伝統と歴史が織りなす「和デニム」。広告代理店出身者が挑むブランド開発から販売までの道のりと日本の伝統文化を未来へ繋ぐ今後の展望とは。

2023年11月28日(火)10時0分 PR TIMES STORY

和デニムは、デニムの聖地である岡山県井原市のセルヴィッチデニムと、日本の伝統工芸品である西陣織や京友禅を融合させたオリジナルジーンズです。ブランドの企画・製造・販売・買取を通じて、日本の伝統文化の未来への継承と、世界への発信に貢献することをブランドフィロソフィーとして活動しています。

 

具体的には収益の一部をNPO団体に寄付することを通して着物文化の発展に、そして不要になった和デニムを買い取り、同じくNPO団体を通して衣料を必要とする世界の国々に和デニムを寄付することで伝統文化の世界への発信に貢献していきます。

和デニムをどのように立ち上げたのか?現在も広告代理店で勤務する代表の檪原弘樹が、事業を始める経緯や、開発から販売までの道のりを振り返り、そして日本の伝統文化をどのように未来へ繋いでいくのかの展望について語ります。

事業を始める上での2つの条件

2004年に大学を卒業して広告の世界に入りました。そう考えると今年でちょうど20年になり、偶然にもちょうど節目の時期になりますね。この20年、社内外の多くの方に支えられ、ご指導いただきながら今の自分があると思う一方で、マーケティングに関わるすべてのことを自分の思うようにやってみるとどうなるのか?ということを考えたことが事業を始めようと思ったきっかけです。いま思うと本当に甘い考えだとつくづく思いますが(笑)

さて、どんなことを始めようか。なんのアイデアもない状態から、頭の片隅で考える日々でした。自分の中で条件が2つありました。当時から海外が好きで、よく海外出張の仕事を探したり、海外旅行も行ってましたので、ぼんやりと海外の人をターゲットにした事業がしたいことと、ネット通販ができることでした。ネット通販を条件にしたのは、今後の消費者の購買行動がオンラインに大きく移行していくことが予想されたため、ネット通販の知見を持つことは、広告代理店としての既存ビジネスとの相乗効果を生み出せると考えたからです。

商品コンセプトは「デニムと着物の融合」

ある日、新聞で、X JAPANのYOSHIKIさんが取り組まれている”YOSHIKIMONO”の記事を見つけました。その瞬間、高校生の頃に通っていた床屋を思い出しました。その床屋の主人がデニム好きで、デニムに着物をパッチワークしたものを床屋で販売されていて、高校生ながらに欲しかったけど値段が高くて買えなかったことを思い出したのです。デニムと着物。インターネットで色々と検索しても出てくる画像はちょっと派手な和柄デニムばかり。こんなド派手なデニムは誰が着るのだろう、もっと格好良くなるはずだ。高校生の自分がそう感じたように。大手企業が手掛けていない領域であり、新規性も差別性もある、そして海外の人たちも魅力を感じてくれそうである、そしてアパレルならネット通販もできる。さらに着物について調べていくと、想像以上に衰退している産業でありながらも、私たち日本人が将来に残していかなければならない伝統文化であることを強く感じました。よし、これで行こう。そういう流れで、和デニムブランドの骨子である「デニムと着物の融合」という商品コンセプトが決定しました。

