テクノロジーとは切っても切れない関係にある。私が1997年の秋葉原で気づいたように(連載第2回)、ことテクノロジーに関しては、マニアックすぎるので検討しなくてよいということは1つもない。


 今後数年、数十年、数百年にわたり、テクノロジーが重要な役割を演じないというシナリオはありえない。追うべきトレンド、準備すべきアクションは、必然的に何らかの形でテクノロジーに関するものとなる。


 ここで紹介する方法論は、6つのステップで構成される。未来に向けた手引きだが、一般的なマニュアルとは違う。


 まず端っこにいる「想定外のニューフェース」のもとへ足を運ぼう。そこから隠れたパターンを発見し、端っこで起きている実験的試みを人間の基本的なニーズや欲望とつなげてみる。


 パターンから潜在的トレンドが明らかになったら、それを徹底的に調べ上げ、証明する。


 それからトレンドのETA(到着予定時刻)と方向を計算する。つまりどこへ向かっているのか、速さや勢いはどの程度か。


 ただトレンドを見つけるだけでは足りない。ブラックベリーのRIM社が、2008年に自称「iPhoneキラー」を発売しようとして痛い目に遭ったのが典型だ。


 必要なのは「未来に起こりうる」「起こるかもしれない」、そして「起こりそうな」シナリオをそれぞれ作成し、今とるべき確かな戦略を立案することだ。


 そして最後にもう1つステップがある。トレンドに対して戦略のストレステスト(負荷をかけて弱点を調べる手法)を実施し、とろうとしているアクションの妥当性を確認するのだ。


 各ステップは事例を挙げて説明していく。ソニーの経営陣が起こりうるトラブルを容易に予見できたにもかかわらず、結局ハッカーに屈服させられた話や、イアン・ウィルマット博士の研究チームがクローン羊「ドリー」を生み出したと知った科学界が衝撃を受け、激怒した話などだ。


 すでにご存じの話だろうが、シグナルを解読するための方法論を使ってみると、事態はまったく違って見えるだろう。本書を通じて、目の前の現実に対するみなさんの認識を揺さぶりたいと思っている。


 途方に暮れることもあるだろう。それでも、みなさんが自らを取り巻く世界を理解する方法は、まるで違ったものになると私は確信している。


 本書をひもとき、耳を澄ましてほしい。シグナルは語っている。


<連載終わり。続きは書籍をご覧ください>

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