すかいらーく禁煙令 「隠れ査定」の重圧になるとの指摘も

11月29日(水)7時0分 NEWSポストセブン

通勤途中の「一服」も認められない風潮になるのか

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 外食チェーン大手の「すかいらーくグループ」が、12月1日より東京都武蔵野市にある本社内をすべて禁煙にするとともに、約300人いる社員を対象に、就業時間のみならず往復の通勤区域内での喫煙も禁止する方針をぶち上げ、大きな話題となっている。


 ネット上では、〈社員の健康のためには当然〉〈店舗も早く全面禁煙にしてほしい〉といった肯定的な意見が出る一方で、〈通勤中の行動まで干渉するのはさすがにやり過ぎ〉〈合法的なたばこを一方的に禁止するのは人権侵害だ〉との激しい反対意見も多く見られ、賛否両論が渦巻いている。


 当のすかいらーくに取材してみると、広報担当者はあまりの反響の大きさに少々困惑ぎみに、こう話した。


「あくまで弊社のオフィスがある最寄り駅(三鷹)から会社に着くまでの間で、歩きたばこなどマナーを守らない喫煙はやめましょうと社員に呼び掛けているだけ。


 特に罰則を設けている規定ではありませんし、コンビニなど会社付近の喫煙コーナーでたばこを吸うのも禁止しているのは、受動喫煙の影響や企業イメージの低下につながらないとも限らないからです」


 とはいえ、同社は2014年から社員の禁煙を徐々に推奨し、すでに役員は全員禁煙しているという。また、今回の一件も会社周辺エリアの“禁煙令”といいつつ、「社員の健康を考え、できれば禁煙しましょうという話なので、それ以外の場所でも吸わないのが望ましい」(前出・広報担当者)と話している。つまり、最終的なゴールは全社員の禁煙化だ。


 近年、すかいらーくに限らず、星野リゾートのように人材募集の段階から喫煙者を採用しなかったり、禁煙に成功した既存社員に報酬や休暇を与えたりする企業が増えている。


 たばこを吸わない社員ばかりを優遇するのはなぜなのか。人事ジャーナリストの溝上憲文氏が企業側の狙いを語る。


「メタボと同じで、健康に悪いとされる生活習慣を放っておいて社員が病気になれば、欠勤や休職者が増えて人件費増につながりますし、業務に支障が出ます。また、喫煙だけで見れば、喫煙者自身の健康のほか、受動喫煙による周囲への影響も社会問題化しているため、できるだけ社内の禁煙率を高めて将来的なリスクを減らしたいというのが企業側の本音です。


 ましてや、すかいらーくのような外食企業は東京オリンピックを控えたいま、受動喫煙防止の規制対象としてもっともターゲットにされている業界です。今回の一件は、そんな対外的なイメージも気にして、“社員の禁煙化から積極的に進めています”という意識啓発の狙いも大きいのだと思います」


 しかし、労働法上の観点からいうと、ネット上の声のように会社が通勤時間まで社員の喫煙行為に口出しするのは、少々やり過ぎのきらいもある。社会保険労務士の稲毛由佳氏がいう。


「通勤中や休憩時間は就業時間外にあたるため、いってみれば社員の自由な時間です。今回のケースはペナルティーをつけない“お願いベース”のため、労働法上も問題はありませんが、業務上禁煙が必要な正当な理由がなければ、嗜好品をたしなみたい人のプライベートな時間を侵害している可能性があります。


 例えば、通勤時間でも〈行き〉は接客や会社内での業務前なので、受動喫煙の問題からたばこの臭いを漂わせていたり、呼気を通じて他人に有害な影響が出る恐れがある──と説明しているすかいらーく側の理由は真っ当です。


 でも、業務が終わって誰にも会わない〈帰り〉に、仕切られた喫煙コーナー内で一服することまで『NO』と言い始めたら、なかなか理解を得られにくいかもしれません」


 何よりも、全社で禁煙の流れに向かうことで、喫煙者は立場的にビクビクする事態になりかねない。稲毛氏が続ける。


「罰則がなく、社内評価や査定には関係ないといっても、どんどん少数派になっていく喫煙者にしてみたら、“隠れ査定”のプレッシャーを受け続けているような気分にはなるでしょうね。肩身は狭くなる一方だと思います」


 禁煙令が、かえって社員の精神的ストレスを増大させる結果になっては意味がない。すかいらーくが掲げる「健康経営」の手法と効果については、様々な角度から検証していく必要があるだろう。

NEWSポストセブン

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