飛び込み営業によるパートナー探しと最高の出会い

商品コンセプトは決まって、さてどうしよう(笑)。

当たり前ですが、広告代理店は商品開発のことは素人です。デニムを仕入れて着物生地を融合させる、というアイデアだけで具体的な商品設計は何もない状態です。とりあえずデニムといえば岡山県ということで岡山の児島ジーンズストリートに行って、片っ端から店舗に入り、ジーンズを見ながら自分が好きなデザインやシルエットを販売されているお店を選んで、飛び込み営業をしました。その中の1つが今のパートナーでもあるstudioMさんです。アパレル素人な私を丁寧に受け入れてくれて、本当に素敵なデザインとパターンをOEMとして作っていただける最高のパートナーです。ジーンズはなんとか見つかりましたので次は着物生地です。着物は国内に多くのデッドストックが存在していることは調べていましたので、それを活用することも考えました。しかし上述の通り、衰退する着物産業を甦らせることをビジョンとして掲げるなら、デッドストックではなく、新しく生地を織るところから始めて、職人の皆様の仕事を少しでも増やさなければならないと思い、ゼロから生地を作ろうと考えました。着物といえば京都の西陣織だと考え、西陣織の製織会社を調べて、こちらも手当たり次第、飛び込み営業です。その時にお話しさせていただいたのが今のパートナーである加納幸さんです。分業制が一般的な西陣織産業では珍しく、生産をほぼ全て西陣でまかなう純西陣のフルラインナップメーカーです。

studioMの代表である丸山英輔さん

加納幸さんの本社入口

ようやくデニムと着物生地の仕入れ先が決まりました。さて、ここからは商品設計です。studioMさんでお持ちのデザインとパターンを組み合わせて、どこに着物生地を付けると良いか検討を重ねて決めました。その一方で、加納幸さんとは着物生地をどういうデザインで製織するべきか、ジーンズに着物生地を加えた時に派手になりすぎないバランスはどんなデザインなのかを議論しました。そして完成したジーンズと着物生地の2つのデザインを組み合わせてサンプルの製作発注。

まさかの問題発覚。どう解消するのか?

1ヶ月ほど待つと、サンプルがついに上がってきました。自分が考えた商品の現物を初めて見る気持ちはなんとも表現できない嬉しさと緊張感があったことを記憶しています。その喜びがまさかの事態です。なんとデニムのインディゴ染料が西陣織に移染しているではないか。私の商品設計はリジットではなくワンウォッシュでしたので、縫製後に洗濯工程があるわけです。その洗濯時にデニムのインディゴ染料が西陣織に付着するとの説明を受けます。どうすれば防ぐことができるのか?ワンウォッシュ後に西陣織を縫い付けるなど縫製工程を変えることはできないのかなど、工場と何度もやり取りをするも現実的ではない状況です。それなら移染しないデニム生地がないのか調べると、反応染デニムという色落ちしないデニムがあることを見つけました。しかし反応染デニムは岡山のセルヴィッチデニムが持つ独特の風合いを表現することができないため、どうしてもジーンズという商品になったときに思った通りのクオリティにならないのです。一方で洗濯テストをすると、西陣織に移染しているインディゴ染料が落ちることが分かりました。それを注釈で書くことで消費者に理解していただけるのではないかと考え、販売を決意しました。

クラウドファンディングで一定の需要を確認し、量産へ。

いきなり増産するのが怖かったので、まずはクラウドファンディングで市場の需要性を確認しました。目標達成には至りませんでしたが、一定数の購入者がいることを知り、量産を決意しました。同時に自社のオンラインストアを立ち上げ、販売を開始。

広告代理店のくせに売り方に苦戦も…。

さて、プロダクトができて、プライスも決めて、チャネルはECサイト。あとはプロモーションをして売るだけです。まさに広告代理店の領域です。しかしインターネット広告を実施して集客するも売れない。予算が潤沢にあるわけではないので、ターゲットに十分にリーチできていないのは事実ですが、言い訳のしようもない結果です。何が悪いのだろうか。クリエイティブを取っ替え引っ替えでA/Bテストをしたり、商品ページを何度も何度も作り直したり、試行錯誤を繰り返すも売り上げに繋がらない状況が続きます。自分のお金で取り組んでいるため焦りも出てきます。ついにはやってはいけない値引きプロモーションまでやってしまう始末です。それでも思ったように売れないんです(笑)

もう1回、なにが良くないのか一から考えてみました。プロダクトは変えようがない、プライスも下げるところまで下げても上手くいかない、チャネルとプロモーションが問題なのか。和デニムは日常の課題を解決する機能性商品ではなく、和デニムを着ることで幸せな気持ちになり、心を豊かにすることができる商品です。ちょっとオシャレをして出かける時に気分がアガる商品なのです。そう考えたときに、消費者とのタッチポイントは、消費者がオシャレを意識するタイミングではないかという思いに至りました。オシャレを意識するタイミング=美容院に行くときだと考え、美容院で和デニムを置いて販売してもらえないかと営業を始めました。奇しくも、この事業を始めるきっかけとなった床屋という場所に戻ってきたのです(笑)。その中で大阪府内にあるヘアサロン森本さんやwith-itさんと出会い、展示販売をしていただけることになりました。試着ブースやマネキンを用意して展示販売開始です。

with-itさんで実施した展示販売風景

ターゲットの思い込みからの脱却。お客様の声を反映することでオンラインでも成果が。

やはり商売というものはお客様の声を聞かせていただくことが基本だなとつくづく感じます。オンラインショップでの販売では、クリック率やコンバージョン率は数字として見えますが、その背景が全く分からないのです。なぜ興味を持ってくれたのか?なぜ買ってくれたのか?という大切な生の声が分かりません。当初、私は和デニムのターゲットは30〜40代の外資系企業に働くビジネスマンとして設定していました。しかし美容院で販売させていただくことで、興味を持ってくれたり、買っていただけるお客様の声を知ることができ、自分の思い込みとのギャップを確認できたことは大きな収穫でした。買っていただいている方は50代以上のオシャレでイケてる男性の方だったのです。その声をインターネット広告のクリエイティブやオンラインショップに反映することで少しずつ売り上げに繋がるようになりました。

30〜40代をターゲットにして使用していたオンラインショップの画像

ターゲットを50代以上に設定し直して変更した画像

第2弾商品の投入

初回モデルがようやく売れ始めたので、商品ラインナップを増やすことを考え始めました。「デニムと着物の融合」というコンセプトのもとに、着物生地を付ける位置を検討している中で、西陣織ではどうしても実現できないことがありました。西陣織は「絵画の世界を織物に表現する」と言われるように先染紋織物です。そのため生地自体に厚みがどうしてもできてしまい、ジーンズの付けたい位置に付けることができない事象が起こります。西陣織が使えないなら、別の生地を使うしかありません。そこで考えたのが京友禅です。京友禅とは日本三大友禅の1つで絹織物に友禅染という染色技法で染め上げる染色品です。後染めのため生地の厚みが増えることなく、思い通りの位置に縫い付けることが可能であると分かり、京友禅の染工場を探し始めます。ここまで来れば、飛び込み営業は慣れたものです(笑)京友禅の染工場に片っ端から営業開始です。その過程で縁があったパートナーが、和デニムの京友禅を染色してくれた吉江染工さんでした。私が思うデザインを本当に上手に染め上げていただき感謝です。

大阪・関西万博を機に日本の伝統文化をアピール。2025年には実店舗も目指す「和デニム」の今後の展望。

和デニムの今の課題は価格だと思っています。岡山のセルヴィッチデニムに加え、着物生地も使っているため、どうしても原価が高く、それに応じて小売価格も高価格帯になってしまいます。和デニムを通して日本の伝統文化を広めていくためには、もっと消費者の皆様の手に届きやすい価格帯で提供する努力をしなければなりません。一方で、今の商品自体の価格を下げることはデニムや着物産業を支える職人の皆様のコストを下げてしまうことに繋がるため、極力したくありません。そのような現状で課題を打破するためには、商品設計やサービス方法で価格の壁を越える必要があります。その解決策の1つとして新しい商品やサービスを検討しており、近々みなさまに発表できると思いますので今しばらくお待ちいただければと思います。

私が事業の拠点としている大阪は今後、大阪・関西万博があり、統合型リゾート(IR)も控え、世界中が注目し、訪日外国人が多く集まる都市になると思っています。その流れの中で、和デニムが海外も含めて多くの方に日本の伝統文化をアピールできるブランドになることを夢見て、これからも邁進していきたいですね。

直近の目標は2025年の大阪・関西万博のときに実店舗を持ちたいと思っています。


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